新科目「世界史探究」をよむ はじめに
まずはじめに確認しておきますが、
探「求」ではなく、探「究」です。
「世界史探キュウ」の「キュウ」の漢字は、究であって、求ではありません。
では、本題です。
このほど、高等学校の地理歴史科に、新たに「歴史総合」「世界史探究」「日本史探究」という新科目が設けられます。
「歴史総合」については、すでにこちらで私の理解するところは、ひととおりまとめてあります。御覧ください。
で、今度は「世界史探究」がどのような科目であるか、最初から最後まで、ひととおり読み通していきたいと思います。
それは、世界史を教える者に対しても、ある意味、世界史を「学び直す」プロセスを要求するものとなるはずです。
そもそも探究とは
探究は今回の学習指導要領改訂の目玉となっている学習活動を指し、他の科目でも重視されています。いわば文科省の採用した用語であり、そこには次のような特別な意味合いが含まれています。
(出典:文部科学省「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開」(平成25年)第2章、https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/08/01/1338358_3.pdf)
この「ぐるぐるの図」(私はそう勝手に呼んでいます)のように、問いを立て、資料をもとに考え、仮説を立て、学んだことをもとに次の問いにつなげていくプロセスを通して、主体的に学ぶ力を育てようというわけです。
世界史探究の目的
では、新科目「世界史探究」という科目は、どのようなことを探究する科目なのでしょうか。
学習指導要領(注)によれば、
なるほど。
また、別の箇所で説明されている「ねらい」においては、
ともあります。
つまり、「世界史探究」を2階部分とするならば、1階部分には「歴史総合」という、やはり新しく設置される科目がある。それをベースにして、世界の歴史の「世界の歴史の大きな枠組みと展開」を扱おうというわけです。これは日本史探究についても同じことがいえます。
***
「世界の歴史の大きな枠組みと展開」
では、「世界の歴史の大きな枠組みと展開」って、いったい何のことなんでしょうか。
後述する世界史探究の目標の部分では、「世界の歴史の大きな枠組みと展開に関わる諸事象」として、「地球の誕生や人類の誕生を視野に入れつつ,古代文明の形成から現代に至る世界の歴史の展開を扱い,諸地域の歴史的特質の形成,諸地域の交流・再編,諸地域の結合・変容という大きな枠組み」と述べられています。
つまり、「展開」とは、「地球の誕生や人類の誕生を視野に入れつつ,古代文明の形成から現代に至る世界の歴史」のこと。つまり、世界の歴史の学習内容のことです。
次に「枠組み」とは、
その大きな遷移のあり方のことを指すようですね。
「特質」をもつ諸地域が、「交流」する中で「再編」され、
さらに「結合」し「変容」していく。
・・・うーん、どういうことでしょう。
たとえば、日本の歴史を振り返ってみて、他地域と比較し、「これが日本の特質だ」というものがあるとしましょう。でもまあ、その「特質」というべきものが、現在にいたるまで、不変であったわけではないですよね。
日本は海に囲まれていますが、日本の外の地域との「交流」から、さまざまな影響を受け、もともとあった「特質」は「再編」されていきました。特に近代と呼ばれる時代になると、地球各地の人々が密に「結合」し、思想やライフスタイルも「変容」していくことになります。
世界史探究は、この世界の謎を解き明かす科目である
現在は「あたりまえ」のように見える文化や価値観、社会のしくみや政治体制といったものごとも、歴史をたどってみると、こうした世界各地の歴史的な展開と、密接にかかわりあっているものです。
もちろん、過去の世界にまつわる多くの固有名について知っていることは、とても重要なことです。
しかし、多くの固有名を記憶しているからといって、固有名と固有名をつなぐ関係性を、豊かに紡ぐことができるとは限りません。
過去の世界について、どのように語りうるのか。
地球の誕生からグローバル化した現代世界に至るまで、世界の歴史が「展開」していく「枠組み」を、大きくとらえていくと、過去の世界が、まったく違った姿でみえてくるはずです。
その意味で、世界史探究という科目のキモは、この世界の「謎」を解き明かすことにある――そのように言うことができるのではないかと考えています。
***
では、そういうわけでこれから新科目「世界史探究」の内容を最初から最後まで確認していきます。現時点では教科書見本は、いまだ私の勤務校には届いていないわけですが、来る授業に備え、どのような構成が望ましいのか、あくまで生徒を前に試行錯誤する教員の立場から考えていきたいと思います。では次回は、「謎」を解き明かすための5つの視点を確認するところから始めていきましょう。
関連記事
このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊