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Vol.14 なぜ「中東」は争うのか -地域紛争を考える-

こんにちは西進塾国語・英語・歴史講師の島倉です。昨晩関東では大きな地震がありました。私はシャンプーしている時だったので本当に命の危険を感じました。1週間近くは余震に気をつけましょう。

さて今回は中東について少々話したいと思います。

まず「中東」とは西アジア・北東アフリカ地域を指します。なぜ中東と呼ぶのでしょうか。ポイントはどこから見て「東」なのか、ということです。答えはヨーロッパやアメリカなどいわゆる欧米諸国から見たということになります。つまり「中東」という言い方自体が西洋を主体とした一方的な見方であり、西洋中心主義的な呼称であるということは確認する必要があります。

さてそんな中東の国々は「石油が出る」「石油が出ない」で大きく二分されます。石油の有無でその特徴が全く異なるからです。通行料や石油、海外からの出稼ぎ労働者など国民の労働に依らない収入に国家財源が依存する国家をレンティア国家と言います。これら外生的な所得に依存するレンティア国家の特徴は、資源が豊富であればあるほど国民が働く必要がないということです。どういうことかといえば国家が資源で国家財源を賄えば、国民から税を徴収する必要がないのはもちろん、資源によって国庫に余裕があれば国民に余剰収入を還元できるからです。国民は石油で大儲けした政府からお金を還元してもらえるので働く必要がないわけです。働く必要がないというのは少し極端な話でしたが、レンティア国家は豊かである傾向が高いので、国民は公共サービスでその恩恵を受け、国全体が潤う状態になります。中東の「石油が出る国」はこうしたレンティア国家の傾向が強いです。一方「石油が出ない」中東の国々は貧しい傾向にあります。

石油の他に中東を特徴付けるのは「イスラーム教」であろうと思います。日本人にとっては馴染みの薄い宗教であるので、中東の紛争と絡めて危険な宗教、怖いなどという誤解や偏見が跋扈しているのが現状であろうと思います。

私は今中東の特徴として「石油」「イスラーム教」を列挙しました。紛争が起こっている地域といえばみなさん真っ先に中東の国々を挙げるのではないでしょうか。確かに中東では紛争が起こっています。そして紛争が起こる原因として多分宗教や民族のせいだと考えるのではないでしょうか。でも本当にそうなのでしょうか。現実世界では宗教や宗派、民族の違いを乗り越えて共存している国はたくさんあります。紛争が起こるのは宗教のせいだ、民族のせいだと言ってしまえば説明も理解も簡単になります。でもそんな簡単に理解できることが原因なら果たして中東の紛争はここまで泥沼化するでしょうか。本来地域紛争と言うのは、宗教、民族など固有の問題だけではなく、第三国の介入や国際経済、第三国間の関係性など流動的で外的な要因が複雑に絡み合って引き起こされているものであり、宗教のせいだ民族のせいだと簡単に理解できるものではないのです。私は先ほど「石油」と言うものを基準に「豊かな産油国」と「貧しい非産油国」と言う簡潔な二項対立を示しましたが、例えば石油は価格が変動し不安定であったり、油田の利権が紛争の引き金となったり、石油以外の産業が発達しないなど「石油の呪い」と呼ばれる大きなマイナス面があります。地域紛争と言うものにアプローチする際、複雑に絡まった要因を解きほぐしていかない限り、永遠に対立の本質を見誤り続け、解決には至らないのではないでしょうか。

西進塾
国語・英語・歴史講師
島倉孝介

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