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Y Combinator発スタートアップ③_「Healthcare」後編

Y Combinator Winter 2024 Batchで採択され、第38回Demo Dayで発表を行ったスタートアップを紹介していく
トップ画像はY Combinatorのウェブサイトより
※本記事は、添付URLの記事および各社のウェブサイトを参考に作成しました
本記事の概要

  • 第3弾は、Y CombinatorのWebサイトで「Healthcare」で分類されている、メンタルヘルス×モニタリング1社、企業の医療費削減1社、在宅介護支援1社、カップル向けAI恋愛アプリ1社について、スタートアップを紹介する
    *但し、これらのスタートアップは設立されたばかりで、公開されている情報が限られていますのでご注意ください

所感(個人の見解となります)

  • 今回はビジネスの目の付け所が個人的に興味深かった4社をピックアップした。

  • ①メンタルヘルス×モニタリング:現在、世界中で2万以上のメンタルヘルスアプリが利用されており、メンタルヘルスとデジタルソリューションの組み合わせが非常に注目されている。メンタルヘルスはソリューションや治療に意識が向きがちであるが、メンタルヘルス患者の日々の状態を記録するデータは依然として不足していると感じる。AI技術の発展により、従来とは異なるアプローチで患者の日常の健康状態のデータを収集・分析することができる可能性がある。Attunementにより取得・分析されたデータが治療方針に活用されることで、治療の効率化だけでなくメンタルヘルスの新たな治療アプローチが見えてくる可能性もあると期待している

  • ②企業の医療費削減・在宅介護支援:米国の法律や制度を利用したサービス。AI技術の発展により、各種制度を活用した特化型のサポートサービスを提供するスタートアップも良く見られる。政策に依存するところはあるため、医療費削減や介護分野は将来変わらない課題であると考える。特に今回紹介した在宅介護支援事業は、金銭的なサポートを受けられることで人材不足問題や介護費が高い問題を解決できる一つのソリューションとして期待している

  • ③カップル向けAI恋愛アプリ:カップルの50%がカップルセラピーを受けているといわれている米国ならではのツール。LLMが一般的に活用できるようになったことで、Maiaのような解決策を提示してくれるようなAIソリューションの回答の質は、急速に進化していると感じる。セラピーを「AI」で代替できるのか、結局「対人」を求める人が多いのか、時代の流れやデジタルの浸透度合いでも変動すると思うが、人々が求めるソリューションを引き続き注視していきたい


Y Combinator Winter 2024 Batch採択スタートアップ

Attunement:メンタルヘルス×モニタリング

スタートアップ概要
共同創業者

  • Angelia Muller:King's College LondonのApplied NeuroscienceでMSを取得。StripeとNVIDIAでパートナーシップ・リーダーを務め、シード・ベンチャー・パートナーやスタートアップとともに、決済処理ソリューション、合成データ生成、データ・ラベリング、アノテーション・ソリューションの採用を加速させた経験を持つ。

  • Briar Smith:University of WaterlooのRobotics/AI EngineeringでBSを取得。個人向けAIウェアラブル企業の創業チームの一員として、1ヶ月で0から$200K ARRまで成長させた経験やLyftでAutonomous Vehicle Software Engineerとして従事していた経験を持つ

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:Behavioral Health*1に関する患者モニタリングと治療推奨プラットフォームの提供
*1:Behavioral Healthとは一般的に、メンタルヘルスや薬物使用障害、生活上のストレス等に関連した身体症状のこと

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • 評価ツール(PHQ-9などのうつ病評価)が定期的に使用されなかったり、患者がどのように改善しているかを「感覚的に」判断していたりと現在の治療は、患者の実際の状態を反映できていない可能性がある

  • Attunementのプラットフォームを使用することで、チャットベースのメンタルヘルス検出、生理学的バイオマーカー、患者の自己報告を組み合わせて、受動的に患者の行動的健康状態を毎週追跡が可能

  • 得られるデータを基に、メンタルヘルスの医療従事者がより精確で個別化された治療計画を立て、必要に応じて迅速に更新することをサポート

TrueClaim:企業の医療費削減

スタートアップ概要
共同創業者

  • Barbora Howell:Stanford UniversityでMBAを取得。Hinge HealthにてHR、福利厚生、顧客請求など複数の機能を構築の経験やPine Park Healthで臨床運営の担当経験を持つ

  • Bobby Bayer:Santa Clara UniversityのComputer Science & EngineeringでBSを取得。pMDでSoftware Engineering ManagerとしてRCMソフトウェアおよびサービス部門を立ち上げた経験を持つ

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:Self-Insurance*2を採用している企業向けに、医療費削減を自動化するソフトウェアを提供
*2:Self-Insuranceとは保険に加入して保険会社から払い戻しを受けるのではなく、自己資金を一定額積み立てることで、将来の損失の可能性を軽減する戦略のこと

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • 米国では、2021年に成立したCAA法により保険会社や自己保険の雇用主は処方薬や医療サービスの費用情報を収集し公開することが義務付けられた

  • TrueClaimはこの法律の施行を機に、企業が医療支出をより効果的に理解し管理できるよう支援する技術を開発。具体的には医療請求書を継続的にレビューし、課金エラーや医薬品、ケアの節約機会を特定し、医療費の削減を図る

  • これまでのレビューでは、$20.2Mの医療請求に対して平均10.96%の節約機会を特定している

Oma Care:在宅介護支援

スタートアップ概要
共同創業者

  • Arianna Galbraith:Columbia UniversityのHealth/Health Care Administration/ManagementでMSを取得。介護経験あり

  • James Galbraith:New York UniversityのComputer ScienceでBSを取得

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:家族介護者向けの政府プログラムを介した経済的サポート

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • 家族が自宅で高齢者や障害を持つ方の介護を行う際に、家族介護者が政府のプログラムによる報酬を受け取るためのサポートを実施

  • Oma CareのAIエージェントは、介護者が政府の介護支援プログラムへ申し込む際の複雑なプロセスを簡素化する。このAI技術は、適格性の自動確認、必要書類を自動的に記入、政府機関に代わってこれらの書類を提出等を実施する

  • 家族介護者に必要な医療知識と介護技術を提供する無料トレーニングプログラムも提供

  • トレーニングを通じて家族介護者はメディケイド*3やメディケア*4からの自動的な返済を通じて、最大で時給$28(年間$60,000)の報酬を得ることが可能

*3:メディケイドは、米国の低所得者向けの公的医療保険プログラム。各州が独自に運営を行い、連邦政府からの資金援助を受けている
*4:メディケアは、主に65歳以上の高齢者を対象とした米国の公的医療保険プログラム。高齢者が経済的な理由で必要な医療を受けられない状況を防ぐことを目的としている

Maia:カップル向けAI恋愛アプリ

スタートアップ概要
共同創業者

  • Claire Wiley:The Wharton SchoolでMBAを取得。UBSでInvestment Banking Analyst、GI PartnersでPrivate Equity Associateとして従事していた経験を持つ

  • Ralph Ma:Stanford UniversityのComputer ScienceでBSを取得。GoogleでSoftware Engineerの経験やinsitroで低分子医薬のバーチャルスクリーニングの研究経験を持つ

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:カップルが毎日より深くつながるための支援を行うAIベースのアプリケーションを提供

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • Maiaは、AIコーチング、専門家のガイダンス、そしてカジュアルなチャットの対話を組み合わせて、カップル間の関係性の再構築をサポート

  • サポート内容やアドバイス内容がパーソナライズされており、友人のような形で相談をすることが可能

Maiaのアプリ使用例:https://www.ycombinator.com/companies/maia

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