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マイ・フェイバリット・ソングス 第19回~あいみょん

(2022年8月改訂版)


『tamago』(2015年)

デビュー時には既に130曲持っていたらしいので、メジャー・フルアルバムでも十分いけたんじゃないかと思うのですが、インディーズミニアルバムでのデビューだったんですよね。とはいえ今や代表曲となっている「貴方解剖純愛歌~死ね~」「〇〇ちゃん」も収録されていて充実した楽曲群。中でも僕は「分かってくれよ」が特に好きです。男性目線の歌詞とどこかノスタルジックなメロディで、歌声がすごくカッコイイ。十代で作ったとは思えない曲ですね。彼女の曲が僕のような世代の男にもしっくり馴染むのは、彼女が吉田拓郎さんや浜田省吾さんや尾崎豊さんの影響を受けているからかもしれません。あるいは「夜行バス」に見られるようなスピッツの要素だったり。歌詞が立っているのもそのようなアーティストの血が宿っているからかもしれないですね。


『憎まれっ子世に憚る』(2015年)

2ndインディーズ・ミニアルバム。まず「好きって言ってよ」の明るい曲調に恐ろしい詞を乗せてくるこのセンスが只者ではないですよね。特に二番の詞は含みがあってゾクっとします。「明日には味わえるからね」のところ、怖いですよね・・・。そしてなんといっても僕が好きなのは「ほろ酔い」。この曲調・歌詞、とても平成生まれの二十歳(作ったのは十代?)の女性の曲とは思えません。完全に昭和の男性目線の世界観ですよね。現代のアーティストでこんな曲を作れる人は他に誰もいないのではないでしょうか。極上の弾き語りです。


『青春のエキサイトメント』(2017年)

さらに音楽性の幅広さが感じられるメジャー1st.フルアルバム。まずリーディングスタイルを取り入れた「生きていたんだよな」とファンク風アレンジの「愛を伝えたいだとか」には度肝を抜かれますよね。なんてカッコイイ曲だろうと。このアルバムは全曲好きですが、中でも僕は特に「風のささやき」と「ジェニファー」がお気に入り。若者の苛立ちに満ちた「風のささやき」の歌詞の素晴らしさ。〈風のささやき〉というワードに〈耳障りだ〉という言葉をぶつけてくるセンスだったり、〈今日もポケットの中は紙クズ銅メダル〉という表現だったり。あと「RING DING」の歌詞もいいですよね。いわゆる励まし系の詞ってどうしても陳腐で似たり寄ったりになりがちですが、この詞は変な計算高さがなくていいんですよ。本心で友人に語り掛かけてるリアリティがある。こういう「素」があいみょんの大きな魅力でもある気がします。


『瞬間的シックスセンス』(2019年)

これでもかってくらい名曲揃いのセカンド・アルバム。「マリーゴールド」は世が世なら(90年代とかなら)ミリオンセラーになっていたのではないでしょうか。(その代わりYouTube・ストリーミング共に再生1億回突破)平成最後を彩った一曲ですね。他にも「満月の夜なら」「プレゼント」「今夜このまま」「あした世界が終わるとしても」等シングルや主題歌やタイアップになった人気曲が詰まっていますが、それ以外の曲も素晴らしい。「ひかりもの」と「恋をしたから」も大好きです。エッジのきいた「from 四階の角部屋」もシビれますね。あいみょんの曲は〈ABサビABサビCサビ〉という構成だったときのCメロの部分がことごとくいいんですよね。Cのところでカタルシスのようなことが起こる。魔法が仕掛けられているみたいに一気に情緒に訴えかけてきます。ちなみに僕は「TOUR 2019-SIX SENSE STORY-」の国立代々木競技場第一体育館公演に行くことができました。そのときのセットリストです。

1.ら、のはなし
2.今夜このまま
3.ふたりの世界
4.愛を伝えたいだとか
5.真夏の夜の匂いがする
6.二人だけの国
7.わかってない
8.ハルノヒ
9.ひかりもの
10.生きていたんだよな
11.Tower of the Sun
12.恋をしたから
13.おっぱい
14.from 四階の角部屋
15.鯉
16.夢追いベンガル
17.貴方解剖純愛歌 ~死ね~
18.マリーゴールド
19.空の青さを知る人よ
20.満月の夜なら
21.ジェニファー
22.君はロックを聴かない
23.GOOD NIGHT BABY


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『おいしいパスタがあると聞いて』(2020年)

既に400曲あるストックの中から選ばれた12曲を収めたサード・アルバム。(ほとんどは2,3年前に書いた曲とのこと) これも好きな曲ばかりですが、特にお気に入りを挙げるとまず「ハルノヒ」。開放感のあるメロディがいいですね。歌詞も光る表現が詰まっています。そして「真夏の夜の匂いがする」のカッコよさ。いわゆる〈ABサビABサビ〉という展開じゃなくて〈AABACサビDCサビEAサビ〉みたいな(ちがうかな?)独特な展開がシビれます。そして名バラード「裸の心」。こういうノスタルジックでストレートなラブソングって久しく日本には生まれていなかった気がしますよね。こういう昭和感もあいみょんの大きな魅了です。タイアップシングルだけでも5曲入ってるし、新曲もいい曲ばかりですね。「チカ」のミュージックビデオすごく好きです。


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『風とリボン- POTATO STUDIO, June, 2020 -』(2020年)

『おいしいパスタがあると聞いて』に付属している10曲入り弾き語りCD。新曲「サラバ」とアルバム未収録のシングルカップリング曲「ハッピー」「葵」「青春と青春と青春」も歌っています。僕は「サラバ」と「葵」大好きですね。〈POTATO STUDIO〉って書いてあるけど、レコーディングルーム内じゃなく、そのスタジオのダイニングルームで録ってるんですよね。リラックスした雰囲気や雑音やしゃべり声まで丸ごと入っているので、臨場感がすごい。目の前にあいみょんがいるかのようです。弾き語りだとあいみょんの歌声の素晴らしさが一層引き立ちますね。これのメイキング映像は公式YouTubeで観ることができます。曲順をアミダで決めてましたね。


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『瞳へ落ちるよレコード』(2022年)

先行シングル6曲(「スーパーガール」「桜が降る夜は」「愛を知るまでは」「ハート」「双葉」「初恋が泣いている」)と新曲7曲からなるオリジナル4枚目。先行シングルはどれもあいみょんの王道といった感じの素晴らしい楽曲群。個人的には2017年頃に書いたという「愛を知るまでは」と、「愛を伝えたいだとか」を彷彿とさせるファンクナンバー「スーパーガール」と、極上のラブソング「ハート」が特にお気に入りです。「双葉」をアルバム1曲目に持ってきた構成も絶妙ですね。また新曲では、逆再生を取り入れてサイケデリックな頃のビートルズを思わせる「君のこゝろ」、失恋の想いを宅配ボックスに託して歌う「3636」(3月6日はあいみょんの誕生日)、不倫をテーマにしたソウル風テイストの「強くなっちゃったんだ、ブルー」、インディーズの頃のようなリーディングスタイルの「ペルソナの記憶」など隅々まであいみょんの魅力が詰まっています。初回限定盤には「AIMYON 弾き語り TOUR 2021 “傷と悪魔と恋をした♡in武道館”」の映像も付属。林蘭さんが手掛けたアートディレクションも素晴らしいですね。


【その他】

アルバム未収録のカップリング曲にも魅力的な曲はたくさんあります。

「いいことしましょ」「強がりました」「今日の芸術」「君がいない夜を越えられやしない」「ハッピー」「MIO」「青春と青春と青春」「わかってない」「あなたのために」「猫」「鯉」「テレパしい」「葵」「ユラユラ」「ミニスカートとハイライト」「森のくまさん」「皐月」。

僕は特に「君がいない夜を超えられやしない」「MIO」「鯉」「葵」が好きです。「猫」もDISHの曲として有名になりましたよね。アルバムに入ってないのがもったいないくらいの楽曲群。サブスクで一曲ずつ拾い聴くこともできますが、いつかカップリング集としてリリースして欲しいですね。


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