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10.1.3 資本主義体制の確立と社会問題の発生 世界史の教科書を最初から最後まで

蒸気機関を動力として使う。

これは、人類の社会と経済に、とてつもないインパクトを与えるイノベーションだった。

それが初めに起こったのがイギリスだった。

蒸気機関が導入された結果、イギリスは「業」(アグリカルチャー)中心の社会から「業」(産業;インダストリー)中心の社会に転換した。
工業中心、つまり「ものづくり産業」中心の社会のことを、産業社会(インダストリアル=ソサイエティー)と呼ぶことにしよう。


これって相当革命的なことだったんだよ。


たしかに、産業社会への転換(産業革命)以前にも「工業」はあったにはあったけれど、あくまで「手仕事」(手工業)が基本だし規模も小さかった。

ビジネスの元手を持っている人が農家に内職(問屋制家内工業)をさせたりとか、職人さんたちが組合をつくって持ちつ持たれつ細く長くものづくりをする(ギルド制手工業)が一般的。


しかし、蒸気機関を動力としてつかえば大量に商品を生産できることがわかると、大規模な機械製の工場が出現し、それ以前の家内工業や手仕事は急速に没落してしまう。

一部は「伝統工芸」として残るけれど、なくなってしまった職業も多かった。


技術が飛躍的に発達すると、それまで当たり前だった仕事がなくなってしまうかもしれないということは、まさに現在のわれわれが直面している状況でもあるよね。

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この時代には、従来のように商品を売ってもうける大商人とか、土地で人を働かせてもうける大地主に代わって、機械を使って商品を生産し「資本」をどんどん増やしていこうとする、あたらしいタイプの人々が現れた。
産業によって無限に資本を増やしていこうとした彼らのことを、「産業資本家」という。

さまざまなものが工場でつくられるようになり、人々の「欲しい」と思う気持ちをかきたてるようになるにつれて、社会における資本家の地位も上昇していった。とくにイギリスでは資本家が、地方の「地主貴族」(ジェントリ)や爵位を持つ「貴族」と融合しながら、「ジェントルマン」という“幅のある”上層階級を形成していくこととなるよ。




変化の影響を受けたのは上層階級だけじゃない。
さまざまな人々の生活スタイルも激変。
たとえば服はオーダーメイドでつくるものではなく、商品を購入するものとなっていく。

伝統」にこだわるよりも、「進歩」することがいいことだ。
変わらない」ことよりも、「変わる」ことがいいことだ。


価値観も転換していった。



一方で、問題も起きる。
都市に人口が集中していく一方で、上下水道といった都市のインフラが追いつかず、感染症が流行することも多々出てくる。


大規模定住するようになった人間にはつきものの問題だったけれども、「資本」を無限に増やすことばかりにこだわるあまり、都市に住む労働者の生活環境は、しばしば資本家のアウトオブ眼中に。
長時間労働や汚い職場は当たり前。
超絶ブラックな労働環境をたすける法律もなく、「文句をいうならクビだ」と資本家からいわれてしまう。
「みんなで団結して交渉しよう」とまとまる労働者たちも現れるようになった。この組織を「労働組合」(レイバー=ユニオン)という。


工場では機械の動作に合わせて働くことが求められるので、手仕事の時代のように自分のペースに合わせた働き方のようなことはゆるされない。
金曜日や土日に飲んだくれて、月曜日には仕事にいかないといったルーズな働き方は「悪いもの」とされるようになり、規律正しく働くことが強く求められるようになっていったのもこの時期の特徴だ。

彼らはしだいに「自分たちは “労働者” という階級のメンバーだ」(労働者階級)という意識を持つようになっていき、労働者の “働き方改革” や社会の “しくみ改革” も叫ばれるようになっていく。


労働問題」や「社会問題」といった、今ではあたりまえのワードが出現してきたのも、この時代のことなんだよ。農業中心の伝統的な社会では、あり得なかったような複雑な出来事がたくさん起きるようになっていくことがわかるね。

このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊