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文体練習

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2021年8月の記事一覧

文舵、練習問題④〈重ねて重ねて重ねまくる〉問1:語句の反復使用

文舵、練習問題④〈重ねて重ねて重ねまくる〉問1:語句の反復使用

問1:語句の反復使用 
 一段落(三〇〇文字)の語りを執筆し、そのうちで名詞や動詞または形容詞を、少なくとも三回繰り返すこと。

 あれほど好きだったあの時のきみ、手を繋ぐだけで汗が出てきて、それを知られるのを恐れて僕がビクビクしていたあの時のきみ、滝沢たちと一緒に遊んでいる時も僕だけにわかる目配せーーあれを目にする度に、僕は自分が世界で一番の幸せものだと思ったものだーーをしてくれたあの時のきみ、

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文舵、練習問題③〈追加問題〉問1

文舵、練習問題③〈追加問題〉問1

問1:最初の課題で、執筆に作者自身の声やあらたまった声を用いたのなら、今後は同じ(または別の)題材について、口語らしい声や方言を試してみよう――登場人物が別の人物に語りかけるような調子で。

元の文章(文舵、練習問題③〈長短どちらも〉問1)を友達に語りかける文章に変え、そうすると色々内容を変えたくなったので、余計なものが結構足されています。

 でさ、そのとき俺は手を止めたんだ。だって、あるべきと

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文舵、練習問題③〈長短どちらも〉問2

文舵、練習問題③〈長短どちらも〉問2

問2:半~一ページの語りを、七〇〇文字に達するまで一文で執筆すること。

 高校のころまでは姉のことを語ろうとすると、どうしてもまず彼女が知的障がい者であること、そのために僕が受けた小学校でのいじめや父と母が歩んできた苦難の道のりを話すようなモードになりがちだったし、苦労が多かったのも事実にはちがいないのだけれど、いま思い返すと生き生きとした姉の姿、たとえば僕に殴りかかってくる時の必死の形相とか、

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文舵、練習問題③〈長短どちらも〉問1

文舵、練習問題③〈長短どちらも〉問1

問1:一段落(二〇〇~三〇〇文字)の語りを、十五字前後の文を並べて執筆すること。不完全な断片文は使用不可。各文には主語(主部)と述語(述部)が必須。

 本棚を調べる僕の手が止まった。二日前まであった場所にエロ本がない。最下段の右端、そこには『罪と罰』がある。途端に僕はヒヤリとする。これはメッセージかもしれない。罪を犯かせば、罰を受ける。風呂にいてもお前の行動はお見通しだ。兄の顔を思い浮かべ僕は身

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文舵、練習問題②〈ジョゼ・サラマーゴのつもりで〉

文舵、練習問題②〈ジョゼ・サラマーゴのつもりで〉

一段落~一ページ(三〇〇~七〇〇文字)で、句読点のない語りを執筆すること(段落などほかの区切りも使用禁止)。

 右からぶつかられそちらを向くと人はいなくて右前方に顔を向けると女の人が走っていたのだけれどその背中を見ればTシャツがびっしょりと濡れていたので右手にもったプラスティックのカップを見れば半分に減ったビールにため息をついて一気に飲み干して前を向こうとしたとき腰が浮き下を見れば角刈りの頭があ

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文舵、練習問題①〈文はうきうきと〉問1

文舵、練習問題①〈文はうきうきと〉問1

〈練習問題①〉文はうきうきと
問1:一段落~一ページで、声に出して読むための語りの文を書いてみよう。その際、オノマトペ、頭韻、繰り返し表現、リズムの効果、造語や自作の名称、方言など、ひびきとして効果があるものは何でも好きに使っていい――ただし脚韻や韻律は使用不可。

 夏の終わりの蝉時雨。うだる暑さにミンミンと、蝉の鳴くのに被すよに、ブンブンブンブンうなるのは、前方上方扇風機。汗をかきかき僕らがや

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