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『アーガ秘水』

1クール目の抗がん剤服用期間が終わった。
初日に抗がん剤の点滴。14日間の抗がん剤服用期間で、計15日だ。
これから、6日間の休薬期間に入る。次の血液検査で問題がなければ、しばらくはそれの繰り返しになる。何クール続けるのかは決まっていない。

1クール目の抗がん剤治療の副作用は大した問題にはならなかった。すこしの便秘とダルさ。血混じりの鼻糞。胸やけ。手足のしびれ。こんなところか。前回、5日目でリタイヤしたのが嘘のような副作用の軽さだった。
心療内科で処方された薬の服用も、副作用の軽さの一助になっているのだろう。

今日、父の故郷の新潟の山奥の山村から、大量のふきのとうが届いた。わざわざ山に入って収穫してくれたという。熊も出そうなのに、ありがたい。冷凍保存をすれば一年間は持ちそうな量だった。感謝。
その、届いた荷の中に、ひとつの瓶に入った謎の果実を漬けた謎の水があった。全くもって謎謎なぞなぞしい水だ。
父から聞いたところによれば、新潟の山奥の山村のどなたかが、この謎の果実水で癌が治ったという。そういう謎の水であるらしい。
謎が多すぎて面白い。新潟の山奥の山村とはそういうところなのだ。大好きだ。私は、この謎の水を『アーガ秘水』と名付ける事にした。

私は早速、野菜ジュースに大さじ一杯の『アーガ秘水』を混ぜて飲んでみた。つうんとする『アーガ秘水』の味わいが舌に感じられた。「これなら続けられる」、私はそう思った。
それから私はトイレで20回は排便している。たった、5時間の間にだ。まるでそれは、ノロウイルスに感染したときのような症状だった。
『良薬、腹を下し尻がピリつく』、そんな諺が今日うまれた。

私は、アーガパワーに驚いている。子どもの頃からよく腹を下しているので、下痢には慣れているはずの私がトイレから出られなくなるなんて。『アーガ秘水』は面白すぎるではないか。これからも量を調整しながら飲み続ける事にする。明日は小さじ一杯にしよう。抗がん剤治療中は、私にとって生まれてはじめての便秘気味の期間でもあった。それが『アーガ秘水』によって一気に解消された。久しぶりに腹が軽い。二週間分の宿便が消え失せたのだろう。『アーガ秘水』はデトックス効果が高い。そういう事にしてみよう。

抗がん剤治療中は専用の手帳に、血圧や排便回数の記入欄があるのだが、いきなり排便回数が20回に跳ね上がったらめんどくさい事になる。これは過少申告でいこう。当初、「お猪口で一杯飲むといい」、そう言われていた。それを信じなくて良かった。大さじ一杯でこれなのだから。しかし、『アーガ秘水』はこれからも飲み続ける。
これこそが、『せいのほう式』の『むずむずディストラクションスロウガンズ』なのだ。



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