どうも!
セイタです!!
北京大学修士課程にて社会学を学んでいます。
この記事では、華人及び華僑のネットワークに関して書かれている日本語の論文がどういった論調なのかについてまとめさせていただきます。いろいろ論文を読んでいったのですが、自分が日本語論文を探すのがあまり得意ではない上に、ネットワーク研究に関しては専門外なので、代表的な論文が抜けているかもしれません。その場合はコメントで教えていただけると幸いです。
※「華人」とは中国に出自を持つ移民で居住国の国籍を取得している人です。国籍を取得していない場合は「華僑」となります。
閲読した論文一覧
Cinii及びGoogleにて「華人」「華僑」「ネットワーク」という単語を入力し、自分の興味関心に合いそうな論文をダウンロードして読んでいきました。それが以下の論文たちになります。それでは、一つ一つ簡単に紹介させていただきます。
呉暁良. 在日中国人留学生のソーシャル・ネットワークとその関連要因
この論文は九州大学の博士課程の学生の博士論文になります。博士論文を最初に読むメリットとしては、先行研究がきれいにまとまっている可能性が高いからです。もちろんあくまで学生なので、人それぞれなのですが、3~5年といった長い月日をかけて、一つの研究を行うので、場合によっては偉い先生以上に先行研究がまとまっていることがあります。研究内容自体はそこまで面白くなくても自分の興味のある分野の博論は読む価値がある場合もあります。問題は見極めが難しいことですね、、
この博士論文もネットワークに関する主要な論文や概念がまとまっており、その後の研究の糧になりました。
例えば、
上記のようにネットワークに関する概念を学ぶことができました。時間があればここから引用元も当たりたいのですが、時間がない場合はザクッと概念の理解だけにとどめておきました。
博士論文の本来は最も重要な箇所である実際の研究の部分はあまり興味がなかったので、流し読みにとどめました。なので、この博論には1時間強しかかけていません。
若林直樹. 組織理論の発展において社会ネットワーク論の与えた新たな視点
この論文はPowellやGranovetterのような社会学の視座から理論の構築を試みた大家の理論をわかりやすく紹介してくれています。
まず、Powellの理論を以下のようにまとめてくれています。
また、50年前の研究ではありますが、非常に有名な「弱い靱帯の強さ」といった研究も紹介しています。
Granovetterはあまりにも有名なので、英語でしたが元の論文も読んでおきました!!
さらにバートの2つのネットワークのパターンについても紹介しています。
華僑の例でいえば、後者の結束型関係資本がより当てはまりそうだなと個人的には感じていました。このようにネットワークの理論について少しずつ理解を深めていけています。
劉宏, 廖赤陽:. ネットワーク、アイデンティティと華人研究
この研究は一種のまとめ的な論文だと思うのですが、少し文章が読みづらかったので流し読みしました。ただ、この論文を通して、日本の華人研究の大まかな潮流への理解が深まりました。
まずこの論文は以下のスタンスで書かれています。
そして、ネットワークという概念に関して以下のような批判を挙げています。
自分の理解でいえば、ネットワークという柔らかい捉えどころのない概念をより固定的に確固としたものとして捉えることでが誤った結論を見忌引き出してしまったという批判だと思っています。
そして、ネットワークの媒体としては
上記のように様々な属性をまとめて理解しているようです。
陳天璽. 虹のメタファーに見る華商ネットワークの本質
この論文が華人・華僑ネットワークの研究の上では最も代表的な論文だと感じられました。いくつか論文を読んでいたのですが、この論文が何度も繰り返し引用され、参考文献に載っていることも多かったです。
内容としては、以下のようにそもそも華商ネットワークの実存についての考察から始まります。
その後、虹のメタファーにより、華商ネットワークの本質に迫ります。
そして、7色の虹と同様、華商アイデンティティの多源性として、以下の7つの要素を見出しています。
この論文でも地縁及び血縁にとらわれない幅広い華僑及び華人の在り方について書かれています。
そして、最後に、華商の強さについて以下のように語っています。
まとめ
簡単にまとめると、
・前半二つの論文がネットワークに関する理論のまとめ
・後半二つが華僑・華人研究に関するまとめ
となります。
理論に関しては、「エゴセントリック(egocentric)」、「ソシオセントリック(sociocentric)」、「ネットワークガバナンス」、「弱い靱帯の強さ」、「橋渡し型社会関係資本」、「結束型社会関係資本」などの理論を学ぶことができました。
華人研究に関しては。陳天璽の論文を通して観察者のバイアスのかかり方についてを、劉宏, 廖赤陽を通してネットワークという概念の操作について知ることができました。
なので、大まかな概念を理解することができたといえるでしょう。
本記事は一旦、以上とさせていただきます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
以下の記事ではより実証的な研究にフォーカスを当てて、研究内容を整理していきます。
また、以下のマガジンでは、華人や華僑に関して書かれた様々な記事を掲載しています。記事の内容としては非常にライトな体験談のようなものから実際に華人へのインタビューや本や論文などをまとめたものといったヘビーなものを想定しています。
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