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初めてつかう言葉 「エモい」 への好奇心と違和感

見るからに美味しそうな白桃を
知り合いのグルメな方から頂いた。

「桃は皮と身の間が甘いんですよ〜」と
桃農家さんが説明していたのをテレビで見たことがあって。

それを思い出して実践してみたくなったのと、単純に手抜きがしたくて
今日は皮つきのまま桃を食べることにした。

ん?甘い、甘いぞ!
この食べ方けっこうイケる!
皮の食感も案外気にならない。

すっかり上機嫌になってもぐもぐと食べた。

すると、
ある記憶が思い出の貯蔵庫から引っ張り出されて
いきなり目の前で再生され始めた。


夏休み、わたしたち部活仲間3人は
知る人ぞ知る穴場な海水浴場近くの宿で住み込みのアルバイトに明け暮れていた。

朝から晩まで働いてクタクタになった一日の終わり


「仕事終わりに食べな!」と気前のいい女将さんが完熟したまるごとの桃をみんなに差し入れてくれた。


それを持ってわたしたちは宿の目の前に広がる夜の砂浜へと向かった。


そこでしばらくまったりするのがわたしたちのルーティーンだった。


静かな波音が響く暗い海を眺めながら、皮付きのまるごとの桃にかぶりつく。

うふふ、甘いね。
甘いねー。
手がベタベタになるけど美味しいね。


普段、わたしは意味合いがよく分からない流行言葉を使わない主義だけど、今日は使っちゃう!

これがエモいってことなんじゃない!?

手も口元もベタベタになりながら
笑い合って桃を食べたあの夏の1ページが蘇った瞬間そう思った。
懐かしくて胸がキューっとした。

ん?でも、なんか違和感がある…。

実はわたしはずっと「エモい」ってどういう感情を表現する言葉なのか分からなかった。だからすごく気になっていた。


でも、いざ「エモい」を使ってみるとニュアンスはだいたい間違ってなさそうだけど違和感を覚えずにはいられない。

言葉って使ってみて初めて分かることがあるんですね。

言葉の質感が軽いというかなんというか
令和の若者が使うスラングはどうやら今のわたしの感覚には合わないみたい。


使ったことのない言葉に対する好奇心があって、良いものは取り入れたいと思う。
でも『自分に合った言葉』かどうかを見極めて使うのことも大切だと学んだ出来事だった。

あー、あの夜のちょうど良い風
砂浜に座って食べた甘い桃の熟れ具合
べったべたになった両手、汗でテカテカな顔、みんなの笑い声、
わたしの中で時を越えても尚ちゃんと残っていた。

これは短絡的な言葉では片づけられない
瑞々しい青春の思い出だ。


おわり


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