花のかげ~第2章 動き出す(8)
八.放射線治療
外来受診は五月二十一日の午後になっていた。散歩のかいもあってか母の足取りはしっかりしてきており、若干ふらつくことがあるとはいえ機能回復は順調のように思われた。
この日は私一人で母を病院に連れてきた。母は以前は把握していた病院の構造がまったく理解できなくなっていた。「こっちだっけ? 上だっけ? 下だっけ?」といちいちたずねながら私に手を引かれて脳外科までやってきた。
今川医師の、
「せんせー、だぁれだ」
に対して、母が、
「イマガワせんせー」
と言うのが