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日々のなかの韓国|鎌倉暮らし日記




2023.3.21(木)
 きのう、板門店(パンムンジョム)のゆめを見た。
 ふぐに似た形の、武器のようにあぶないものをお腹にかかえたわたしが、だれかにぽんっと背中をおされるようにして、あっというまに線を越え、気づいたら北がわの地面を踏んでいた。つるつるした真あたらしい建物にいて、せわしく人が、いったりきたりしている。
 どうしよう。じわじわした。きてしまった。かえりたい。わたしは、韓国にかえりたいと思っている。この手のなかのものを、そのへんのだれかに思いきり投げて、走ってにげたい。なみだがあふれそうだった。そのあとどうしたか、おぼえていない。

 朝、韓国語のポッドキャストをきいて、支度をする。
 きのうの夜、つくったトマト味の麺と味噌汁。歩いて、鎌倉税務署に用事。朝いちばん、身もかるい。そのあとは、横浜でしごと。
 パンを、たべたくなって三つもたべた。小麦のパン。ほうれんそうとベーコンのパン、塩パン、きのことチーズのパン。夜は、チェーンの純豆腐店で、あさりのもの。辛くない白いスープをえらべる。
 通りは、袴すがたの、女の子たちであふれかえっていた。
 わたしは、出席しなかった。東日本大震災の直後で、自粛ムードのさなか。例年どおりの式はなく、卒業証書を学校で渡されるだけの、簡素なもの。そうでなくても、興味はなかった。紙切れを一枚、うやうやしくもらうことも、なれないかっこうに着飾ることも、そういう人たちがたくさん集まった場所にじぶんがいることも、想像できなかった。
 あのとき、式があるつもりで袴を、予約していた人たちはどうしたんだろう。着るだけ着て、証書をうけとって、写真は撮ったのかもしれない。
 
 
 

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鎌倉暮らし日記、2024年版です。今までの日記より、すこし深く踏みこんだものを書くこともあると思います。数日分をまとめて公開するため、更新…

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