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【浪江】【原発避難区域】家屋解体の現状と課題

浪江町民が漏らした不満


 原発事故の避難指示区域(解除済みを含む)では現在も被災家屋の解体作業が行われている。同事業を担っているのは環境省で、申請件数は約1万6500件、解体済件数は約1万4100件となっており、かなり進んではいるものの、対象住民からすると、避難解除後も同作業が長期間続いていることや、作業内容そのものに関する不満もあるようだ。

 被災家屋の解体は、避難指示解除準備区域、居住制限区域にあった建物で、各市町村が発行する「り災証明書」で「半壊」以上と判定され、所有者が希望すれば環境省が解体作業を行う。それには、倉庫や物置、車庫、事務所・店舗なども含まれる。また、当初、帰還困難区域は対象外だったが、2017年秋以降、各地で特定復興再生拠点区域が設定されたのに伴い、同拠点区域内の家屋解体も受付・実施されている。

 別表は、環境省発表の「データで見る福島復興」(2月7日付)を基に、市町村別の家屋解体の進捗状況を整理したもの。

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 全体の申請件数は約1万6500件、解体済件数は約1万4100件で進捗率は約85%となっている。ただ、いまも申請を受け付けているところもあり、それによって数値は上下する。

 楢葉町、川俣町、田村市、川内村ではすでに完了しているほか、南相馬市、飯舘村、葛尾村では受付を締め切っており、進捗率は90%代後半と完了に近づいている。

 双葉町と大熊町は、帰還困難区域が大部分を占めていることもあり、復興再生拠点区域内での申請件数が多い。避難指示解除準備区域・居住制限区域に比べると受付・作業の開始時期が遅かったため、まだ進捗率はそれほど高くない。両町では現在も避難指示解除準備区域・居住制限区域、帰還困難区域の復興再生拠点区域で、申請を受け付けている。

 一方、浪江町と富岡町は、2017年春に避難指示解除準備区域と居住制限区域の避難指示が解除され、間もなく3年になる。復興再生拠点区域ではいまも申請を受け付けているが、それを踏まえても、まだ未了件数が多い。特に、浪江町は残件数が1000件超、後から対象となった復興再生拠点区域を除いても、約900件が残っている。

 ある浪江町民は、「最近、家屋解体が完了したのですが、申請をしたのはいつだったか。1年以上前だったと思いますが、そのくらい順番待ちの期間が長かった」と話す。

 同町の場合、最も申請件数が多かったこともあり、かなりの順番待ちを余儀なくされたようだ。

 「やはり、自分が建てた家、長年住んでいた家を解体するのは切ない。解体申請をした時は、大げさに思われるかもしれないけど、〝覚悟を決めて〟申請書を出した。ただ、そこから1年も待たされると、心が揺らぐというか、切なさが増すというか。一思いにやってほしかったというのはありますね」(同町民)

植栽対象外への不満

 一方、別の町民からは「避難指示解除後も家屋解体が盛んに行われるのはどうなのか」といった意見が聞かれた。

 「浪江町は2017年3月末に避難指示が解除されたが、戻って人が住んでいる中で、家屋解体を並行して行うのは、住環境的に決していいものとは思えない。何とかならなかったのか」

 こうした指摘は避難指示解除前の住民懇談会などでもあった。「人が戻っている中での家屋解体は、安全や防音などの面で大丈夫なのか」、「せっかく除染をしてもらったのに、近隣の家屋解体によって放射性物質が飛散するのではないか」等々である。環境省では「そういった問題のないように進める」との回答をしていたが、それでも住民は不安を抱えていたのである。

 各市町村では、住民が解体申請をする際、「東電による家屋の賠償(財物賠償)の手続きが終わっていない方は、解体前に東電と協議することをお勧めする」と促していた。そうした事情もあり、避難指示解除前に完了できなかった面もあろうが、本来なら家屋解体も含めた「環境整備」が完了した段階で、避難指示解除を進めるべきだった。

 このほか、別の町民からはこんな声も。

 「植栽などは家屋解体の対象に含まれない。それだけ残されても困るんだけど」

 環境省福島地方環境事務所に確認したところ、確かに「植栽・庭木などは家屋解体の対象に含まれない」という。ただ、避難指示が解除されたエリアであれば、伐採した庭木などは一般ゴミとして出して構わないとのことだった。

 つまりは、自分で伐採するしかないということだが、住民からは「どうせなら、一緒にやってくれてもよかったのではないか」といった不満もあるようだ。

 とりわけ、前出の町民からはこんな話が聞かれた。

 「私の自宅は、土地は借地で、そこに自前で家を建てました。いまは別のところに新居を構えているため、浪江町の家は必要なくなり、家屋解体をお願いしました。地主さんには更地にして返還する取り決めになっているため、植栽の伐採なども一緒にやってもらえるとありがたかった。私の知人でも同じような状況の人がおり、『植栽だけ残されても困る。どうすればいいか』と相談していたところです」

 家屋解体の現場では、ここで述べたような課題や住民の不満もあるということである。


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