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11.2.9 国際的諸運動の進展 世界史の教科書を最初から最後まで

19世紀は、大国がバランスを取り合って軍事的に対立と妥協を繰り返す時代だ。
科学技術の進歩によって、軍事兵器の殺傷能力が飛躍的にアップした。



そんな状況に対し、「諸悪の根源は資本家が国と結びつき、労働者を搾取していることにある! 国をこえて勢力を拡大させている大国と資本家たちの支配をひっくりかえすには、国をこえて労働者同士で団結して戦う(階級闘争する)必要がある!」という運動が盛り上がる。


1864年にロンドンで結成された第1インターナショナルがその代表例だ。指導者は社会主義の理論家 マルクス(1818〜1883年)だった。

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しかし、「どうしたら理想の社会をつくれるか?」という方法をめぐり、「まずは労働者の指導するに国が必要だ。



国を消滅させるのはその後だ」とするマルクスと、「いやいや国なんてもは初めから無用だ。即刻平等な社会をつくるべきだ」とするバクーニン(1814〜1876年)ら無政府主義者(アナキスト)との対立起きて険悪ムードに。

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さらに1871年にパリに生まれた「労働者による自治政府」(パリ=コミューン)が弾圧されると、第1インターナショナルも弾圧対象とされ、対応の不一致から1876年に解散してしまった。



一方、急増する戦争犠牲者を治療する目的で赤十字条約が結ばれたのもこの時期。
ルーツはクリミア戦争で、イギリスのナイティンゲール(1820〜1910年)の看護活動を評価した、

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スイス人のアンリ=デュナン(1828〜1910年)の発案で、1864年ジュネーヴで締結された。

また、1896年には、フランスの貴族クーベルタンによって、古代ギリシアの祝祭を“復活”させる形で国際親善を図ろうと、国際オリンピック大会(近代オリンピック)の運営が始められた。
第一回大会はギリシアのアテネ。
当初は「スポーツは報酬を得ずにやるもの」というアマチュア精神(アマチュアリズム)が重んじられていた(でも、「それじゃあ貴族や金持ちしかできないじゃん!」という批判も生まれ、20世紀後半にはプロも参加できるようになった)。


ヨーロッパ各国が「国民の団結を高めた国(国民国家)づくり」にいそしみ、互いに植民地獲得競争をしながら軍備増強を進める時代。

そして、テクノロジーの進歩によって、人類の世界が “どんどん良い方向に向かっているはずだ” と素朴に信じられた一方で、発展がもたらす「マイナスの側面」を「みんなで改善していこう」という気概にあふれていた時代。

そして、それらの動きが電気通信技術によって、何万キロも離れた外国の情報がはるかに短い時間で大量に手に入るようになった時代。



そんな時代だからこそ、「国民」の枠にはまって「国のために」まとまっていこうという考え方(国民主義)だけでなく、その枠を超えていこうという考え方(国際主義)のムーブメントが巻き起こっていったわけなんだ。


しかし世の中の流れは、確実に「国」を単位とする「国民主義」に傾いていった。
オリンピックも「お国自慢をする格好のチャンス」というわけで、しだいに「国」や「民族」の優劣を競うことに価値が置かれるようになっていく。

敵味方関係のない看護をめざした赤十字も、第一次世界大戦においてはナショナリズムに屈する声も高まった。

「赤十字か、鉄十字か?」
水を求めているイギリスの負傷兵。それに対し、ドイツの看護師がコップの水をこれみよがしにこぼしている。「鉄十字」とは軍人に対して授与された勲章のこと。




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