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書評#9)NETFLIXの最強人事戦略-自由と責任の文化を築く-

こんにちは。本日ご紹介させていただく、本はこちら!!遅ればせながら、読ませていただきました。

著者パティ・マッコードさんが元NETFLIX最高人事責任者で、NETFLIX CULTURE DECKの共同執筆者であるため、いわゆるありがちな、啓発系の本とは違い、NETFLIX内の実例を挙げながら書かれており、非常に分かりやすく、かつ、納得感がある内容でした。

以下の内容は、私の主観に基づくものですので、本の内容と若干違う点などあれば、ご容赦ください。

■情報の透明性

社内のどの部署の問題であっても従業員がそれを自分のものとして解決するには、経営幹部と同じ視点が欠かせない。(中略)事業の仕組みを全従業員に説明するのを怠っているのだ。
あなたから情報を得られなければ、従業員は他の誰かから誤った情報を与えられる可能性が高い。(中略)彼らはその情報をよそから、そう、多分彼らと同じように情報に疎い同僚や、気の滅入る噂や下世話な陰謀説の渦巻くネットから得るだろう。

本書で、一貫して伝えられているのが、情報の透明性を担保するということ。多くの企業、特に日系の大手企業では、必要な情報を必要な時に上司から部下に伝えることが、仕事の進め方として正しいとされることも多いと思う。

一方で、会社の収益や人事制度などは、説明がおろそかになっているばかりに、従業員に対して誤って伝わっていたり、部署ごとの立場や派閥に固執したりしてしまい、結局、会社のためには何をすればいいのか、という目線が欠けていることにつながっているだろう「。

これまで、従業員を”管理する”ためには、ある程度情報を統制することが大事だったのかもしれませんが、従業員を”大人”として扱い、彼らの可能性を信じる(性善説に立つ?)ということが、今の時代求められていると思いました。

少し話がそれるが、”Z世代”のような人たちにとって、情報の透明性は非常に重要なポイントだと感じる。デジタルネイティブで、いつでもスマホを片手に過ごしてきた彼らにとって、欲しい情報がすぐに手に入らない状態は、息ができないような状態にも近いんだろうなと。

■徹底的に正直になる

経営上層部は、事業に関する問題を従業員に知らせると不安が高まると考えがちだが、知らせないほうがずっと不安を煽ることになる。
透明性を徹底すれば、誰もが自分の支持した立場に責任を落ち、事後的に非難されることも少なくなる。

前述の”情報の透明性”にも通ずるが、経営が正直に、現状の会社の課題を包み隠さずオープンにすること。そうすることで従業員も、じゃあ会社のために何をするべきなのか、ということを考えようとする。

加えて、特に大企業になると、例えば会社がよくない方向に進んでしまった際に、”会社のせい=他責”にしがちになる。透明性はそれを抑止する、という点でも非常に重要で、会社にとっては、「お前もしっていただろ?!そのうえで何かしたのか?!」と言うことができる。従業員にとっても、今会社でどのようなことが起ころうとしていて、それに対して自分は何をすべきか、常に考えるように強いることになる、結果的に会社の競争力が向上するということにつながる、というロジック。

■従業員と会社の双方にメリットをもたらす

社内で得られない職務や、会社にとって重要でない職務を強く望む従業員には、社外で機会を見つけるように促した。また従業員に、他社の面接を定期的に受けて、ほかにどんな機会があるかを見定めた方がいいと勧めた。そうすることで私たちも、彼らにどれだけ需要があるのか、どれくらいの報酬を支払うべきかを、より正確に知ることができた。
ネットフリックスでは、 自分の成長には自分で責任をもち、輝かしい同僚や上司から学ぶ多くの機会を活かして、社内で昇進するなり、社外のすばらしい機会をものにするなり、自分の道を切り拓いてほしいと促した

今でこそ、転職に対するハードルは低くなっているように思うが、歴史的(戦後に限る)に雇用の流動性がない日本においては、難しいなあと感じてしまった。言葉を選ばずに言うと、これまでは、3種の神器(終身雇用、年功序列、企業内組合)ありきでキャリアを積んできた従業員にとっては、上記のような考え方は、理解できないというか対応できない部分も大きいのだと思う。そのような状態を作っているのも会社の責任に違いない。

今風に、若手目線で言うと、”雇用流動化””ジョブ型雇用”を加速していきたい気持ちがある一方で、そうでない雇用形態の中で働いてきたミドル以上が大半の中で、どのように双方の折り合いをつけていくべきなのか、人事として、今、非常に大きな課題であると感じる。

従業員定着率はチーム作りや文化の良し悪しを測る指標に適さないと、私は考える。単に会社をつなぎとめている従業員の数だけでなく、必要なスキルと経験を備えた人材の数を示す指標が必要だ。
また業績不振者の能力を伸ばすことに時間をかけすぎると、彼らが─ ─他社で─ ─伸びる可能性をつぶしてしまいかねない

そして、今も日本に残るのは、会社に対する”忠誠心”を在籍年数で評価する考え方。特に日本の退職金制度は、「給与の後払い的性格」よりも「功労加算的性格」が強い。会社も、長期で雇用し続けることが、従業員にとって幸せ、という考えが前提(要は終身雇用)になっている。たとえ、従業員個人にとって、同じ会社にいることがプラスではないと思っても、あと数年在籍すれば、退職金が跳ね上がるから我慢しよう、なんて考えている人なんて山ほどいるんだろうなあと思ってしまう。可能性なんて、外にいくらでも広がっているのに。

■自由と責任

自由と責任の文化をつくることによって確実に得られるものを一つ挙げるなら、前に踏み出そうとする人たちに勇気をもらえることだ。自分には力があり、自分のキャリアを自分でコントロールしていると感じれば、自身が湧いてくる。彼らが思い切って発言し、リスクをとり、失敗から立ち直り、大きな責任を引き受ける自信にあふれる様子に、あなたも驚かされるはずだ。組織の全員が自分の力を自覚したら、いったいどうなるか想像してほしい。誰もがより良い判断をし、すばやく行動できるだろう。思いもしなかったアイデアが飛び出すだろう。また全員がお互いにより正直でオープンになったらどんなに良い組織になるだろう。従業員が力を持っていることを忘れてはいけない。あなたの仕事は、彼らに力を与えることではない。彼らの力を認め、時代遅れの方針、手続き、制度を廃止して、力を開放することだ。それさえ行えば、彼らはパワフルになる

所感にまとめて書きます。

■所感

本書の冒頭に、以下のような部分がある。

今日の人材管理の大前提に異議を唱えたい。すなわち、従業員の忠誠心を高め、会社につなぎ止め、キャリアをのばし、やる気と満足度を上げるための制度を導入することが、人材の管理の仕事だとする考えである。そのすべてが間違っている。そんなものは経営陣の仕事でも何でもない。

正直、(特に大企業で)人事の仕事をしていると、良くも悪くも”従業員のため””会社を守るため”になっていることが多いと反省しました。人事も、自らの仕事が会社の利益にどのように影響しているのか、させたいのか、考えないといけないと感じました。

最後にある尊敬する上司から、昔以下のような言葉をいただいたのを思い出しましたので紹介させていただきます。

「ヒト、モノ、カネは並列ではなく、ヒト→モノ、カネヒトはモノ、も、カネも生み出す起点になるし、外的影響を受けやすい、難しい対象であるからこそ、人事の仕事はやりがいがある

以上です。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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