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「奴隷ラムシル」連載化構想 その11 魂を売る

 「魂を売る」という言い方をしますと、悪魔のようなのが出てきて「お前の魂と引き換えに願いを叶えてやる」的なのを思い出します。実際に悪魔に会えるかというと、聖飢魔IIのコンサートだけでしょうが・・・あります?、悪魔に会う機会。

 相手が悪魔でなければ多くの人は、実はかなりカジュアルに魂を売っていたりすると考えます。えっ? 例えば仕事ですが、仕事でお給料もらっていると自然にその会社の考え方になりませんか? 私、ずっと昔にある大手自動車会社に就職した事があって、その会社では駐車場には自社の自動車しか停められないという規則になっていました。別に社員が全員買わなくても既に大手でしたから売り上げがガクンと減って経営が・・・という事も無いのですが、要は見た目の問題と、社員は全員愛社(車)精神があるというのを前提にしたかったわけです。愛社と愛車は全然違うと私は考えるのですけれどね。まあ、そんな事でその会社は1年で辞めました。皆同じように考える会社なんて面白くも何ともありません。

 さて、私はその後もいくつかの会社で仕事をしました。どこもその自動車会社と似た考えはあります。そこにきちんと当てはまらないと昇進できないとか給料が上がり難いとか不都合が実際の事としてあります。私が仕事を辞めてある工場でアルバイトしていた時にその不都合をまともに被っていた二人のおじさんに会いました。その人たちは仕事ができないとして嫌われていて、二人だけで隔離された職場にいました。おじさんたちは私に言いました。もっと効率良くやる事はできるけれど、それをやってしまうと人を減らされてしまう。だから頑張らないで欲しいと。ダラダラやって就業時間内でちょうど終わるようにやればそれで良いのだと言うわけです。逆に言うと、他の従業員たちは愛社精神を発揮して効率化に臨みますから一所懸命やって自分の仕事量を増やして給料は同じという安売り合戦をしていたのです。どっちが正しいやり方なのか、よくわかりません。

 というわけで、皆さんもきっと組織や会社には安く魂を売り渡していると想像します。そうでないと良いのですが・・・

 奴隷ラムシルの出てくるエリスという女性がいます。この人はオリジナル版ラムシルでは、私があまり書かないタイプのスーパーウーマンで、国のある組織で働いていますが使い捨てにされて裏切られます。ダニエル・クレイグの前のピアース・ブロスナンのジェームズ・ボンド(このボンドはスーパーマンでした)がMI6に裏切られて見捨てられる(映画では無いです)感じだと思ってください。そのエリスについて、オリジナル版では裏切られる意味が不明確だったのを明確にしようと考えました。それはエリスの立ち位置を明確にするのみでなく、主人公ラムシルとの対比を明確にする為です。

 エリスは魂を売らない存在として出てきますが、対してラムシルは無自覚な存在です。ラムシルはエリスに出会って自分がシステムの影響を受けていた事に気付きますが、エリスは自覚的です。エリスは元は研究者なのでシステムが進化してアフォーダンスを身につけた後、それに依存する人間のアフォーダンスのレベルが低下している事に気付いています。エリスの研究は人間をコントロールする手段として捉える国の組織に注目されて(当初のエリスはそれを知らない)エリスは援助を受けその組織で働きますが、組織の意図を知ります。魂を売らないエリスをある時、組織は捨てるのです。主人公ラムシルはそれをただ見ているしかありません。

 エリスは、要は、会社に馴染めないサラリーマンです。会社はその人がいかに優秀で有能な存在であっても魂を売らない者として簡単に切り捨てます。有能な社員であっても自社の車を買わない者は認められないのです。


 さて、これを書いている時点でラムシル連載版の書き換えは約半分です。未校正でです。文字数はオリジナル10万に対して19万。まだ先は長いです。いつ終わるのかわかりません。ネタばらしは随時していますのでお付き合いくださいませ。

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