続・時代劇レヴュー④:寛永風雲録(1991年)

タイトル:寛永風雲録・激突!知恵伊豆対由比正雪

放送時期:1991年1月2日

放送局など:日本テレビ

主演(役名):里見浩太朗(松平伊豆守信綱)

原作:柴田錬三郎

脚本:小川英、胡桃哲


1991年の1月2日に放送された長編時代劇で、同局の年末の看板番組と言うべき「年末時代劇スペシャル」の姉妹編的な位置づけであり、前年の同日に放送された「樅ノ木は残った」に続くシリーズ第二弾である(翌年からこの枠はなくなったので、シリーズの最終作でもあるが)。

前作同様、主演は里見浩太朗であり、VHS、およびDVDリリースの際には、「里見浩太朗時代劇スペシャル」のシリーズ名が冠されている。

新春の出し物らしく娯楽性を重視した作品で、史実よりもだいぶデフォルメされていて、実在の人物が多く登場するもののほとんどのキャラクタは創作されたもので、かつ原作の柴田錬三郎『徳川三国志』の設定・ストーリーとも大きく異なり、実質的にはオリジナル作品である。

「寛永御前試合」や「慶安の変」などのエピソードをベースにし、紀州大納言頼宣を擁立して徳川家光を亡き者にしようと図る由比正雪と、それを防ごうする「知恵伊豆」こと老中の松平信綱の暗闘を描いたものであるが、由比正雪は目的のためには手段を選ばない卑劣なキャラクタに、対して松平信綱はそれとは対象的に、身分の上下や立場にこだわらず、清濁併せ呑む器量の大きな人物として描かれるなど、路線としては「勧善懲悪」である(どちらかと言えば、史実の信綱の方が非情のイメージがあるが)。

とは言え、元来が娯楽作品であるため、ここまで徹していると却って清々しく、楽しく見ることが出来る。

作中、徳永家の姫がキーパーソンとして登場し、改易された徳永家が最後は大名に復帰したと言う展開になっているが、これは事実を大袈裟にしたフィクションであり(実際には大名ではなく旗本として家名再興する)、また後半に登場する明の水軍提督の鄭志明は、鄭成功をモデルにしたのであろう(当時すでに「明」は滅亡しているが、明の再興を唱える鄭成功を意識した設定であろうか)。

個人的には、里見浩太朗は松平信綱のような冷徹な政治家よりも、同じ家光期の老中で剛直な人物として知られる阿部忠秋の方がイメージに合うような気がする(どちらかと言えば、信綱役は丸橋忠弥役で出演している榎木孝明の方がはまり役であろうが、当時の榎木はどちらかと言えば官僚肌の人物よりも武人肌の役を演じることが多かった)。

由比正雪役は西郷輝彦で、徹頭徹尾救いようのない悪玉を演じているのは珍しい。

正雪と手を組み将軍の座を狙う紀州頼宣役は中尾彬で、時代劇「暴れん坊将軍」で同様の尾張宗春役を演じていただけに、こうした悪の黒幕的な役が彼はやはりよく似合う。

ちなみに、中尾は里見浩太朗が主演を務めた日テレの連続時代劇「長七郎江戸日記」では正雪を演じている。

最後に、キャストについて一点だけ不満を言えば、駿河大納言忠長役の風間杜夫は、キャラクタ的には合っているのであるが、出演シーンが極端に少なく、かと言って「忠臣蔵」の土屋主税のようにワンシーンでインパクトを残すような役柄でもなく、いささか風間杜夫の無駄遣いの感もあった(笑)。


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