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リアルJKのエッセイクラス〜書いた先には未来がある〜

 こんにちは。成女高校表現プログラムで、本年度からエッセイクラスを担当している西山千登勢です。エッセイクラスでは「自分の感じたこと、思ったことを、読者にわかりやすく書いて伝える」を基本に、高校2、3年生の生徒さんと一緒に学んでいます。

文章を書くとは

 ところで、皆さんは「文章の書き方」をどこかで習った、または教わった記憶はおありでしょうか?例えば小学校時代から、夏休みの宿題にいつもあった気がする読書感想文。どんなふうに書いたらいいのか、教えられた記憶はありますか?また書いた感想文について、後から誰かに「ここをこういうふうにしたらもっと良かったよ」などと具体的に教えられたことはありますか?ほとんどの方が「無いなあ」と思われているのではないでしょうか?

 実は日本の学校教育では、長い間「書く」ことにあまり重点が置かれていませんでした。ことばによる表現活動は、活発とは言えませんでした。その結果「文章で自分を表現することが苦手」という人がたくさんいます。

 でも大学生になればレポートや卒業論文で、自分の考えをわかりやすく伝えられる力が求められます。社会人になれば、企画書や提案書といったもので、お客様など外部の人を説得することもできるような表現力が求められます。このように文章で自分の考えを伝える力は、一生必要なものであり、自分自信の未来を築くための大きな力です。

 実は現生人類の祖先が地球上に登場したのは約20万年前とされています。そして最初に記号のようなものを書いたのは、約4万年前です。さらに実際に文字を使い、文章を書きだしたのはだいたい6,000年前からです。こうして人類の歴史を振り返ると、非情に長い間「話す」「聞く」が主で、「書く」「読む」を始めたのは、近頃のできごとだとわかります。しかも最初は特殊な職業の人たちだけが「書く」「読む」を行っており、一般の人が「書く」「読む」ができるようになったのは、ほんの近頃のことです。だから話すことは簡単だけれど、書くのは大変、と感じるのは「人類全体がやり慣れていないから」とも言えます。そのため「話せるけれど、書けない」「イメージはあるのにことばにできない」ということが起こりがちなのです。

対話しながら書く

 モヤモヤしたイメージや考えをことばにしていくのは大人でも難しいことです。この難しさの解決策の一つとして「対話」があります。対話、というと難しそうですが、そのイメージをことばにするために、相手から質問をされたり「それって、つまりこんなこと?」と聞かれて考える、ということです。「対話」をすると、自分の中にあった考えやイメージがだんだんはっきりとしてきて、ことばにしやすくなるのです。

 今、私は成女高校でこの「対話」を使いながら、生徒たちの頭にあるイメージや伝えたいことを文字にして表現する、という活動をしています。1学期は読み手を意識することから始めました。自分と全く同じ体験や考え方をしている人は、この世には誰もいない。だから少しずつ、仲良しの友達に話しかけるように、自分の感じたことを理解してもらえるように書くことから始めました。最初はぎこちなく、自分の感情をあまりいれていなかった文章が、1学期の終わりには、最も伝えたいシーンから書き出したり、感情豊かな表現を取り入れられるようになってきました。

 2学期からは、自分のしたことを「私はXXXをしました」ではなく「A子はXXXXをした」というように、あえて視点を変えて客観視して書くことに挑戦しています。その続きで現在は創作エッセイを書いています。それぞれが決めた語り手の視点から見た「桃太郎」です。1万字を超える超大作を書く生徒あり、独自の視点から鬼社会を書く生徒もあり。とてもユニークな作品が出来上がりつつあります。

書くことが好きになる

 全員が文章を書くのが好きで、授業中も集中して黙々と書いています。毎週のように宿題が出ても、根をあげずに提出してくれています。授業中にはそれぞれの生徒の元に行き、話しかけて、今、この作品を書くにあたって困っていることや、どんなことを書きたいかを聞きます。その後「対話」しながら、書き進められるようにそっとサポートをします。いつも大人しい生徒に「ここ、すっごく良い表現ね」と声をかけると、それだけで嬉しそうに笑ってくれる時、ああ、本当に書くことが好きなんだな、書いて表現したかったんだな、と気づき、うれしくなります。生徒一人ひとりが、文章で自分を表現することに自信がついてきた、と確かな成長を感じます。

 素直で、文章を書くことが好きで、教えたことをどんどん吸収して表現力を高めていく生徒たちに囲まれていると、文章で自分を表現するすばらしさに改めて感動します。これからも生徒達の感性と表現力を高めて、楽しみながら、分かりやすい文章で自分を表現できるようにサポートしていきたいと思っています。

西山千登勢:成女高校非常勤講師、早稲田対話式ライティング・コーチ®代表


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