リラックスできるツボ

所要時間5分「心を静める」忙しさや緊張でのぼせた時のツボ刺激法 - 養生大意抄10

1.心は静かにしてやわらかに

【原文】
心は静(しずか)にして和(やわら)かに躁(さわ)がしからざるを養生の一大要務とす。

如何となれば凡人の耳目口鼻の七竅皆上に在ゆへ見聞言語飲食に就て身内の諸気尽(ことごと)く上部へ引あぐることのみなり。

然るに心あらあら忙(せは)しければや神気うかみて気うはつる故、心気おさまらず、惟(ただ)逆上のみにて下降することなし。

素問に気降(くだ)るを順としのぼるを逆とすといへり。気常に逆上して久(ひさし)ければ必病を生ず。気常に順下なれば自(おのづから)無病にして長寿の基(もとい)なり。

此故に心せまらずせわしからざれば、心気暢(のびやか)にして気自順なり。気順なれば病おこらず。

【意訳】
心は静かに柔和にして、騒がしくしないことを養生の一大要務とする。

なぜかというと、そもそも人の耳目口鼻の七つの穴は、みな上にあるので、見たり聞いたり話したり飲食すると、体内の気がことごとく上部へ引き上げられるからである。そして心があらあらと忙(せわ)しければ、神気が不安定になり、気が上るので、心気がおさまらなくなり、逆上したまま下降しなくなってしまう。

『素問』には「気降(くだ)るを順としのぼるを逆とす」とある。気が常に逆上した状態が続くと、必ず病を生じる。気が常に下部へ循環していれば自然と無病となり、これは長寿の基礎である。

心が柔和で騒がしくなければ、心気がのびやかで、気が正しくめぐる。気が正しくめぐれば病は起こらない。

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多紀元悳『養生大意抄』(国立公文書館内閣文庫所蔵)より


2.頭にのぼった血をどうやってさげるか?

忙しさから緊張が続いたり、ストレスを受けたりすると、気が逆上する。気の逆上は身体に不調をきたすだけでなく、精神面でもイライラしやすくなる。頭がのぼせた状態だ。

感情の高ぶりを表現するとき、「頭に血がのぼる」と言うことがあるように、この昔からの身体感は、現代人でも実感できるだろう。

さて、今回は「いつも朗らかに」という養生の教えを紹介したが、このまま終わると何の面白みもない。ただの説教になってしまう。

なので私からの補足として、実際に頭に血が上ってしまったら、どうやって下にさげるか。これについて、いくつかのツボ刺激を組み合わせた、5分程度でできる簡単な方法をご紹介する。


3.のぼせを下げて緊張をとるツボ刺激法

ツボ刺激の全体の流れ
ツボの刺激の全体の手順は以下の通り。所要時間5分。

リラックスのツボまとめ 1

それでは、以下に実際の詳しいやり方を解説する。

Step1:内関と足三里のツボ押し深呼吸

ツボ押し深呼吸のやり方
ツボを押したまま深呼吸を3回。これを1カ所につき3セット行う。

・ツボの場所

10内関と足三里

内関(ないかん)
手首の内側のシワの中央から、指の幅3本分くらい上に取る。胸部の不快感をとったり、精神を安定させる効果のあるツボ。

足三里(あしさんり)
膝のお皿の下角の外側から、手のひらの横幅くらい下がったところ。スネの骨のやや外側。胃腸関係のツボとして有名で、気を下げるツボとしても古来から使用されている。

足三里を押すときのコツ

10足三里の押し方

足三里は指一本だと力が入れづらく、押しづらいツボなので、膝を立てて、両手の人さし指から薬指の指先全体で押す。点を押すというよりも、両手の指先で面を意識して押すと、刺激が伝わりやすい。

Step2:足の裏を2種類の方法で摩擦する

以下の方法で両足の裏にある湧泉をさする。2セット行う。

・ツボの場所
湧泉(ゆうせん)
足の裏の中央のやや先端寄りにあるくぼみ。身体の最下部にあるツボで、冷え性で寝付きの悪い方にもよい。

・摩擦のやり方

湧泉摩擦 2

※地肌を出してやると手の滑りが悪く疲れるので、靴下をはくか、ハンカチなどの薄い布を足にかぶせて行うとよい。

直線摩擦
土踏まずから、足の裏の中央にある湧泉というツボめがけ、手の平の付け根あたりを使って、直線をイメージして20回摩擦する。力は抜いて軽く行う。

円状摩擦
湧泉へ手の付け根あたりを軽く押し当て、そのまま円を描くように20回さする。


4.イライラしてしまったり、緊張の強い時に

リラックスのツボまとめ 1

今回ご紹介した方法は、疲れて時間のない時も手軽できるように、ツボを厳選し、所要時間も5分程度のメニューにした。もし物足りない時はこれを2回くらい繰り返してもよい。

のぼせを下げることは精神の安定にもよいし、寝る前にやると睡眠の質も上がるので、忙しい時や、ストレスの強い時にぜひお試しください。

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