時代劇レヴュー⑮:人形歴史スペクタクル・平家物語(1993年~1995年)

タイトル:人形歴史スペクタクル・平家物語

放送時期:1993年~1995年(全五十六話)

放送局など:NHK

主演(役名):風間杜夫(平清盛ほか)

原作:吉川英治

脚本:小川英・胡桃哲・杉昌英


1993年から1995年にかけて断続的に放送されていた「人形歴史スペクタル・平家物語」はタイトルの通り人形劇であるが、これは「ドラマ新銀河」と言う夜の帯ドラマの枠で放送されており、放送時間も20時40分~21時で、人形劇と言えども大人向けに作られた作品であった。

かつてNHKは一回の放送時間四十五分、全六十回にわたって放送された「人形劇・三国志」を手掛けているが、人形の制作を担当したのはこの「三国志」の人形も手がけた川本喜八郎で、キャスト・スタッフともに「三国志」と共通している(例えば、両作品とも脚本は小川英、音楽は桑原研郎が担当し、声優も何人かは両作品に出演している)。

「三国志」は原作の「三国志演義」以上に劉備=善玉、曹操=悪玉と言う図式を強調し、作風にも子供向けの要素が見られたが、「平家物語」の方は完全に大河ドラマのような歴史劇を見る大人向けに特化した内容になっており、原作も吉川英治の大作『新・平家物語』である。

物語は五部構成で、原作同様清盛の若い頃から始まるが、物語の終盤に関しては原作と異なって壇ノ浦で平家が滅亡するまでしか描かれず、原作でかなりを分量が当てられているその後の源義経の流浪と死についてはナレーションであっさりと片づけられている。

各部には「青雲」「栄華」「乱」「流転」「無常」のサヴタイトルがつけられ、各部はそれぞれ十二話(五部のみ八話)構成であり、全部で五十六話と大河ドラマ並みの大作となっている(ただし、一話あたりの分量は二十分と短いが)。

この作品は現在完全版DVDがリリースされており、同じ作品を原作とした1972年のNHK大河ドラマ「新・平家物語」が総集編とごく一部の放送回しか現存しておらず、またやはり同じ作品を原作にした1955年~1956年公開の大映映画「新・平家物語」三部作(平清盛役は市川雷蔵)が原作の部分的な映像化であることを考えると、現状で視聴出来る唯一の「新・平家物語」の完全映像化作品と言える。

メインキャストには、風間杜夫、石橋蓮司、森本レオ、寺泉憲、紺野美沙子など、ヴェテランの俳優陣を起用しており、これは「三国志」でも同様であったが、限られたキャストですべての役を回している。

そのため、主役に当たる風間杜夫は、平清盛・弁慶・平維盛、石橋は平時忠・後白河法皇・文覚、森本は阿部麻鳥・源義朝・畠山重忠、紺野は平時子・静と言う具合に、それぞれが一人で何役も演じている。

とは言え、「三国志」よりも全体のキャスト数は多く、また「三国志」では起用されたのは俳優のみであったが、この作品では松岡洋子、関俊彦、高山みなみと言うような著名声優も出演している。

内容的なことに言及すれば、物語としては非常によく出来ていると思うが、全体の話数配分のバランスが悪いと感じた。

清盛が太政大臣になって平家が全盛を迎えるまでの物語は、比較的駆け足で進むのに対し、清盛の晩年に各地の源氏が挙兵して以降の物語は妙にゆっくりと進み、中でも特に三部はほとんどが木曾義仲メインの話になっていて、物語だけを見た場合は平家よりも源氏にウェイトが置かれている観もある。

原作と比較しても、個人的にはもう少し前半を時間をかけて描いて欲しかったようにも思う。

他には、微妙に史実とも原作とも違う描写があり、例えば保元の乱は天皇方の夜討ちではなく、鴨川を挟んで両軍が昼間に合戦した描写になっていたが、改変したのは何らかの事情があったのであろうか。

細かな疑問点がないわけではないが、そうは言っても全体的にはよく出来ていると思うし、原作の雰囲気を忠実に伝えており、原作ファンなら一見の価値のある作品と言える。


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