セイケトミオ

写真家

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Heliar classic 50mm F1.5VM解像力一辺倒に投じられた一石

5月の連休が始まる少し前、(株)コシナから新しいレンズのプロトタイプが届きました。レンズキャップを外すと、これまでのコシナ製レンズでは見たこともないような青いコーティングのレンズです。覗きこむと絞り羽根がすぐ手前に見えてオッと思います。 コシナの担当者はこのレンズはアポランター50ミリの対極にあるレンズですと、念のためと思ったのでしょう、メッセージを添えてくれました。わかりやすい指針です。 アポランターのような高性能レンズを手にすると、それだけで途端に肩に力が入って、知ら

    • 五月になれば

      四月まで雪の残る北国で少年時代を過ごした私は、五月の暖かい陽光をいつも待ち侘びた。 それは冬の日々が寒過ぎるとか、嫌で嫌でたまらないということではなく、毎日スキーやスケートで遊びまわる季節が終わり、残雪の消える日を迎えるというのは、季節の移り変わりを知る特別なゴーサインだった。 東京の五月は、時には夏日のような暑い日もあってあの頃の季節感とは全く異なるが、それでも私の体内時計は五月になれば今もムクムクする。ボケたわけでも、錯覚でもなく、五月になればと思うのである。 陽だ

      • M9 ccd に心惹かれて

        ライカデジタルMがM10になった頃から、すっかり出番の減ったM9Pは友人のところに行ってすでに6年、久しぶりにphotoshopで開いたM9の画像がすこぶる新鮮に見える。 渦中にあるときは判断が難しく、つい波に乗り遅れまいという気分に押されて前に進むけれど、少し時間が経ってみれば、私のような凡人は悔い改めることの繰り返しで終わりがない。 M8は1000万画素でスタート、M9で1800万、240から2400万画素、M10でも引き続き2400万、このあたりで少し落ち着くのかなと

        • REVUENON 55mm f1.2

          この富岡光学製の55ミリf1.2にはいくつかのバリエーションがあるらしいが、入手したのはペンタックスのKマウント、フジのX用マウントアダプターを確保してから決めました。 手元に届いたレンズは汚れが酷く、絞りバネは張り付いて動かないし、アダプターにもうまく装着できない。半ば諦めかけたが、アダプターとレンズを手で固定ながら数枚撮ってみると、これは諦めるわけにはいかないと思ったのです。 こんな時はこの道の名人に聞くより他に方法はありません。しかし電話先の名人はいいよとは言ってくれ

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        Heliar classic 50mm F1.5VM解像力一辺倒に投じられた一石

          X-Pro3はハネムーンが嫌い!

          新しいカメラを購入後暫くのあいだは、何となく落ち着かないソワソワした時間があると思う。机の上に置いて眺めたり、埃を払ったり、クロスで拭き取ったり、他人から見たら猫可愛がりのようで妙に見えること甚だしいに違いないのだが、、。 つまりピカピカのカメラが自分のものに徐々に変わるまでの一定の時間は、何十台というカメラを買って使ってきた後でも変わらない。ちょっと神経質で、少しウキウキ、あの落ち着きのないふあふあした時間、それが大抵は不注意で引っ掻きを作ったり、ちょこんとどこかにぶつけ

          X-Pro3はハネムーンが嫌い!

          初夢 M8 monochrom

          2006年登場のライカM8今年で18年を迎えます。 生まれては消え、生まれては消えのデジタルカメラですが、2年後の2026年でもM8は十分現役でイケるだろうと思います。 この間のライカMデジタルの歩みから、もし18年前にM8がこんな姿で登場していたらと勝手な夢をお正月に託してみました、、、私の夢のカメラ。 M8 monochrom / no LCD 例えば2012年に登場したLeica M MonochromからLCDを取り払い、M-Dから背面意匠を借りてきてとイメージする

          初夢 M8 monochrom

          Nokton 50mm f1.2 X mount

          23mm, 35mmに続いてNokton f1.2 50mmがコシナの X mount シリーズに追加、9月7日発売になりました。Nokton 35mm f1.2 の 50mm 版登場かと期待していた一人ですが、早速使う機会がありましたので、軽いインプレと思ってご覧いただければと思います。 レンズ意匠 レンズ全長は1センチほど長くなっただけですが、口径が58ミリと大きくなった分35ミリノクトンと並ぶと大きく立派、特に専用フードを付けると外観の印象はかなり違って見えます。

          Nokton 50mm f1.2 X mount

          新井 卓 写真展 日々の鏡

          コロナ禍の3年間はモヤモヤの毎日で、写真展を見に行くことも控えるような日が長く続いていましたが、PGIに用事があってそれも珍しく午前中行ったことでこの素敵な新井さんの展覧会に出会いました。久しぶりに美しい写真にふれることができて、心が洗われたような気持ちになりました。 PGIの展示は少し暗めの照明と相まって、小さなフレームに収まったダゲレオタイプの写真は、まるで光に吸い込まれるように私たちの目をを誘います。そしてその独特の色味は、紙焼きのプリントやポジフィルム、さらに液晶で

          新井 卓 写真展 日々の鏡

          Foveon の旅 (4)

          SIGMA DP3 QUATTROは2015年3月発売のカメラですから、今はカタログ落ちのカメラです、それが当時の新品価格よりも中古でさえ高値が付いているのですから、マーケットでの潜在的需要を示しているのかも知れません。 最初にこのカメラを見た時の驚きはその筐体のデザインでした。 それから8年後の今もそのデザインは飽きるどころか、想像よりも遥かに使いやすいこともあって、このカメラには時間の色褪せというものがありません。依然その独創的なスタイルは二重マルです。 DP3 QU

          Foveon の旅 (4)

          Foveon の旅 (3)

          DP3 Merrill が発売になってからちょうど10年、デジタルカメラにとっての10年は目まぐるしく変わるこの世界では長い時間です。旧式モデルのデジカメは3、4年もすればすっかり忘れられてしまうが普通ですが、、、。 ましてやコンパクトカメラの範疇で、内蔵ファインダーもついていないデジカメです、もうすっかり忘れ去られてしまったのではと思うでしょうが? これが結構今でもイケてるんです。 もちろん撮りやすいカメラは、他にいくらでもあるでしょうし、誰にも失敗なく撮れるようなカメ

          Foveon の旅 (3)

          Leica Summar

          数多くのライカ50ミリレンズの中で、ズマールは今最も安価に入手できるレンズの筆頭ではないかと思うのですが、しかしそれは安かろう悪かろうという類のものではありません。一言で言えば良い悪いは使う人次第、使い手も試されるような手強いレンズです。 1930年代初頭に生またレンズですが、あの天才H.C.BとA.Kが共に手を携えてパリの街を闊歩していた時代だったと思えば、それだけでぼくなんかは喉から手が出てしまうほど欲しくなるレンズです。 古いものはすでに齢90を超えていますから、そ

          Ultron 75mm f1.9 VM

          レンズキャップもフードもなかったプロトタイプ、あれから5ヶ月、意匠も新たに製品版として箱に収まって届きました。 外観の変更はあるかもしれないと、撮影期間が終了した時言われていたのでどんな意匠になって登場するのか楽しみでしたが、ネットでの発表の写真を見て期待がぐんと跳ね上がりました。 箱を開けると真っ先に飛び込んできたのは、ねじ込み式フードとセットになったかぶせ式のレンズキャップですが、これがなんとも格好良いのです。 これだけでこのレンズが欲しくなっても不思議でない仕上がり

          Ultron 75mm f1.9 VM

          大晦日のカメラ

          今年最後の散歩。 さてカメラをどうしようかと、あれやこれや候補を上げてテーブルの上に置いてみる。もちろんライカもそのうちのひとつでレンズはすでに決めていた。しかし最後の最後、候補の中でも最も重いコンビに決める。 SIGMA sd QUATTRO H と40ミリf1.4、レンズ単体で1kgを超える50ミリクラスでは超弩級のレンズです。日暮れまでに残された時間は僅か、それほど歩くことはないだろうというのが、選んだ理由とも言えるけど、本当のところは重過ぎて持ち出す機会が滅多にない

          大晦日のカメラ

          Foveon の旅 (2)

          2009年5月、友人のM君がロンドンに来るというので、発売直後のシグマDP2をなんとか買ってきて欲しいと頼みました。M君は地元大阪を隈なく探し回り、難儀して英国に持って来てくれました。こうしてぼくのフォビオンの旅はいよいよDP2から始めることができたのです。 2009年は初めてチェコを訪れた年ですが、プラハはこの時から目に見えない糸でDPシリーズと繋がっていたのかもしれないと思うエピソードがあります。 それは後年、福井信蔵さんに誘われてDP3Mのカタログ制作をお手伝いする

          Foveon の旅 (2)

          Foveon の旅 (1)

          🔳🔳🔳禍でなければ、都会にいても秋色の気配漂う今頃はカメラを持って旅に出たい季節のはずなのに、3年目を迎えた今年もまだそういう気分にはなかなかなれません、、、、。 最初にシグマのカメラをそしてフォビオンというセンサーを知ったのは、アートディレクターでありながら自ら写真を撮り鮮烈なイメージをそのカタログで提示した、福井信蔵さんとDP1という存在でした。それがあまりに強烈だったため、今でもぼくの中では両者はピッタリと一体化したままですが、それももう14年も前のことになります。あ

          Foveon の旅 (1)

          Nokton 35mm f1.2 X-mount

          ちょうど10年前に手放したFujiのXPro1を最近また買い戻して、レンズは35ミリf1.4Rで決まりと思っていたのが、新しいレンズにも目が向いてウロウロ、あれやこれやと思い惑ううちに、コシナのXマウントも気になり、どうしても使ってみたくて仕方ありません。  貸し出しをお願いしたコシナ製Xマウントレンズが届きました。 ライカMマウント用レンズを少し小振りにしたような佇まいは、XProとのマッチングも美しく好ましい。絞り目盛のクリック感やフォーカスのトルク感もいつものフォクト

          Nokton 35mm f1.2 X-mount