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【中年の危機を生き延びる】(10)現状を「ゲームのスタート地点」だと思い込む

みなさん、ゲームは好きですか?私は大好きです。

「人生をゲームだと思って楽しめ」という言葉を聞いたことがありますが、確かに人生におけるさまざまな困難を、ゲーム感覚で楽しむことができれば最高です。

人生をゲーム化するために必要なのは、まず「目的」を設定することでしょう。RPG(ロールプレイングゲーム)でいう「大魔王を倒して世界に平和を取り戻す」みたいなやつです。それを自分の人生の目的に置き換えて、実現するプロセスを楽しむ、みたいな感じでしょうか。

この「目的の設定」により、人生のさまざまな困難が「クリアすべきイベント」のように感じられる、というわけです。

これはとてもいい方法だと思うのですが、その「目的」があまりに壮大すぎると、いわゆる「無理ゲー」になりかねません。「こんなん絶対無理やん!」と自暴自棄になってしまっては本末転倒です。絶妙にクリア可能な「いい塩梅の目的」に設定すればいいのでしょうが、それがけっこうむずかしかったりもします。

そこで私が考えたのは、「目的」よりもむしろ「初期設定」のほうに注目する、というやり方です。

ゲームにもいろいろありますが、たとえば「ドラゴンクエスト」のようなRPGだと、主人公はだいたい最初めちゃ弱いです。そこから戦闘を繰り返してレベルを上げ、お金を貯めて装備を整え、出会いと別れを繰り返し、最後は大魔王を倒す!みたいなパターンが多いです。

これがいきなり最初から「レベル99!装備最強!あとは魔王を倒すだけ!」から始まったら、メーカーにクレームが入るでしょう。「キューピー3分クッキング」ならともかく、これでは全然面白くありません。

「三国志」のような戦略シミュレーションゲームでも、最初は一国の主にすぎない主人公が、国を豊かにしながら、配下の武将を増やし、少しずつ領土を広げていきます。それが最初から大帝国で、弱小国家をたたきつぶすだけのゲームだったら、何のやりがいもありません。

だから人によっては、わざわざ弱い武将や、不利な状況を選んで始めたりもします。自分で難易度を上げて楽しむのです。そのほうがクリアした時の喜びも大きくなるというものです。

そう、ゲームのスタート地点というのは、だいたい厳しい状況なのです。なぜなら、「そうじゃないと面白くないから」です。そこから「物語」が始まるのです。

「中年の危機」に陥っている人も、たいていこのゲームのスタート地点のように「厳しい状況」にあるのではないでしょうか。「借金がある」「離婚した」「仕事がない」「体力が落ちてきた」「自信が持てない」「ただただ不安」「後悔に押しつぶされそう」……などなど。そんな時に「目的を設定しよう」と言われても、「目的?今日を生き延びることだよ!」としか言えなかったりします。当時の私のように(笑)。

そこで、目的はひとまず置いといて、この厳しい現状を「ゲームのスタート地点」だと思い込むのです。この状況が「初期設定」なので、過去は存在しません。今のこの状況から「ゲーム=人生」が始まるのです。

こう考えることによって、自分から元気を奪い続けてきた過去、そして後悔から、自分を解放するのです。「マイナスからのスタート」ではなく、「ゼロからのスタート」にするのです。

さらに、ちょっとわかりにくいことを言うと、「マイナスからのスタート」が「ゼロからのスタート」になったということは、実質的に「プラスからのスタート」になっているのです。この謎理論(?)によって精神的に有利になるので、結果、多少の「無理ゲー」もウェルカムになります。そこにあるのはもはや「勝者のメンタル」です。

その上で、「さあ、ここからどうしてやろうか!」と考えます。困難な状況が、いまやモチベーションの源です。「借金返済ゲーム」を始めてもいいですし、「この歳からどうやって結婚するかゲーム」に取りかかるのもアリでしょう。「異業種転職ゲーム」なんかも面白そうです。いちばんワクワクするやつを選びましょう。

ちなみに私がまず始めたのは「借金返済ゲーム」。

このゲームをクリアしたところで、そもそも借金をしていない人に言わせれば「プラスマイナスゼロになっただけやん!」かもしれません。けれども、「借金1,000万円返したぜ!」となると、若干「偉大な感じ」が出はしないでしょうか。少なくとも私は「すげーな!」と思います。本当の勇者は、何度も成功した人ではなく、何度も立ち上がった人なのです。

長い人生の中で、貯金も借金もせず「ゼロ」のままの人より、マイナス1,000万円から「ゼロ」にした人のほうが、何となく興味を引くではありませんか。それが「物語」であり、その振り幅の大きさが、人間の「深み」を醸成するのだと思うのです。

最後に、私が苦しんでいた時に、友人が教えてくれた言葉を紹介させてください。

「精神の暗闇を通過しない者は、真の個性を獲得できない」

なんだか長老の予言っぽくてよいではありませんか。「精神の暗闇」という伏線をいかに回収するのか。これもまた、人生というゲームの醍醐味なのかもしれません。

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