神戸旅と長所
校外学習で神戸の街に行った。
高校2年生が始まって間もないこの時期。
まだ新クラスにも、新しい友人にも馴染めていない。
わたしの高校は落ち着いていて、穏やかな校風だからか、比較的大人びていて豊かな心を持っている子が多い。
が、友達との会話、人間関係に少しぎこちなくピリピリとした感じを覚えてしまう4月のこの頃はどうしても友達の長所より短所に目がいってしまうことが多い。
それに精神疾患があり、学校に行けないことが多い私。自分自身を追い込めて、自分の短所ばかりを見つめていた。
新学年がはじまってばかり、仲も深まっていないこの時期に校外学習を行うことに対して、反発の声も多かったけれど、
わたしは1年間過ごす友達と自分の長所に気づけるいい機会になったと思う。
もちろん行きのバスではいつものクラスと同じく緊迫して張り詰めた雰囲気があったが、
いつもと違う私服で過ごし、食べ歩きをする。
色んな街を巡る。
ただしゃべる。
自分や友達の「スキ」について話す。
そんなことをしている間に少しずつお互いの距離が縮まった。
そして帰りのバス。
隣の席は苦手なあの子だった。
ユニークでいい子だということは知っていたのだが、ずっと他人の悪口か噂話をしているイメージがあり、どうもいけ好かなかった。
ただ、神戸から学校までの間、ふたりで、周りの友達と複数人で話していると、その子のピカリと光る新たな一面に気づくことが出来た。
この子はこんなに面白いのか。
毒舌だと思っていたけれど、周りのことみてるんだな。
噂ばっかりしてる情報屋だと思っていたけれど、ただただ人脈が広いだけなのか。
新しく見つけたその子の長所は宝石のようにきらきらと輝いて見えた。
その子の長所に見惚れているとき、
「まだ無いちゃんって、絶対否定しないよね」
「どんなことがあっても味方してくれるし肯定して認めてくれるし、、」
「いい子すぎて最初キャラ作ってるのかと思った」
「この優しさは誰にも真似出来ないよね」
こんなふうに言われてびっくりした。私にもいい所があるのか。
自分の長所を聞かれても答えられない私。
さすがに他人に褒められたことも一度はあるが、それは「優しい」とか「穏やか」とかただの形容詞を並べているだけで、こんな風に具体的に示されて、自分の胸にダイレクトに刺さる褒め言葉は初めてだ。
無意識にしていたことだからか、余計に胸が弾んだ。
ああ、こんなわたしの、底辺を生きるわたしのいい所を見つけられるような穏やかな心の持ち主たちと1年間を過ごせるなんてほんとうに楽しみだ。
私にとってこの神戸の旅は自分を見つめ直すきっかけになり、忘れなれないものになった。
みんな、1年間よろしくね。
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