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国際的観光地になるためには?山口県岩国市・周防大島町と考える地方創生

2019年10月18日、山口県岩国市で開催された、岩国市・周防大島町主催、日本MGMリゾーツ後援のインバウンド観光促進セミナー『世界目線で考える。』。 会場には定員である120人を超える観客が集まり、一部立ち見が出るほどの盛況となった。

登壇したのは、外交官としてビザの制度設定責任者、日本紹介のエキスパートとして大使館で様々な広報事業や企業支援を行ない、近年においては世界遺産の登録責任者として携わってきた高橋政司(ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント)。世界の観光産業の動向に触れつつ、岩国市、ひいては日本のインバウンド施策が抱えている課題について説いた、約2時間にわたるセミナーの内容を届けたいと思う。

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狙うべきは、滞在期間の長い欧米の観光客

まず、観光地として岩国市を盛り上げるに当たり、絞るべき焦点はどこにあるのか。高橋は、欧米国からいかに観光客を呼び込むことが効果的かを語る。

「全世界のGDPのうち観光業が占める割合は10.5%にも登ります。そして全世界の旅行客のうち、50%がヨーロッパ出身で、全体の70%がアジア以外の人たち。しかもヨーロッパから来る人は日本で平均11.6日間滞在していて、16.5万円落としていきます。我々が目指すべきなのは、欧米人をどれだけ岩国市に引っ張ってこれるか、です」

インバウンドで近隣国を狙うリスク

一方で、日本全体では近隣国のインバウンド施策が重視されており、欧米から観光客を引き入れることはハードルが高いと思われがちだ。しかし高橋は、そのハードルが高いところをあえて狙っていくことが、インバウンド施策としてのポイントになると述べる。

「日本は、近隣国の方が気軽に訪れお金を落としてくれるのでは、という考えでインバウンドを取ってきましたが、自分たちのことを考えても、遠いところに行けば行くほどお金をたくさん落としますよね。それに、アジア諸国は国交で何かがあったとき、ガクンと落ちる可能性がある。いきなり観光客がいなくなる、ということを避けるためにも、欧米諸国からの観光客にも目を向けるべきです」

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独りよがりの見せ方ではなく、世界目線でのPRを


では、観光客を誘致するためコツとは? 高橋は、地域の「見せ方」を考えることが重要であると述べる。

例えば、その土地の文化や観光名物となるものが、海外からどう映るかを意識し、そしてどんな情報をどうやって伝えていくべきかを考えるのは、重視すべきポイントだ。

「自分たちの文化や風習を分析し、どんな施策を打っていけば刺さるかを戦略として意識すること。何よりも、呼び込む側の価値観を押し付けないことが大事です。

写真1枚を見せるにしても意味合いは変わります。暑い国・寒い国にとって、それぞれ価値のある風景がある。例えばきれいな海と砂浜の写真を見せると、ビーチのない韓国の人には刺さりますが、欧米の人からすれば『ハワイと何が違うのか』という反応。ターゲットを間違えて宣伝すると、全く効果がないわけです。

また、数多ある日本の地域の中で、観光客らはなぜ岩国を選ぶのか。それを考えることも大事。広島にはないけれど岩国にあるもの、福岡にないけど岩国にあるもの、というポイントがあるはずなんです。ここにしかないものを選んで発信をするべき。

岩国にしかいないとされる白蛇も面白いですよね。ヨーロッパでヘビはそこまで悪いイメージがありません。むしろ治癒の象徴として、薬局のマークなどに使われている。その白い蛇のイメージが全く頭の中にない観光客に対して、イメージをこちらから提供するのは良さそうです。その蛇の背景や歴史、風習を戦略に乗せれば、珍しさ以上に価値のある観光資源になると思います」

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持続可能な観光拠点を作る


同時に、そういった情報を日頃から各国に向けて発信してくれる存在も確保するべきだという。

「できれば、岩国市に住む欧米人などに協力を仰ぐべき。各国の母国語で、住んでいる地域の情報を発信してもらうんです。地域にそういう存在を根付かせた方が、観光コンサルタントよりもずっと長く岩国にいてもらえますしね(笑)」

そして、人の流れを作るためには、新しい価値観を生み出すことも一つの策であると述べる。

「ナイトタイムエコノミー施策が効果的で、実際に日本国内にちょっとずつ事例が生まれています。夜遅い時間と朝早い時間に大きなイベントを強制的に生み出すんです。その時間帯に行事をすると、必然的に前泊になる。『ここに泊まらないとできない』ような立て付けが、インバウンドの施策となります」

視点の転換が新たな価値を生む


最後に、インバウンド施策と近い動きをするものとして、ユネスコの世界遺産登録の例が挙げられた。

「昨年、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産が世界遺産に登録されましたが、教会の建物そのものに世界遺産の価値は無いんです。それよりも、なぜここに教会が建ったのかと。目に見えない歴史に、隠れた資産の価値があった。景観よりも裏側を説明することで、世界遺産として通ったという背景があります。

そういった視点の転換が、新たな街の発見を生み出すこともあります。地域の住民たちの強い意志と、土地に観光客を途切れさせないよう環境を維持する、という点でも、世界遺産とインバウンド施策は同じです」

地域住民が無理を強いられることことなく、長期的な目線で街をアピールしていくことが、持続可能なインバウンド施策の成功の鍵なのだ。

                           テキスト:高木望

次回の『世界目線で考える。』インバウンドセミナーは、宮城県気仙沼で開催。

『世界目線で考える。持続可能な観光促進のための説明戦略』
【日時】 2019年12月4日(水)18時30分~20時00分
【場所】 気仙沼市役所 ワン・テン庁舎2階 大ホール(〒988-0084 宮城県気仙沼市八日町1-1-10)      
【参加料】 無料
【定員】 100名 ※定員に達し次第締め切り
【講師】 ORIGINAL Inc. 執行役員シニアコンサルタント 高橋政司
【申込】 参加者の氏名、事業者名、連絡先(電話番号)、参加人数を明記の上、下記へお申し込みください。※申し込み期限は12月2日(月)まで

 FAX:0226-25-7119
 MAIL:info@k-ships.com
        
【問合せ】(一社)気仙沼地域戦略(担当:織笠)
      TEL:0226-25-7115
【主催】気仙沼観光推進機構  
【後援】日本MGMリゾート

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