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"教育系" note まとめ

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"教育系" noteのまとめです。
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2024年3月の記事一覧

39歳ワーママが、慶應大学院に合格するまでの46日間【前半は無料で読めるよ】

4月から大学院生になることを、前回書きました。 私が慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科の受験を決意してから、1次試験まで、たった12日間。しかもそのうち、はじめの5日間はアメリカ旅行中でした。そこから2次試験を経て、合格通知を手にしたのは46日後。日本人で合格したのは、私の受けた時は10名ちょっとでした。 「こんなにスピーディに大学院って受かるの?」 今の私が見ても仰天のスケジュールです。 私は高校時代、勉強が嫌いで苦手でした。当然ながら慶應を受けるなんて夢

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双眼実体顕微鏡のフレア解消法

はじめに最近購入した廉価品の双眼実体顕微鏡で白い背景で虫を観察すると、視野全体に白っぽいフレアが広がり、まったく使い物にならないことが判明した。廉価品とは言っても、メーカー希望小売価格10万円、実勢価格4万数千円である。実に落胆させられたが、ローテクの工夫でフレアをほぼ解消し、劇的にコントラストを上げることができた(トップ画像参照)。材料はタダ同然の簡単な工作でできるので、紹介する。 フレアの発生と対策の原理フレアとは、像の形成に寄与しない光(迷光)が過剰に光学系に入射して

理想の文化人類学の概説書とは何だろうか?(前半)

文化人類学の概説書は、近年数多く出版されている。今回『東南アジアで学ぶ文化人類学』(以下、本書)を作成することになり、これらの概説書(入門書・教科書)を読み比べ、理想の概説書とはどういうものかを考えてきた。 私にとってその答えは、2点に集約できる。 1点目は、自分にとって身近ではない文化圏に生きる人びとの生活について知ることを通して、自分が抱いていた常識を覆す視点を身につけられる教科書である。 以前、私は人類学におけるフィールドとは、人類学者の佐藤知久の言葉を引き「〈な

東京工業大学・上田紀行教授の最終講義をダイジェストでお届けしてみる。

3月8日、東京工業大学大岡山キャンパス70周年記念講堂で行われた上田紀行教授の最終講義&セッションに行ってきました。「東スポの記者が何しに東工大へ!?」と思われるかもしれませんが、その理由は最後にお話ししようと思います。まずは同じ教室にいるつもりになって、上田先生の愛があふれる講義をお楽しみください。(東スポnote編集長・森中航) 【前半】私たちの人生を豊かにするもの、逆に薄っぺらくするもの 上田紀行教授 さて、私はいったい何をやってきた人間なんだろうかっていうことを、最

成績別クラス編成の効果を上げるカギは教員のモチベーション・技量にある(Wezzy2019.05.31掲載)

同僚や友達など周囲の人間の生産性の高低の影響を受けて、自分の生産性が上下することを「ピア効果」といいます。教育分野では生産性が学力に置き換わりますが、一般的には、教室の中で高学力層にいる生徒は低学力層の生徒に足を引っ張られることはなく、反対に低学力層の生徒は、高学力層の生徒に引っ張られて学力が向上する(正のピア効果がある)とされています。 このピア効果を最大化するには、高学力層の生徒と低学力層の生徒でクラスを編成すればいいことになります。しかし、実際に中学力層の生徒を教室か

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・東京書籍の比較編

これまで山川出版社の『詳説世界史:世界史探究』(ややこしいタイトルだ…)の索引をベースにして、ほかの教科書の索引の比較を試みてきた。 帝国書院の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/neeb8e1b5eae4 山川出版社『新世界史』の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/nf81a976401fb 実教出版の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/ned12e0c4dfbf

勉強に対する大人の見立てはだいたい間違っている。

勉強に対する大人の見立てはだいたい間違っていて、それはおそらく自身の学生時代において、勉強に対する認識が間違った大人の影響を受けて形成されたから。多くの人は大人になってもその後遺症の中で生きている。以下 勉強に対する子供の「やる気がない」という親の嘆きは、現在の子供の内面を責める形で表出するが、その時に親が見て見ぬ振りをしているのは、子供がいかなる時間を過ごしてきたかという歴史の問題であり、その歴史には当然親も含まれる。このことに自覚的であれば、勉強しない子供のやる気を一方

【新学期】社会系授業で使えるかもしれないWebサービス50選

GISを利用したインタラクティブ・マップやウェブ上のアーカイブ、生徒が自ら使えるツールなど、オンライン上で公開されている社会系授業で使えるかもしれないWebサービスをランダムに50個集めました。 「ネタ」としての提示は "打ち上げ花火"的 なものとなりがちですが、計画とアイディア次第で地理総合、地理探究だけでなく、歴史総合、世界史探究、日本史探究、公民科においても効果的に使えるものもありそうです。 *** 1. 文化財総覧WebGIS:身近な場所の文化財の場所を見せたい

先生という仕事

今でも一番記憶に残る担任の先生は小1・2のころのH先生。彼女がクラス全員を横に整列させてビンタされた日のことが忘れられない。理由は覚えていない。全員をビンタした後、H先生は「あなたたちは1回ずつビンタされただけだけど、私はあなたたちの人数分叩かれた」と言って涙を流していた。僕は頬も心も痛かったし叩かれたことに納得もしていなかった。全員ビンタなんて今だったら絶対あり得ない話だけど、そうじゃなかったあの当時(1980年代前半)の時代感覚を忘れたくない。 彼女がダメな先生だったとは

【ニッポンの世界史】#32 少女漫画がひろげた世界史の担い手:『ベルサイユのばら』を中心に

 はじめに結論から。  少女漫画『ベルサイユのばら』が、世界史をコンテンツとして楽しむことのできる広汎な読み手を育て、歴史の関わり手を男性だけでなく女性にひろげる役割を果たした。  今回ここで述べるのは、たったそれだけです。 *** 歴史を物語として楽しむカルチャー  歴史を物語として楽しむ行為自体には、口伝えの伝承や軍記物語など、それこそ長い長い歴史があるわけですが、日本ではとりわけ近世以降、商業的な出版や演劇、講談を主要なメディアとして、たとえば『三国志演義』の二

私立大にとって重要度の増す収容定員充足率。その数値は、受験生の受験校選択の際に厳しくチェックされることに。入学定員充足率との関係性にも注目!

修学支援制度でも重要なチェックポイントにここで、収容定員の充足率の数値が重要になってきたことについて、もう一度触れておきたいと思います。 私学助成における不支給の基準が、入学定員ではなく収容定員の充足率に切り替わったことは既にお伝えしましたが、もう一つ、「高等教育の修学支援制度」においても、収容定員の充足率が重要な基準となっているのです。 高等教育の修学支援制度とは、政府が設けている「意欲ある子供たちの進学を支援するため、授業料・入学金の免除または減額と、返還を要しない

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・帝国書院の比較編

この記事の要約この記事は長い(約40000字)のではじめに要約を書いておきます。 以前、山川出版社の新しい世界史教科書の用語がどのように変化したのか記事を書いたことがあった。しかし、必ずしも単純に「増えた」「減った」と言えないのではないかという事実がみえてきた。 そこで今回は帝国書院の世界史探究教科書の収録語と、山川の収録語を比較することで、山川が収録しなかった用語とは何かをあぶり出してみることとした。 これによって、世界史の教科書にも多様な編集方針があり、その背後には

【ニッポンの世界史】#31 学習参考書と世界史:なぜ世界史は「暗記地獄」化したのか?

 これまで私たちは、「ニッポンの世界史」は、アカデミズムや学習指導要領のような“公式”世界史と、それらと対抗関係にある“非公式” 世界史の綱引きによって形成されてきた経緯をみてきました。  “公式”の語りを、“非公式”の語りが突き崩すといっても、両者の間に厚い壁があったわけではありません。  ときに、ひとりの書き手が、両者を行ったり来たりすることもみられました。  歴史学者の土井正興(1924〜1993)がそれにあたります。 土井正興: スパルタクスの研究者から教科書執

【ニッポンの世界史】#30 文化圏の罠:世界史に「アフリカ」は入っているか?

周縁の不在  1970年代の社会科教育に関する雑誌をみてみると、「好きな国」を聞くアンケートをとってみたり、何も見ずに地図を書かせてみたりして、「生徒たちの関心がヨーロッパにばかり向いている」という嘆き節が、よく掲載されています。  この地図くらい描ければ十分とも思えるのですが、たとえば職業系の高校において同じようなことをやらせてみても、全然描けない。  世界史の授業中に顔をあげさせるだけでも難しい。  そういった嘆きも聞かれるようになります。  国外に眼を向ければ、世界