10.3.1 フランス革命の構造 世界史の教科書を最初から最後まで
アメリカ独立戦争は1783年に終結し、1789年にはワシントン(1789〜97年)がアメリカ合衆国初代大統領に就任した。
絶対君主の現れないようにデザインされた国づくりは、ヨーロッパ諸国の注目を浴びた。
さらに1785年には蒸気機関を動力に用いた「力織機」(りきしょっき)が発明され、綿織物の大量生産をはじめていたMADE IN BRITAINの商品が、大量にヨーロッパに流れ込む状況となっていた。
一方、当時のフランスはいぜんとして古臭い制度(アンシャン=レジーム、旧制度)が残る状況。
国王ルイ16世(1774〜92年)の支配の下、第一身分(聖職者)・第二身分(貴族)・第三身分(平民)に分かれ、“ピラミッド型”のケーキのように国内の社会は横に分断され、さらに都市を自治するグループ、職業別組合、教会や修道院、田舎の農民たちによるグループなどさまざまなクラスタ(中間団体;社団)に分かれていたのだ。
1783年にアイスランドの火山(ラキ火山)と、
北関東の浅間山が大噴火を起こしたことから、
天候不純が続き、食料供給が不安定化。第三身分の生活は苦しくなっていた。
また、1786年にはイーデン条約によってイギリスとフランスの間の自由な貿易が解禁。イギリスの機械製プロダクトが流れ込む中、フランスの企業家たちは危機感を募らせていった。
そう考えた企業家たちにとって、”じゃま“な存在だったのが、フランスにこびりつく旧来の制度の数々。
求人を募集しようにも、フランスの人口の大多数を占める農民たちは、領主の支配下に置かれている。
本当は自由に働かせたいのにね。
しかも領主として君臨していた第一身分と第二身分には、税金を納めなくてもよいという特権(免税特権)がみとめられていた。
「絶対王政」といえども、国王の権力は無条件に強いわけじゃなかったんだね。
一方、第一身分・第二身分の人々の中にも、「いつまでも古臭いことをやっていちゃだめだ。これからの時代は、土地を有効活用し大きな工場を建てて大量生産をする時代。変わらなきゃ」と考える人がいたのも事実。
また、第三身分を差別するのは「合理的じゃない」とする思想(啓蒙思想)の影響を受け、「商工業で成功したのであれば、実力にふさわしい扱いをするべきだ。身分で人間の権利に差をもうけるのはおかしい!」と主張する第一身分・第二身分も現れるようになっていた。
すでに貴族の中には、啓蒙思想家を館に招いて、新しい時代について語り合う会(サロン)を開く”インフルエンサー“もいたぐらいだからね。
そんな中、1789年にシェイエス(1748〜1836年)という聖職者が出版した『第三身分とは何か』というパンフレットが大ヒット。
「第三身分はこれまで”空気“のような存在(無)だったけれど、これからはフランスの「すべて」となるべきだ!」というメッセージは、さまざまな人々の心に届いていくこととなった。
しかし、実際に「革命」の導火線に火をつけたのは、第三身分ではない。
実は、第二身分(貴族)だったのだ。
1757年にイギリスに敗れインド東部の拠点をほぼ失い、1763年にもイギリスに敗れ北アメリカの植民地を失っていたルイ15世の治めるフランス王国。
後を継いだルイ16世は、アメリカ独立戦争の際に、独立軍の側を支援してイギリスに対抗しようとしたものの、得られたものは少なかった。
かかったのは金ばかり。
赤字を埋め合わせるために、啓蒙主義を唱える最先端の学者をブレーンにつけ、経済改革を断行。
その内容は、第一身分・第二身分に対して「これからは税金をとる」というもの。
これを阻止しようと、第一身分と第二身分の多数派が国王に猛反発。国政について身分別に教義する、三部会(150年以上も開かれていなかった!)の開催を要求する。
その姿勢を見た、第三身分が「お前たち(第一・第二身分)は税金払って当たり前だろ!」と批判。
これが大規模な騒ぎに発展していくことになる。
しかし、事態は「国王 vs 第一身分・第二身分 vs 第三身分」のようなシンプルな構図ではない。
第一身分(貴族)・第二身分の中にも、第三身分側に立つ人々もいた。
第三身分の中にも、機械を導入して大工場を建てようとするブルジョワ(有産市民)、農民、それに都市に住む職人・徒弟といった貧しい民衆など、さまざまな立場の人々がいたのだ。
革命を推進したおもなグループとしては、①貴族、②ブルジョワ(有産市民)、③農民、④都市の民衆の4つがあった。
時代の”空気“に影響されながら、各グループはそれぞれの「自由」や「平等」を叫び、社会を変えようとした。
同じ「自由」という言葉ひとつ取ってみても、主張するグループや個人にとっても、さまざまな意味が込められていたんだ。
社会の”変化“や”偶然“に左右され、さまざま人々が、くっついたり離れたりしながら、「新しい社会」をデザインしようと情熱を燃やす。
それがフランス革命の魅力といっていいだろう。
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