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スタートアップ紹介⑤「Too Good To Go」

本記事の概要

  • Too Good To Goは、食品ロス削減を目的とした消費者向けのモバイルアプリを提供する企業

  • レストランや食料品店で余剰食品を低価格で購入できるサービスをアプリを通して展開しており、消費者はアプリを通じて参加店舗の食品を予約・購入することが可能

  • 食品の廃棄を減らし、持続可能な消費を促進することを目指している

  • 欧米を中心に18か国にサービスを展開中

*こちらの記事は貼付のURLの記事や各社のウェブサイトを参考に作成しております。


Too Good To Goの企業概要

設立年:2015年
所在地: Copenhagen, Denmark
ファウンダー:Lucie Basch, Jamie Crummie 他
事業概要:余剰食品を安価で購入できる食品ロス削減アプリサービスの開発および提供
累計調達額:$45.7M

Too Good To Goのサービス

  • レストラン、ベーカリー、スーパーマーケットなどの店舗で売れ残った商品を集めて消費者に割引価格で提供するプラットフォームを提供している

店舗側の利用手順

  • 店舗側はToo Good To Goの公式ウェブサイト上で、店舗を登録(店舗の基本情報(所在地、営業時間など)や連絡先を提供)

  • 店舗側は売れ残った商品を「Surprise Bag」(福袋のように、詰め合わせのイメージ)として提供する

    • Surprise Bagは、1つあたり$4~$10程度の価格で設定される

  • また、店舗側はToo Good To Goに年会費として$89とSurprise Bagの1つあたりの売上につき$1.79を支払う

ユーザー側の利用手順

  • アプリのダウンロードとアカウント登録

    • スマートフォンにToo Good To Goのアプリをダウンロードし、アカウントを作成

  • 位置情報の設定

    • 位置情報のアクセスを許可することで、近くの参加店舗を表示することが可能

  • 参加店舗の検索

    • アプリのメイン画面で、近くのToo Good To Goに参加している飲食店やスーパーマーケットを検索。店舗の一覧には、提供されるSurprise Bagの数量や価格、受け取り可能な時間が表示される

アプリの使用画面:Map上で「Surprise Bag」を提供している店舗を検索、選択が可能
  • Surprise Bagの選択と予約

    • 気になる店舗を見つけたら、その店舗のSurprise Bagを選択

      • Surprise Bagの中身は実際に受け取るまでは何が入っているかわからない。但し、通常価格よりも格安で購入することが可能

    • Surprise Bagを選んだら、予約を確定し、アプリ内で支払い(クレジットカードやApple pay等)を行う

    • 受け取りの時間が合わせて表示されているので、時間内に指定された店舗に行く

アプリの使用画面:気に入った店舗を選択後、「Surprise Bag」の値段と受け取り日時を確認。Reserveから決済に移行する
  • 店舗での受け取り

    • 予約した店舗に到着したら、アプリを開き、予約確認画面を店舗スタッフに見せる。この画面には予約番号や詳細が表示されており、これを見せることで商品を受け取ることができる

合計で$20くらいのベーカリー店の商品を$3.99で購入。商品は営業時間際に売れ残った商品であるため、品質に問題もなくとても美味しかった。
  • 貢献した食品ロス削減量の確認

    • アプリのユーザープロファイルや購入履歴のセクションで、これまでに購入したSurprise Bagを通じて、どれだけの食品ロスを防げたかが表示される

    • ユーザーは、「削減した二酸化炭素の排出量」を定量的に確認することができる

アプリの使用画面:「Surprise Bag」を購入当たりの削減した二酸化炭素の排出量を確認することができる(今までの購入分すべてを合わせたものも確認可能)

Too Good To Goが取り組む課題

食品ロス問題

  • 世界中で生産される食品のうち、最大40%が廃棄されている

    • 多くは動物の飼料として利用されたり、リサイクルされたりするが、最悪の場合、埋め立て処理または焼却処理される

  • 食品廃棄物は、全世界の温室効果ガス排出量の10%を占めている(世界の航空業界の排出量の約4倍)

  • 食品廃棄物には経済的なコストも伴い、その年間コストはヨーロッパで€143Bと推定されている

Too Good To Goの設立

  • 食品廃棄物に経済的なコストがあるならば、それを防ぐことには経済的な利益があると考えたファウンダーたちは、コペンハーゲンで売れ残った食品を低価格で提供するプラットフォームを開発

    • 創設者の当初は、ビュッフェの終わりに廃棄される食べ物に焦点を当てていた

  • デンマークからこのアイデアが急速に広まり、フランス、ノルウェー、イギリス、ポーランド、オーストリア、スイス、ポルトガル、ベルギー、オランダなど多くのヨーロッパ諸国に急速に拡大し、現在では北米を含む18か国にサービスが展開されている

    • 2016年から2023年までに約3億食が廃棄されずにSurprise Bagとして消費者に提供されている

参考資料

https://cdn.sanity.io/files/nqimd3nr/production/fa4075717ba03b510e4f0b29aca8f83dd19fda76.pdf?cookie_consent=false&locale=en-us

https://zerowasteeurope.eu/wp-content/uploads/2020/01/zero_waste_europe_CS7_CP_TooGoodToGo_en.pdf

https://www.worldwildlife.org/initiatives/food-waste

日本における類似サービス

CoCooking

設立年:2015年
所在地:東京
ファウンダー:Kazuma Kawagoe, Taichi Isaku
事業概要:食品ロス削減を目指し、飲食店と消費者を繋ぐサービスを提供
累計調達額:$1.7M

TABETE-フードシェアリングサービス

  • TABETEサービス

    • TABETEは、食品ロス削減を目的としたプラットフォーム

    • 飲食店が売れ残りそうな食事を割引価格で提供し、消費者がこれを購入できるサービスを提供

    • 飲食店は簡単にTABETEに登録し、売れ残り商品をアップロードして販売することが可能

      • 店舗側の手数料_宇都宮市の例:TABETEに登録に初期費用10,000円と販売手数料が販売価格の約30%かかる

  • Too Good To Goと同様に、TABETEに参加している飲食店等を検索、選択し、対象となる割引商品を購入することが可能

    • 参加店舗は東京がメインで、地方都市にも参加店舗はあるものの東京に比べると数は少ない

TABETEアプリ使用画面:左は店舗検索Map、右は店舗出品商品。Too Good To Go同様に店舗に取りに行く前に事前決済が必要
  • 購入金額に応じて、ユーザーに還元される「ポイントシステム」を導入しており、購入時に1pt=1円で使用可能(ポイントは最終購入日から183日後まで有効)

TABETEアプリ使用画面:購入(レスキュー)時にポイントが付与される

自治体との取り組み

  • 市町村と提携し、食品ロス削減の取り組みを推進。他にも金沢市、浜松市、横浜市、さいたま市、藤沢市、大阪市、大阪府、神戸市、杉並区、福岡市、福岡県、大田区、荒川区、足立区、新宿区、渋谷区、豊島区、茨城県、武蔵野市、堺市、目黒区などと提携

宇都宮市_「宇都宮市における食品ロス削減に向けた連携協定」を締結(2024年5月30日)

名古屋市と「食品ロス削減月間キャンペーン」の期間中、食品ロス削減に向けた連携を実施

Too Good To GoとTABETEの比較

  • ユーザー数

    • Too Good To Go:9,500万人(欧米18ヶ国)

    • TABETE:約87万人(日本のみ)

  • 登録店舗数

    • Too Good To Go:160,000店舗

    • TABETE:2,700店舗

所感

  • Too Good To Goを活用してみた際に感じた良い点

    • 自分で選ぶことはできないものの、品質には問題がない商品をかなりお買い得に獲得できる(ベーカリー店の$3.99のSurprise Bagを購入した際は、約$20分の価値がある商品をもらうことができた)

      • 例えば、日本人留学生にとってもとても良いサービスの可能性がある(次の日の朝ご飯を低価格で手に入れる、等)

    • 受け取るまで中身が何が入っているかわからないSurpise Bagという要素も面白い

    • 購入するだけで、CO2削減の課題への貢献が数値が見れることで食品ロス問題に対する意識が上がる

  • Too Good To Goを活用してみた際に感じた良い点(店舗側目線)

    • Surprise Bagを購入した消費者向けに、サンプル品を提供することができるため、良い宣伝効果になる

    • 個々の環境問題に対する意識が高まっていく中で、その消費者向けに食品ロス問題に貢献する店舗としてアピールすることができる

  • TABETEも同様なサービスを提供しており、また、自治体とも連携することで加盟する店舗を積極的に増やしている。Uber Eats等も似たような構造であると思うが、対応している店舗が増えないとユーザー数も増えず、アプリの人気も浸透しない。赤字覚悟で広告を多く打つこともできるが、回収までに時間がかかってしまう。食品ロス問題への取り組みや地域の飲食店の活性化は自治体との連携に向けて相性が良いと考えられる。また、登録した店舗に補助金等が出るシステム等もアプリ浸透に一役買っていると思う

  • Too Good To GoやTABETEは時代のニーズに上手く当てはまったサービスであると思う。中古品販売業やスーパーの割引商品販売等の似たようなサービスはあった中で、飲食店やベーカリーの売れ残り商品を一括でまとめて消費者に販売するというプラットフォームは2010年代の前半では出てこなかった。様々な要因があると思うが、ネットの普及(特にスマートフォンのアプリ利用)と環境問題への意識の高まり(SDGsの概念が2015年に国連サミットで採択)が、このサービスの普及に一役買っているかもしれない。Too Good To GoやHims & Hers Healthのように急速に成長している消費者向けのサービスについて、時代背景やニーズの変化を考察してみると面白いかもしれない

Hims & Hers Healthの記事は下記


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