Y Combinator発スタートアップ②_「Healthcare」前編
Y Combinator Winter 2024 Batchで採択され、第38回Demo Dayで発表を行ったスタートアップを紹介していく
トップ画像はY Combinatorのウェブサイトより
※本記事は、添付URLの記事および各社のウェブサイトを参考に作成しました
本記事の概要
第2弾は、Y CombinatorのWebサイトで「Healthcare」で分類されている、病院向けAIエージェント2社、臨床記録×AI2社、個別化医療×診断1社、神経疾患の診断技術を開発する1社について、スタートアップを紹介する
*但し、これらのスタートアップは設立されたばかりで、公開されている情報が限られていますのでご注意ください
所感(個人の見解となります)
生成AIの活用が身近になり、医療の専門性が高いAIエージェントや高度な文章の記録作成向けのツールを開発するスタートアップが増加していると感じる。文書作成の精度や顧客対応の効率が近年大幅に向上し、これからもデータの蓄積によりさらに精度が向上することが期待される。ChatGPTのような大衆向けのツールから専門性に特化したツールはどの業界でも開発されている中で、ツール使用で障壁となっているものは何か?またどこに新たなビジネスチャンスがありそうか?、今後注視していきたい。少なくとも専門ツールは既存プラットフォームとの統合は顧客への導入に向けて必要不可欠であると考える
AIだけでなくウェアラブルによるデータ収集の精度も上がっていることで本来大がかりな機器での診断が必要であった「脳」疾患の診断技術も様々開発されている。弊社のポートフォリオ企業である「Zeit Medical」もその一つである。脳卒中の早期検知・治療により、後遺症を最小限に抑えることが期待できる。データだけでなくAIを活用することで、自覚症状がない危険な病気のサインを検知できる技術は、平均寿命が延びている現社会では、医療費の削減等にも貢献できると考えている
Y Combinator Winter 2024 Batch採択スタートアップ
Somn:病院向けAIエージェント
スタートアップ概要
共同創業者
Shawn Shivdat:Harvard UniversityのComputational NeuroscienceでBSを取得。Massachusetts General Hospitalで患者のアウトカム予測ソフトウェアの開発に携わった経験を持つ
Deniz Sert:Massachusetts Institute of TechnologyでComputer ScienceのBSを取得
所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:医療クリニック向けに人間のように振る舞うAI受付の開発
事業・サービス・テクノロジー詳細
患者への予約受付、予約確認のリマインド、診察後のフォローアップなど、医療クリニックの受付業務を自動化するAI受付を提供
ファックス機器、電子健康記録(EHR)、電話システム等との既存のシステムと統合が可能なため、クリニックが既存のインフラを変更することなくAIサービスを導入
AIエージェントのデモ動画は下記を参照
Anaphero:病院向けAIエージェント
スタートアップ概要
共同創業者
Ryan Gallagher:Stanford UniversityでMDを取得。メンタルヘスケア(主にオピオイドによる薬物治療)のスタートアップ、Opheliaの共同設立者の一人
Jeffrey Lamothe:University of FloridaのEngineeringでBSを取得。AmazonやSalesforceでソフトウェアのエンジニアとしての経験を持つ
所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:患者対応業務を自動化するツールの開発
事業・サービス・テクノロジー詳細
テキスト、音声、ビデオを通じて患者と対話するカスタムAIエージェントを開発
AIエージェントは、質問に答えたり、情報を収集したり、電子健康記録(EHR)と連携が可能
Somnとの違い
Anapheroは臨床スタッフ(主に医師)の効率化に焦点を当てており、Somnは医療クリニックのフロントエンド、受付や患者コミュニケーションの効率化に焦点を当てている
Andy AI:臨床記録×AI
スタートアップ概要
共同創業者
Tiantian Zha:Princeton UniversityでComputer ScienceのBSを取得。Googleにて、Debugと呼ばれるAI/ロボティクス・プロジェクトをリードした経験を持つ
Max Akhterov:UC IrvineでPhysicsのPhDを取得。AppleでスタッフエンジニアとしてApple Watchの健康感知アルゴリズムを開発した経験を持つ
所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:訪問看護師向けの臨床記録作成支援ツールの開発
事業・サービス・テクノロジー詳細
訪問を行う看護師のために臨床記録を自動で完成させるソフトウェアを開発
看護師は訪問看護の際にAndy AIのアプリを使用することで臨床記録が作成され、記録されたカルテはそのまま電子健康記録(EHR)に統合される
臨床文書作成負担を大幅に削減し、通常90分かかる記録作業を15分のレビューに短縮することが可能
Hona:臨床記録×AI
スタートアップ概要
共同創業者
Adam Steinle:Georgia Institute of TechnologyでComputer ScienceのMSを取得。MetaでProduct Managerの経験を持つ
Danielle Yoesep:Northwestern UniversityでBiotechnologyのMSを取得
Shuying Zhang:Stanford UniversityでBioengineering and Biomedical EngineeringのMSを取得。GoogleおよびAmazonでソフトウェアエンジニアの経験を持つ
所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:AIを活用した患者の医療履歴を収集・要約するプラットフォームの開発
事業・サービス・テクノロジー詳細
電子健康記録(Electronic Health Records、EHR)と統合して医療記録から重要な情報を抽出し、専門的な臨床的な文章をAIを活用することで作成。医療従事者は過去に失われがちだったデータを活用することができるようになる
Honaのプラットフォームでは患者の健康状態を示すさまざまな指標やスコアも算出してくれるため、医療従事者は患者一人一人に最適な治療計画を立てやすくなる
Honaは、医療従事者が患者データに簡単にアクセスできるようにするAPIプラットフォームを提供するParticle Healthと提携。この提携により、HonaのAIソリューションが外部のEHRからもデータを取り込めるようになった
Haplotype Labs:個別化医療×診断
スタートアップ概要
創業者
Mike Polcari:Cornell UniversityでComputer ScienceのBS、Stanford UniversityでBiomedical InformaticsのMSを取得。23andMeにSeries A後に参画し、15年以上にわたってエンジニアおよびVPとして企業の発展に貢献。
所在地:Orinda, CA
事業・サービス内容:遺伝子検査を通じた個別化診断サービスの提供
事業・サービス・テクノロジー詳細
「HaploHub」と呼ばれるSaaSプラットフォームを構築
HaploHubは、メチル化アッセイなどを使用して独自に開発した遺伝子モデルや4,000以上の公開されている遺伝的モデルに基づいて患者の疾病リスクを予測
必要なデータの一部のみをシークエンシングすることで全ゲノムシークエンシングよりもコストを50-90%削減することが可能
遺伝子検査ラボ、臨床試験担当者、医療提供者などが遺伝学を利用して疾病のリスクを予測・検出・防止するためのAIモデルを展開することをサポート
Piramidal:神経疾患診断
スタートアップ概要
共同創業者
Dimitris Fotis Sakellariou:King's College LondonのApplied Machine Learning - Neural EngineeringでPhDを取得。IQVIAで基礎AIコードの実装をリードし、ファーマおよびヘルスケアクライアント向けにスケールアップの経験を持つ。また、12年間EEG研究の経験あり
Kris Pahuja:GoogleおよびSpotifyでAIとヘルスケア製品のプロダクトリードを務めた経験を持つ。また、Gyftgo(出荷管理ツールを提供するスタートアップ)を共同設立し、年間収益$1Mに成長させた
所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:AIを活用した脳波データ(Electroencephalogram、EEG)解析プラットフォーム
事業・サービス・テクノロジー詳細
大規模で多様なEEGに基づいて訓練された「Brain Foundation Model」を構築
最初の対象疾患は、てんかんで実施。リアルタイムで患者の脳波に関する診断的洞察を得ることで、医師の診断をサポート
睡眠障害や認知障害など、他の疾患の診断をサポートするためにモデルを微調整する予定
このモデルは、神経学的状態の診断、医薬品の標的やバイオマーカーの発見、脳波異常の遠隔モニタリング、認知や頭部外傷など、脳の健康状態のリアルタイム追跡、等への活用が期待される
Hike Ventures ポートフォリオ企業
Zeit Medical:脳卒中の早期検知
創業者:Orestis Vardoulis
所在地:South San Francisco, CA
創業年:2019年
累計調達金額:$2.1M
脳卒中について
米国では、約3.1%、780万人の成人が脳卒中に罹患している
夜間に脳卒中を起こした人は、昼間に脳卒中を起こした人に比べて、神経障害が悪化することが多い
米国では年間約80万件の脳卒中が発生しており、このうち18万5,000件は過去に脳卒中を経験したことがある人に起こる
事業・サービス・テクノロジー詳細
脳波(Electroencephalogram、EEG)を使って、寝ている間でも脳波を継続して取得できる高感度センサー付きヘアバンドとAIアルゴリズムを開発
現在、米国で脳卒中リスクのある人を対象に脳卒中イベントの検出に使用できるかどうかを評価するための臨床試験を実施中
Zeit Medical臨床試験情報
EEGによる脳卒中検知の利点
EEGはリアルタイムの生理学的データを取得できるため、予防と管理の面で医師の診断や治療をサポート可能
脳卒中の約20~30%は夜間に発症しており、脳卒中の危険性がある場合、夜間の脳の健康状態を効果的に追跡できる
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