続・時代劇レヴュー⑳:御家人斬九郎(1995年~2002年)

タイトル:御家人斬九郎

放送時期:1995年~2002年(五シリーズ、全五十話)

放送局など:フジテレビ

主演(役名):渡辺謙(松平残九郎家正)

原作:柴田錬三郎

脚本:金子成人、野上龍雄、田村恵、古田求、田坂啓、中村勝行ほか


柴田錬三郎晩年の連作小説『御家人斬九郎』は、江戸時代後期を舞台に、名門・大給松平氏の一門ながら「お目見え以下」の御家人である松平残九郎家正(架空の人物)が、収入を得るために通常直参には禁じられている「副業」(「片手業」と呼ばれる)を通じて様々な事件に関わり活躍する様を描いた作品で、タイトルの「斬九郎」は主人公・残九郎の通称で、切腹の介錯人を得意としていたことに由来する。

この小説を原作とし、フジテレビで都合七年にわたって放送されたのが本作「御家人斬九郎」で、合計五シリーズが制作され、総数は五十話に登った。

シリーズ化されたことからもわかるようにかなりの人気作であり、主演の渡辺謙が原作のキャラクタにうまくはまったこともあって彼の当たり役の一つとなった(五シリーズ最終回では、渡辺謙自らが監督を務めている)。

原作は十数話しかないため、ドラマ版の大半はオリジナルストーリーであるが、全編を通じて非常に面白く、悪玉もいて派手な殺陣もあるが、単純な勧善懲悪に収まらないエピソードも多く、各話よく練られて作られている印象がある。

本作の最大の魅力は何と言ってもキャストで、主演の渡辺謙ほか、若村麻由美、益岡徹、塩見三省、岸田今日子などレギュラー陣の確かな演技力もあって彼らの毎回の「掛け合い」大きな見どころとなった。

中でも渡辺と、その母親役の岸田今日子のコミカルなやり取りは出色である。

大半のエピソードは、徳川家斉の治世末期を舞台とし、家斉や大塩平八郎など実在の人物が絡む話もあるが、最終回のみ舞台が幕末の開国直後になっており(人物設定はそのまま)、井伊直弼や長野主膳が登場する(なお、ラストシーンは明治期を思わせるような描写になっている)。

非常に面白い作品だけに、2020年5月現在、ソフト化されていないのが惜しまれる。


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