『壊れ年』
掃除機も壊れた。『も』なのだ。『が』ではない。
今年は私にとっていったいなんなのだろうか。色々壊れすぎている。たびたびエッセイでも触れているのだが。夏に腹が壊れた。秋に頭が壊れた。晩秋に温水洗浄便座が壊れた。初冬に石油ストーブが壊れた。ついでに、電気沸騰ポットを買い換えた。これで、終いではなかった。
今日、コードレス掃除機のバッテリーが静かに「すうん」と息をひきとった。一日中充電しても、10秒しか息を吸わない。どうしてそんなにわがままな掃除機になってしまったのだ。まだ、3年しか経っていないというのに。素直に育ってくれれば5年は息を吸ってくれるはずなのに。5年保証を付けていたものの、Amazonとクロネコ保証をたらい回しにされて私は疲れた。いつ解決するのか解らず、見通しもたたない。
果たして掃除機のバッテリーの劣化は故障なのか。5年保証の範囲内に収まる事なのか。青く明滅した掃除機は10秒吸っては「すうん」と黙る。5秒空けて、また10秒吸っては「すうん」と黙る。その繰り返しに私はほとほと参ってしまった。例え、これからメーカーに送って「うんたらかんとか」しても、今年中に掃除機のわがままな性格が素直になって、我が家に生還して帰ってくる確率はほとんどゼロだった。だったらもういい。
私は、こんな『壊れ年』を来年に持ち越したくはない。今年中に決着をつけたい。掃除機のわがままな性格を根本から叩き直すためにはどうしたらいいのか。私は買い換えるのか。
しかし、掃除機をあれこれ選ぶ気分の高揚が私にはなかった。買い物には気分の高揚が不可欠だ。渋々買い物をするのは嫌なのだ。どうせなら、買い物はわくわく楽しくしたい。
そして、私は折衷案として、バッテリーが内蔵されている『ハンディクリーナー』部だけを交換する事にした。説明書にはちゃっかり(小さく)バッテリーの劣化に備えた『ハンディクリーナー』だけ別売りされている事が記されていたのだ。
私はバッテリー内臓のハンディクリーナーだけを注文した。コードレス掃除機が一人の人間とした場合、頭と足先は傷だらけなのに腹に収まるハンディクリーナーだけが新品になるという具合になる。
しっかり、在庫を確認してから注文をした。今年中に掃除機のわがままな性格が矯正される予定だ。これで気持ちよく年を越せる。
しかし、偶然とは言え驚いた。コードレス掃除機の不調は今年の私そのものだった。壊れた腹を手術した私を追うように、コードレス掃除機の内臓バッテリーが同じ足跡を辿る事になった。腹だけ新品になるのだ。なんという『壊れ年』だ。
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