見出し画像

【動画あり】【最終処分場化】本誌記者が見た【中間貯蔵施設】

強まった〝最終処分場化〟への懸念

(2020年3月号より)

 環境省は2月20日、中間貯蔵施設の内部を報道陣に公開した。敷地内には運び込まれた除染廃棄物を分別する施設や除染土を貯蔵する施設が設けられ、その規模の大きさがあらためて実感できた。一方で、それらの施設をすべて撤去し、法律で定められた期限である2045年3月までに県外に運び出すのは困難であるという思いが強まった。

 中間貯蔵施設は、県内の除染で出た廃棄物(除染土や側溝の汚泥、草木など)や放射線濃度1㌔当たり10万ベクレルを超える焼却灰を保管する施設。福島第一原発周辺の約1600㌶の敷地に整備されており、大熊・双葉両町にまたがっている。

2017年11月22日付記事中間貯蔵001

 県内各地で発生した除染廃棄物を安全かつ集中的に貯蔵するために整備され、最長30年間(パイロット輸送が開始した2015年3月から2045年3月まで)保管する。その後は県外で最終処分されることになっており、法律に明記されている。

 今回の報道公開は本誌を含む16社33人が参加した。

 最初にいわき市内に設置されている輸送統括ルームを視察した。環境省によると、輸送対象となっている除染廃棄物の総量は約1400万立方㍍(昨年10月集計時点)で、2月13日現在、約602万立方㍍(総量の43%)が中間貯蔵施設内に輸送済み。2022年3月までには概ね輸送が完了する見込みだ。

 そうした輸送を担うのがダンプトラックで、1日延べ約3000台が稼働している。同ルームではそれらの運行情報をGPSで管理し、ルート外れや停滞などの異常が起きていないかリアルタイムでチェックしている。異変が起きた場合は自動でアラートが鳴る。専用スタッフは約30人。フレコンバッグにタグを付けて、種類や重量、放射線量などのデータもここで集約している。

画像2

 管理しているのは中間貯蔵施設の運営を委託されている国100%出資の特別会社、中間貯蔵・環境安全事業㈱(=JESCO)。

 その後、楢葉町の北田大道下仮置き場に移動して、ダンプトラックにフレコンバッグを積み込む作業を視察したほか、常磐自動車道ならはパーキングエリアに設けられた輸送車用駐車マスも確認した。主に輸送時間が2時間を超える運転手が休憩するために利用するという。

画像7

 常磐道大熊インターチェンジ(IC)脇に設けられた輸送車用の待機場所などを見ながら大熊町内に入り、国道6号を経由せず中間貯蔵施設に入れるよう新設された中央台跨道橋のETCゲートにも立ち寄った。有人ゲートと比べて大幅な時間短縮が可能となり、1日500台が通過しているという。近くのモニタリングポストの数値は1・8マイクロシーベルト毎時で、まだまだ放射線量が高いエリアであることを実感させられた。

 国道6号と県道251号小良ヶ浜野上線が交わる三角屋交差点から、いよいよ中間貯蔵施設内に入った。

 広大な敷地内には、運び込まれた除染廃棄物を土壌や草木に分別する「受入・分別施設」と、分別後に出た除染土を収容する「土壌貯蔵施設」があり、双葉町に1~3工区、大熊町に1~5工区が整備され、2017年10月から順次稼働している。

 バスを走らせると、すぐに黒いフレコンバッグが無数に積まれた保管場が見えた。県内市町村から運ばれた除染廃棄物などが一時保管されており、「受入・分別施設」への直接搬入と並行して受け入れが進む。輸送済み約600万立方㍍のうち、約300万立方㍍はすでに分別・貯蔵され、残りは保管場に置かれて順次処理されている。

 大熊3工区の「受入・分別施設」に着くと、除染廃棄物を運ぶ大型ダンプが次々と訪れ、フレコンバッグを荷下ろししていた。

画像3

 ベルトコンベヤーで施設内に運ばれた後は破袋機によりフレコンバッグが破られ、2種類のふるい機にかけられる。これらの工程によって、除染土に混じった大きな石や草木、袋の残骸などが分別され、重機で除去される。残った除染土はベルトコンベヤーやダンプトラックで、「土壌貯蔵施設」に運搬される。

 この日訪れた大熊3工区の「土壌貯蔵施設」は5万平方㍍で、谷地形の場所に作られていた。最大55万立方㍍の除染土を受け入れることが可能で、すでに31万5000立方㍍を貯蔵している。

 なお、汚染具合によって受け入れる「土壌貯蔵施設」も分かれており、6施設では1㌔当たり8000ベクレル以下のみ、3施設では8000ベクレル以上の除染土を貯蔵している。昨年11月末までに搬入した除染廃棄物のうち、除染土は94・5%を占め、1㌔当たり8000ベクレル以下が77・0%を占めている。

 運び込まれた除染土は重機で整地・圧縮され、そのまま屋外で保管される。4区画中3区画はすでに高さ10㍍まで積まれ、シートがかけられていた。雨水が浸透することも想定して除染土の下にもシートが敷かれており、出てきた水に関しては浸出水処理施設で除染処理が施されたうえで排水される。最大15㍍まで貯蔵される予定で、現在隣接地に新たな区画を設けるべく、整備や地権者との交渉を続けている。

画像4

画像5

敷地内で除染土再利用実験

 懸案事項だった用地確保はかなり進展している。1月末現在、約1600㌶のうち1137㌶(地権者1743件、全体面積の71・1%)が契約済み。契約は売買に加え、土地の所有権を残せる「地上権設定」も選択できる。道路や水路、その他の公有地と合わせて約1427㌶(全体面積の89・2%)にめどが立った。

 道路沿いにはそのまま残っている住宅も多く、「地権者と契約済みの場合でも施設整備の必要に応じて順次取り壊すようにしている」(環境省担当者)。ただし、すべての地権者が納得して契約しているわけではなく、地権者団体「30年中間貯蔵施設地権者会」からは、地上権を設定した人に30年分一括で支払われる土地使用料が低すぎるという指摘も出ている(本誌2019年1月号参照)。同地権者会の門馬好春会長は「中間貯蔵施設独自の用地補償ルールではなく、他の公共事業と同じようなルールに基づいて補償を行うべきだ」と主張している。地上権契約者は150件ほどで数は少ないが、正当な補償が行われることが求められる。

 最後に、除染土の減容・再生利用、最終処分を効率的に進めるための技術開発を行う「技術実証フィールド」を訪れた。前述したJESCOや公募で決められた実証事業者が利用しており、約2㌶の敷地内に設けられた実証試験場で、除染土の再利用などの実証実験が行われている。


画像6

 環境省は2016年に除染土を資材として再利用する計画を打ち出し、南相馬市小高区では再生資材化実証試験および試験盛土を行い、飯舘村長泥地区では農業用資材として実証事業を行ってきた。背景には最終処分に必要な敷地面積・埋め立て容量を減少させ、県外最終処分をより現実的にしたい狙いがある。

 ただ、実証事業が予定されていた二本松原セ地区では住民から反対意見が相次ぎ、計画を白紙に戻した経緯がある。だから、中間貯蔵施設内で実証事業を始めたのだろうが、たとえ技術開発に成功したとしても、住民の理解を得られるとは限らない。除染土を減らしたところで、県外で最終処分場を受け入れてもいいというところが簡単に見つかると思えないし、除染土の拡散を促すことになりかねない。そういう意味で同フィールドでの実証事業にあまり意義は感じられなかった。

 このほか、除染廃棄物や災害廃棄物などを減容化する「仮設焼却施設」、その際に生じる焼却灰を処理する「仮設灰処理施設」、処理し切れずに残ったばいじんを貯蔵する「廃棄物貯蔵施設」が整備されており、一部施設を車窓から見学した。

 視察中に感じたのは実に多くの人が働いているということだ。環境省によると、施設内では約4500人が働いており、ダンプトラック運転手や仮設焼却施設の建設作業員などを含めると、1万人以上が関わっている。福島第一原発の作業員が約4000人。周辺の原発被災自治体において、帰還者がまだ少ないのにホテルやアパートが立ち並び、コンビニやスーパーが出店する理由があらためて分かった。

非現実的な県外最終処分

 除染廃棄物の輸送量は2015年約4万5000立方㍍、2016年約18万8000立方㍍、2017年約55万1000立方㍍、2018年約183万立方㍍と年々増加度が加速しており、今年度は前出・大熊ICなどが整備されたこともあり、1月末時点で約319万立方㍍を受け入れている。2020年度は400万立方㍍を輸送する見込みだ。

 しかし、そうした実績や巨大な施設を目の当たりにすると、あらためて「2045年までの県外運び出しは不可能ではないか」という思いが強くなった。環境省の担当者は「一度整地・圧縮した除染土は重機で容易に運び出せるので問題ない」と説明していたが、実際にはどれだけの手間と時間がかかるか分からない。

 2022年3月にすべての除染廃棄物の輸送が完了し、5年ぐらいかけて落ち着いたとしても最終処分場となる場所が決まり次第、搬出計画を立て、再び関連施設を整備し、輸送することになる。地上権を設定している地権者には原状復旧したうえで戻さなければならない。前提となる県外最終処分の受け入れ先の決定も含めて可能だとは到底思えない。

 現時点で最終処分場のめどは全く立っていない。福島第一原発、福島第二原発の廃炉作業は少なくとも40年以上行われる見通し。加えて昨年8月5日には双葉地方市町村圏組合管理の「クリーンセンターふたば」(大熊町)が、帰還困難区域で発生した特定廃棄物(1㌔当たり10万ベクレル以下の廃棄物に限る)を受け入れることが決定するなど、双葉郡全体で放射性廃棄物の受け入れ環境が整いつつある。

 こうした中で、なし崩し的に除染廃棄物の最終処分場となる可能性は極めて高いが、国が2045年3月までに県外で最終処分するという約束を破れば、双葉郡住民にさらなる負担を負わせることになる。本誌で繰り返し触れてきたが、仮に計画が変更されることになったら「本県の原発被災者がどれだけ犠牲を強いられてきたか」という点を踏まえ、搬出完了が遅れるごとに違約金を支払わせるよう、県が先頭に立っていまから戦略を立てておく必要がある。

 このように、中間貯蔵施設のさまざまな課題が見えた報道公開だったと言える。


Twitter(是非フォローお願いします)
https://twitter.com/seikeitohoku

facebook(是非フォローお願いします)
https://www.facebook.com/seikeitohoku

Youtube
https://www.youtube.com/channel/UC_kuXuKLjjKz4PYIYuUAxnA?view_as=subscriber

HP
http://www.seikeitohoku.com

よろしければサポートお願いします!!