続・時代劇レヴュー㊹:四匹の用心棒シリーズ(1990年~1993年)/素浪人無頼旅(1991年~1992年)

タイトル:①四匹の用心棒シリーズ ②素浪人無頼旅

放送時期:①1990年4月~1993年10月 ②1991年10月、1992年3月

放送局など:テレビ朝日(①、②とも)

主演(役名):①渡哲也(かかし半兵衛) ②舘ひろし(あざみ鬼十郎)

脚本:志村正浩(①、②とも)


1990年代前半くらいまで、民放各局は連続時代劇とは別に、単発の長時間時代劇を定期的に製作・放送していたが、その数において群を抜いているのはテレビ朝日であろう。

今回取り上げる二作は、1990年代前半、まだテレビ時代劇が元気が良かった頃の作品で、いづれも単発長時間の時代劇である。

①は渡哲也、②は舘ひろしと、石原軍団所属の俳優が主演を務めており、それだけに両作とも殺陣のシーンが多いのが特徴である(ちなみに、渡、舘ともに作品の主題歌も担当している)。

①、②ともにほぼ同時期に制作された時代劇で、同じ志村正浩の脚本によるせいか、筋書きも何となく似ており、キャストについても渡・舘双方が互いの作品にゲスト出演している。

①は、1990年~1993年にかけて計五作品が放送されたが、第一弾と第二弾以降にはストーリー上のつながりはなく(主演はどちらも渡哲也であるが、別の役を演じている)、第二弾以降は渡哲也演じる「かかし半兵衛」こと浪人・金子半兵衛が、旅先で様々な事件や陰謀に巻き込まれるというロードムービーテイストの時代劇である。

基本的にはレギュラーは渡哲也のみで、他の登場人物は毎回変わり、またシリーズ名にあるように、毎回かかし半兵衛以外にも複数人の浪人が登場するが、「四匹」に相当する浪人以外にも、物語のキーパーソンになる若侍だったり、半兵衛を慕う女道中師だったりが登場し、物語のメイン登場人物は必ずしも四人と言うわけではない(第二弾では、「用心棒」に相当する浪人は三人しか登場せず、第四弾では途中退場するキャラクタも含め、「用心棒」は五人登場する)。

主人公の金子半兵衛は、美作の小藩の藩士であったが、幕府の陰謀による家中の内紛で妻子を失った過去を持つ浪人で、かかしのように立ちつくしたまま瞬く間に相手を斬るほどの凄腕の持ち主であることから、「かかし半兵衛」(初期には「かかしの半兵衛」と呼ばれる場面もある)と通称されている(「かかし」の通称の理由は、作中で説明されることもあるが、第二弾と第五弾では特に説明されず、特に第五弾ではあたかも「かかし」が彼の名字であるかのような扱いをされている)。

毎回半兵衛は、行きがかり上、幕府老中・水野忠邦のターゲットにされた小藩と関わるが、自身も水野の陰謀の犠牲になった過去から、たいていは彼の陰謀を阻止する側に回って物語が展開していく。

水野忠邦は丹波哲郎がシリーズを通じて演じており、半兵衛以外では唯一毎回登場する(第一弾のみ登場せず)レギュラー的キャラクタであり、彼が登場することからするに、作中では明確に語られることはないが舞台は天保年間のようである。

他に、史実の登場人物としては、第五弾で水野の政敵として登場する老中の脇坂安董(作中では「脇坂淡路守」)がおり、こちらは萬屋錦之介が演じている(もっとも、脇坂は確かに水野と同時期に老中を務めているが、史実では水野の失脚前に死去しており、脇坂が水野を失脚させることになっている本作の設定は微妙に史実とはずれている)。


②は1991年から1992年にかけて、計二作品が放送されたが、こちらの主人公のあざみ鬼十郎(通称「鬼あざみ」)は、元々は旗本で老中・松平和泉守配下の隠目付であったが、恋人を殺されたことで幕府に恨みを抱き、現在は幕府のお尋ね者となっていると言う設定である。

②も①と同様、旅先で様々な事情を抱えた浪人や博徒達と鬼十郎が絡み、そこに旧主・松平和泉守も関わってくるのだが、本作で和泉守を演じるのは竹脇無我で、また和泉守の側近役で神田正輝、鬼十郎の剣の知己の柳生宗在役で渡哲也と、石原軍団からも両者がゲスト出演している。


①、②ともに、主人公が暗い過去を抱えている設定のせいか、全体的にハードな展開で、終盤までに命を落とす善玉のキャラクタも多いが(①の第五弾では、半兵衛以外の「用心棒」はすべて途中で落命している)、ストーリー自体はそれほど凝ったものではなく、純粋にチャンバラを楽しむことに特化している感のある作品である。

面白いと言えば面白いのであるが、特に①はストーリーが単調な割にはいづれも3時間の大作であるため、若干間延びしている感がなくもない。

とは言え、昔の元気が良かった頃の時代劇がどう言うものかを感じ取れると言う意味で、個人的にはどちらも好きな作品である。


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