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2023年6月の記事一覧

書籍『女性ジャズミュージシャンの社会学』を読んで

「5月のいろいろ(2023年)」に書きましたが、追記していくとかなり長くなってきたので、別記事でポストします。 こちらの書籍です。 『女性ジャズミュージシャンの社会学』 まずは、「5月のいろいろ(2023年)」に書いたものです。 ディスクユニオンで物色していた時に、たまたま見つけた本。 当事者として読んでおこうと思い、買いました。 フランスのジャズ界での社会学調査。 ただし、調査して書いた著者がジャズシンガーなので、第一部のジャズシンガーをめぐる状況の項目は主観的な目

うしろめたさに付き合えば、世界が変わる――松村圭一郎『うしろめたさの人類学』レビュー①

(※この記事は2020/02/06に公開されたものを再編集しています。) 時間どろぼうは時間を盗んだのか  久々に話した友達と、もう何年も思い出さなかった小説の話をした。ミヒャエル・エンデの『モモ』だ。近代化が迫るヨーロッパの古い都市あたりを舞台にしたという体裁の物語である。 『モモ』には、悲哀ある床屋のフージーが出てくる。ある雨の日、彼は灰色の気持ちで物思いにふけった。 フージーは、客との会話を楽しんでいたし、カットや石鹸の泡立てに熟練しており、自分の仕事に自負すら

歴史の扉Vol.11 ポテトチップスの世界史

ライターの稲田豊史さんによる『ポテトチップスと日本人—人生に寄り添う国民食の誕生』(朝日新聞出版、2023年)を読んだ。ポテトチップス好きの私としては、カバーの装丁がポテトチップスのようであるのも良い。思わず手にとってしまうではないか。 世界史的な観点から、いくつか気になった点を紹介がてら整理してみよう。 ポテトチップスと有色人種 ポテトチップスの歴史はそんなに古くないようだ。一般には「アフリカ系アメリカ人の男性を父に、ネイティブアメリカンであるモホーク族の女性を母に持つ

地政学はなぜ批判されるのか?—古典理論を中心に―

地政学、流行ってますよね。 書店にはだいたいどこでも地政学の本が置いてありますし、Youtubeでも解説動画がたくさんUPされています。 地政学とは、「国の政策を、主として風土・環境などの地理的角度から研究する学問」(日本国語大辞典)とされます。地理学と政治学を組み合わせたもの、という説明がされることもありますね。「地理が分かれば国際情勢が分かる!」という点が地政学の魅力としてよく語られます。 しかし一方で、地政学に対する批判も、(世間的な影響はともかく学術方面では)根強

適切なタイミングで、適切に一度死ぬこと。そして転生する

生産としてのビジネス、作品としての本、趣味としてのポーカーツイッターで呟いたら、幻冬舎の箕輪さん、NewsPicksパブリッシングの井上さん、GOの三浦さんらが反応してくれた。 と、箕輪さんが投げかけてくれた言葉は、僕がケニアで暮らしの実験を始めてから、もやもやとしていた所在を見事に言語化してくれたように思う。 僕がケニアで晴耕雨読の生活を送っている間に、日本の出版、ひいてはメディア環境全般が様変わりした。箕輪さんがNewsPicks Bookでビジネス書のベストセラーを