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不器用でまっすぐな「誠」 斎藤一|FGO

 今回はスマートフォンRPG『Fate/Grand Order』に登場するキャラクター、斎藤一をご紹介します。

 Fate/Grand Order(以下FGO)は、『Fate』シリーズや『月姫』『空の境界』といった人気タイトルを多数制作するTYPE-MOONからリリースされたスマホ向けRPGです。
 舞台は南極にある、人類の過去から未来を観測する機関カルデア。2015年のある日、未来が観測出来なくなったことにより2016年に人類が滅亡することが発覚します。カルデアの一員となった主人公は人類滅亡を防ぐため、歴史上に発生した歪み「特異点」へとワープ。神々や偉人といった英霊たちの力を借りて特異点を修正し、未来を取り戻すための時間旅行に挑むストーリーとなっています。
 Fateシリーズの一つといってもストーリーは完全オリジナルなので、今までFateシリーズに触れてこなかった人も楽しく読めます。かくいう筆者もFGOが初めてのFateです。


 さてそんなFGOにて、戦う力を持たない主人公は数多の英霊たちと主従契約を結び、自身のサーヴァント(従者)として代わりに戦ってもらうことになります。このサーヴァントの一人が、石川界人さんの演じる斎藤一というキャラクターです。

斎藤一。スーツに日本刀というイカしたスタイルだ

 この斎藤一という名前に「あの新撰組の!」となる人もいれば、よく知らないという人もいると思います。中には『るろうに剣心』はじめ、他の作品に登場した彼をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんね。実在の人物が作品に登場する場合、史実や他の作品と全く異なるキャラクターになることも少なくありません。
 そこで、史実ではどんな人物かを軽くさらいつつ、FGOにおける斎藤一の人物像をご紹介します。


 斎藤一は幕末ごろ、江戸幕府によって集められた武士集団・新撰組の三番隊隊長および副長助勤(副長補佐)として戦った人物で、永倉新八、沖田総司とともに最強格の剣士としてうたわれています。折り目正しく真面目で寡黙な人物だったことが伺え、組内の粛清役やスパイ、暗殺といった仕事も引き受けていました。戊辰戦争を経て新撰組が無くなった後は警察官として勤務し、平均寿命が43歳前後の明治・大正時代では珍しく享年72歳と、かなり長生きされました。

 ところがFGOでは一転、くだけた喋りで堅苦しさを嫌う、史実と正反対とも言えるキャラクターとなっています。主人公を「マスターちゃん」、自身をも時折「はじめちゃん」と称し、自由で適当そうな素振りを見せるので、同じ新撰組出身の沖田総司からは「ヘラヘラ新撰組」などと言われる始末です。

初対面にしてこのラフさである


 石川さんといえば『僕のヒーローアカデミア』の飯田天哉くんに代表されるような真っ直ぐ真剣で軸の強いキャラクターや、『白聖女と黒牧師』のローレンスくんのような包み込んで安心させてくれる優しいキャラクターのイメージが強かったので、「フランクでつかみ所のない、ゆえにこちらの力みを解いてくれる」斎藤一のようなキャラクターを演じられているのは新鮮に思いました。担当声優さんを知った際も驚いて、慌ててボイスを確認しに行ったことを覚えています。

飯田天哉(左)、ローレンス(右)

 束縛を嫌い、飄々と自由に生きる姿は世渡り上手な器用さを感じさせますが、その彼をたった一つ縛るものが「誠」。ふらふらと大義のない人に見えて、命果てるその時まで、己の信じる正義の元に生きた。心中に掲げたまっすぐな信条を曲げられない、どうしようもなく不器用な人なのです。


 そんな彼の信条、「誠」を垣間見ることができるイチオシのシナリオが、バレンタインのお返しシナリオです。
 お返しシナリオ全体のネタバレを含むので、ご自身の目で確かめたい方はお気をつけください。


 内容は、主人公が渡したチョコレートのお返しに、夜食のラーメンを一緒に食べながらお話をするというもの。昔話を交えつつ穏やかな時間を過ごす二人。そして斎藤一は別れ際、主人公にとある提案をします。それは、「使命を捨てて逃げ出す」という選択肢でした。

 実は主人公は、魔術が使えず専門知識もない一般人であり、本来戦いに赴くはずのなかった人物です。しかし、突然の敵襲によりサーヴァントと契約することが出来る人間が主人公ただ一人になってしまったために、「人類最後の希望」として戦いに身を投じています。明るくポジティブな人柄ですが、命の危険を伴う旅を続け、苦しい思いやつらい別れも度々経験しており、背負わされた荷は決して軽いものではないでしょう。

 偶然巻き込まれてしまっただけの善人が、他者のために重責を担い苦しむ。それはおそらく、斎藤一の「誠」に反することでした。ゆえに彼はこう告げます。

「ホントにどうにも……、どうにもならなくなったら俺に言いな。どこでも連れて逃げてやるからよ。」

 潰れてしまう前に、助けを求めること。そうすれば、自分の全てでもって貴方を助けてみせる。激動の幕末を生き残り、人間死んだら負けと「生きること」にこだわる、彼らしい手の差し伸べ方です。本当に、泣きたくなるほど真摯で優しい人だと思います。
 シナリオ実装当初、あまりの想いの強さに彼の愛称がSNSでトレンド入りを果たしましたが、斎藤一の魅力がぎゅぎゅっと詰まった良いシナリオだと思っています。

 ちなみにこちら、ありがたいことに全編フルボイスとなっております。小粋なトークとちょっとしたからかい、回顧の念に真面目な話。絶妙に変化する石川さんの演技を存分に味わいながらお楽しみください。

深夜のラーメンと逃げ道。まさしく「罪の味」かもしれない


 FGOにおいて石川さんは、今回ご紹介したキャラクター・斎藤一のほかに、メインストーリー第二部で登場するデイビット・ゼム・ヴォイドというキャラクターも担当されています。プレイアブルキャラクターではありませんが、敵側の指揮者の一人として重要な立ち位置の人物となっています。残念ながら筆者は彼がメインで活躍する章まで到達出来ておらず、今回ご紹介することはかないませんでしたが、敵側キャラクターとドラマも魅力のゲームとなっておりますので、ぜひお楽しみいただければと思います。

デイビット。4章では仲間を心配して様子を見に来てくれる



 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。初登場シナリオやバトルモーション、戦闘ボイスに絆礼装など、まだまだ紹介し切れていない魅力がいっぱいですが、ぜひご自身の目で確かめてみてくださいね。
 またFGOは多種多様なキャラクターと、誰が好きでもアツくなれるシナリオが魅力のゲームです。新たな推しに出会いたい方、没入できるストーリーがお好きな方、そして、不器用で優しい斎藤一が気になってきたそこの貴方。

 はじめちゃんと一緒に、人類の未来を取り戻す旅、始めてみませんか?


(文章:みつ)

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