保険診療では腰痛が改善できないワケ
慢性腰痛や急性腰痛は「結果」であり
「結果」と「原因」は異なる。そして
原因が在り続ける限り、結果は繰り返される。
原因とは、ある事象を引き起こす“もと”のことをいう。
腰痛の原因といえば、
「姿勢が悪い」
「カラダが硬い」
「筋力不足」
「運動不足」
これらがよく挙げられる。そう説明する術者も、そう思っている被術者も少なくない。
たしかにそれぞれ一理はある。が、すべて「過程」だ。原因ではない。
交通事故が起きた。これは結果だ。なぜ起きたのか?危険運転をしていたから。車の整備不良があったから。これは過程だ。
「なぜ?」を何度も何度も繰り返した先に、ようやく少しずつ「原因」はみえてくる。「根治」にはこの作業が欠かせない。
もしあなたが「対症療法」を求めるなら、痛み止めを飲めば良いし、マッサージを受ければ良い。それが効かなければブロック注射を打てば良いし、それもダメなら手術という手もある。
その場しのぎではなく「根治=痛みが再発しない状態」を目指すのであれば
術者と協力して行う「原因の検査・検証による“もと”の究明」が必要になる。
MRIをとった。背骨が曲がっていた。ヘルニアが見つかった。で?だからなに?という話である。
画像診断が検証の一助になる情報であることは間違いない。関節や背骨にはその方の「歩み」が反映されているところがあるからだ。
みるひとがみれば、ある程度「普段の癖」がわかる。なぜ背骨が曲がった?椎間板がつぶれた?となぜを繰り返し、仮説立てや検証もできる。けれど「ヘルニア=腰痛」というのは飛躍しすぎている。
人間の身体はロボットのように単純ではないし「痛み」と「年齢」「筋力」「診断(ヘルニア・脊柱管狭窄症・すべり症など)」は、必ずしも結びつくことではない。
“診断”も考えものである。おおくの一般人にとって診断は「諦める理由」や「ほかの原因に目を向ける妨げ」になり、結果的に改善を遠ざける因子になるからだ。
そのことに医師はもっと留意し丁寧に説明しなければならない。現実的にそんな余裕はないのかもしれないが。
ヘルニアだろうが、背骨が物凄く曲がっていようが、100歳だろうが、痛みを感じない人はざらにいる。筋力不足で腰痛が起きていたら赤ん坊はどうなってしまうのか。
坐骨神経痛や四十肩・五十肩は診断名でもない。どちらかといえば“症状”である。「坐骨神経痛だから/四十肩だから痛い」というのはトートロジーだ。“頭痛が痛い”のような無意味なアセスメントは医療従事者のすることではない。
どれだけマッサージや薬やブロック注射や手術で「結果」を誤魔化しても「原因」は無くならない。
けれど多くの現場においては、本当にこのような「結果の話」しかしない(ようだ)。
ゆえにほとんどの患者は永遠に不毛なイタチごっこをすることになる。年々、重症化する。それはそうだ。一度たりとも土台に触れていないのだから。大切なのは、しなきゃならないのは「原因の話」である。
僕の尊敬する先生は【検査8割、治療2割】とよくいう。
繰り返し強調するが「治る」ためにより重要なのは、治療や施術ではない。どれくらい通院するか、でもない。
「検査」や「問診」といわれるタイミングで行われるべき「原因の深堀り」だ。むしろ最初に結果は決まる。
当院のお客様は「手術はなんだったんだろう」「人生が変わった」などと仰るが、施術はたいそうなものではない。凄いことはしていない。
言ってしまえばただの科学だ。しかも運動学や解剖学などに触れてきていないお客様からも「わかりやすい」と言って頂けてご自身でもできるくらいレベルのことを行なっている。
うちではやらないが、たとえばバキボキする施術が好きなひともいると思う。大袈裟な機械を使う施術もあると思う。
どんな施術を受けるのも、本人が望むなら良いと思うけれど
「なぜ痛くなっていて、なぜ良くなっていくか」本人がわからなければ、身にはならない(再発を防げるようにならない)。
施術や指導が高度だから治るのではなくて、検査・検証を重要視し、なぜ?を繰り返し、原因を本人が納得・理解できることに注力しているから治る。
カラダに触れず、話も1~2分しかきかず、PCの画面をみて告げられる「原因」が的を射ることはそもそもない。
その先にある、まるで機械を扱うような“流れ作業的”な電気治療や、担当者が日毎に変わる“一貫性なきトレーニング”で「原因がなくなる」ことも「治る」ことも当然ない。
だから保険診療では腰痛が改善できない。
けどそれはしかたがない。
そもそも時間も期間もやれることも制約があり、一人一人を診るというより、とにかく効率的に大量の患者をみることが優先される構造だからだ。
じっくり検査・検証などしていられない。広い対象者の浅い悩みは解決できても、深い悩みはなかなか難しい。
検証しないままリハビリをしても手術をしても治らない。
事実を捉え、理由を考え、根幹を理解し、原因を除去しなければ「治る痛み」も治らない。
原因が在り続ける限り、結果は繰り返される。
こんなことは医療従事者も、何件も治療院通いをしている“受け手”も、わかっているだろう。
良い悪いの話ではなく、根っこに目を向ける「ゆとり」は、残念ながら保険診療にはない、という話だ。
受け手にとって、治療の選択が難しいのは間違いないが
“治らない治療”を受けた結果、治らないことに悩むひとが少しでも減ることを願うばかりである。
ホームページ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?