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地域芸術祭のロゴをいっぱい集めて、デザインの作られ方を考えてみた話

この記事はdesigning plus nine Advent Calendar 2021 4日目の記事です

はじめまして、藝大3年生のJUTARO(@sekiju13)です。
designing plus nineというサークルに19年に加入し、今はほぼ幽霊部員です。
オンライン活動化してから離れてしまっていたのですが、この機会にいろんな人とデザインの話がまたできたらいいなと思って、ひょっこり戻ってきました。どうかお手柔らかに。

最近、地域芸術祭に興味がわいて、そのデザインとかブランディングとかってどうやっているんだろうって考えたりしました。そんな自由研究を発表しようと思います。

まずは今年の夏に行って来た芸術祭を簡単にご紹介。

夏休みに新潟県にドライブに行き、十日町市でやってる「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」に行ってきました。日本で最初に開かれた国際芸術祭で、今年で8回目です。

https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/rotating-absence/

美術館の中だけでなく、街の中や、山の中にも、巨大な常設作品がいくつもあって、それを車でめぐることができます。

https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/the_garden_of_forking_paths/

街や山の中で作品めぐりをするときに頼りになるのが、ロゴのついた看板です。

https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/matsudai_small_tower/
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/echigo-matsunoyama_museum_of_natural_science/

ごめんなさい、僕が巨大な作品が好きなばっかりに、選んだ写真もゴッツイ作品ばかりになってしまいましたが、それは置いておいて・・・・・・

「ロゴ」は、使われる団体や商品の世界観をつくって消費者に伝える目的があると思いますが、芸術祭のデザインにおいてもその役割は似ています。

これが「大地の芸術祭」のロゴ。佐藤卓さんのデザインです。
三角形のかたちに込められたコンセプトの一つに「大地を指し示し、越後妻有がある場所やアートがある場所など「ここ」をポイントし、知らせてくれるかたち」とあるように、実際に道しるべのように指し示すロゴとして使われています。緑の山の中を車で走っていて、黄色い看板が道端に立っているのを見つけると、それだけで「アートのあるエリアに来たぞ」ってわくわくするし、そういう世界観が生まれているのもこのロゴのデザインの力だなと思います。

大地の芸術祭の過去に使われたデザインを見ると、ロゴがでてきてからは、このロゴを軸にフォントや雰囲気が固まっている気がします。
https://www.echigo-tsumari.jp/about/history/

日本全国に存在する地域芸術祭のブランディングにおいて、ロゴはかなり重要なポジションを占めているようです。

芸術祭・美術館系のロゴを集めてみる

旅行が終わってから早速、芸術祭のロゴを調べてみました。

「芸術祭 ロゴ」「イベント ロゴ」「美術館 ロゴ」など、インターネットで検索して見つけたロゴの数々を集めていきました。最初は芸術祭に絞っていたのですが、だんだんと増やしていったら楽しくなって、それ以外に美術館のロゴなども入れちゃいました。

集めたロゴたちはMiroというオンラインホワイトボード上に貼り、なんとなくの印象をもとに並びかえていった結果、こんな感じになりました。

芸術祭・美術館系ロゴ分類

まずこの表は、左右に分かれています。
ロゴマークをぱっと見たときに「文字か?図か?」が横軸です。

半分より左側は、ロゴを作るときに「文字」がシンボルに選ばれているなと感じたロゴたちです。団体名をそのまま文字にしたロゴタイプにしていたり、文字をもとにしたシンボルマークだったり、あるいはタイポグラフィのようなものたちを含んだのが主に左側です。
対して右側は、文字以外の「図」がシンボルに選ばれているロゴたちです。四角や三角や円などの図形が含まれていたり、あるいは何か具体的なモチーフをもとにした図があるイラストロゴなど、文字とは別のシンボルマークが独立して存在しているものたちは主に右側です。

その次に「抽象的か?具象的か?」が縦軸です。
これはまだ厳密ではなく、文字のほうが図よりも具象な気もするので、縦軸の名称は違う気もしているのですが。ロゴを見比べたときに、より抽象度が高いと感じたものが上になるように配置しています。
左半分「文字」の中では、上に行くほど抽象的になり文字としての情報は失われていく感じ。
逆に右半分「図」の中では、上に行くほど幾何形体に近くなり、下に行くほど具象的で絵のようになっていく感じで並べています。

なんとなく4つのグループを分析

「抽象的」な「図」(右上)
・色の印象がかなり強い
・色によるブランディング成功例多め
・形の類似性が多く差別化しにくい
・ロゴから意図が読み取りにくい

「具象的」な「図」(右下)
・ロゴの形の印象が強め
・ロゴのモチーフに印象が左右される
・イラストが主役のビジュアルと相性よさそう

「抽象的」な「文字」(左上)
・スタイリッシュな印象、可読性は低め
・色は特定の指定がないものもある
・ロゴの印象が全体的に薄く、写真と相性よさそう

「具象的」な「文字」(左下)
・読みやすい、団体名は認知しやすい
・フォントの印象に大きく左右される
・文字と言葉・キャッチコピーが主役になる

さて、こんな分析ができました。
順番に見ていきましょう。

「抽象的」な「図」(右上)は色が主役のデザイン

抽象的なシンボルを使ったロゴは、比較的ブランディングの成功例が多い気がしています。
はじめに紹介した「大地の芸術祭」のロゴもこのグループですが、「逆正三角形」という抽象的な図形をシンボルに打ち出したからこそ、「黄色」という色が強く印象を残すことができ、その色によってすべてのデザインに統一感が生まれ、ロゴによる世界観が作られていたんだなとわかります。
その反面、このグループのロゴは幾何形体に近づくほど類似性も近くなってしまうため、ほかの芸術祭とのブランディングの差別化にも苦労しているように感じました。

「具象的」な「図」(右下)はイラストが主役のデザイン

前述のグループに比べて、絵に近いシンボルを使っているロゴは、イラストのようなビジュアルと組み合わせた例が特に多いです。
ロゴ単体でのシルエットの印象が強く残るのが強みであり、個性が出やすいのもこのグループの特徴
です。ロゴに選ばれているモチーフにも、その地域特有のストーリーなど、色々な意味がロゴに込められている感じが伝わってきます。
その反面、このグループのロゴは、モチーフからうけとる印象に芸術祭のブランドも固定化されてしまう恐れがあります。例えば蝶のロゴと合わない作風の作品はどうプロデュースされるのかなぁとか。数年ごとに新規性を作っていく「芸術祭」のブランディングとしては、継続的に使い続ける難しさもありそうだと感じます。

「抽象的」な「文字」(左上)は文字が主役のデザイン

文字を抽象化したようなロゴは、スタイリッシュに使われていることが多いようです。
パット見た瞬間に、文字っぽいけど、文字としては読めないので、最初のグループのようなシンボル性も強いです。そのうえで、幾何形体を使った「図」と違って、「文字」は線で構成されることで抽象化しているので、細身な印象になって写真に合わせて使いやすそうです。
(追記 : 最初は、このグループではなく、次に紹介するグループを「文字」主役にしていました。しかし、文字を詳しく読むと文字による内容が補足されていくということもあり、こちらのグループはむしろ文字情報を主役にしたデザインになっている?と言えるかもしれません。)

「具象的」な「文字」(左下)は写真が主役のデザイン

文字をそのまま読める形でロゴにしているこのグループは、ロゴが文字や言葉としても認識されます。
そのため、ロゴだけでなく、使われるフォントの印象や背景に使う写真の印象に大きく左右されるのもこのグループの特徴です。そのため、デザインを見ても、写真を大きく見せることで伝えようとしていることがわかります。
「抽象的な文字」と「具象的な文字」を総じて考えると、これら後半の「文字」のグループになっているロゴたちは、どんなビジュアルにも展開可能な汎用性がありながらも、ロゴ単体でもつ主張する力は「図」に比べて少し弱い・・・・・・そんな感じでしょうか。

さいごに

今回は、芸術祭のロゴの特徴を手掛かりに「文字か?図か?」「抽象的か?具象的か?」で分類してから、それぞれの芸術祭のデザインの作られ方を考えてみました。

この分類方法はかなり僕の主観で無理もあったと思いますし、それぞれの芸術祭のブランディングもロゴだけで決まっているわけではないでしょうから厳密な分析には遠いです。でも新しくロゴを作るときに、例えばこんな分類を意識してみたら、文字から作ったタイポと、図から作ったシンボル、両方のロゴのアイデアを展開できたりするんじゃないでしょうか。

ロゴとデザインの関係に、いくつか傾向と戦略が見えてきたのは面白かったので、このデザインはこういう理由なんじゃないかとか、また話し合ってみたいです。DP9にいるロゴに詳しい方々、ぜひぜひご意見ください。では、またこんど!

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