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【小説】黒く塗れ(Break)
連載が半ばまで来ましたので今日は一旦休憩といたします。
前半はいかがでしたでしょうか? お話が少し重いように感じられたのではないかと考えます。そしてびっくりしてしまうような展開にも乏しいです。落ちこぼれサラリーマンの日常そのものです。ただ、主人公は落ちこぼれのまま何もしないのではありません。どうにかその状態を脱却しようと頑張ります。その涙ぐましい努力もイジメの前には無力ではありますが。後半に何が起こるか、想像しつつ楽しみにしていてください。
ところで、本作品のアイデアの基になったローリングストーンズの最新映像が入っています。2022年7月23日ですからまだ5日前のものです。多くのバンドや歌手の方は年月が経ちますと演奏や歌い方を変えて印象が変わる事が多いですが、ローリングストーンズはあまり変わらないですね。期待に応えてくれます。
この曲の歌詞と日本語訳はこちらです。
最初にこの歌詞の意味が難解だと言いました。ここでその特徴について少しだけ考えてみたいと思います。
愛する人の死を歌っているように感じられる歌詞ですが、その人は何故亡くなってしまったのでしょうか?
I could not forsee this thing happening to you
君にこんな事が起こるなんて思ってもみなかったよ
この部分から考えますと自然死や病死のようではなさそうです。突然亡くなってしまったと考えられます。そして冒頭の赤い扉はヒントになるでしょうか?
I see a red door and I want it painted black
1960年代と言いますとベトナム戦争、ヒッピー、学生運動が盛んな時期です。この時期には共産主義、社会主義も発展している最中で、自由、反権力といろいろな主張が覇権を争ったり混じり合ったりと混迷を極めていた時代です。パリの五月革命は1968年なのでこの曲の後になります。ですから、そうした背景から想像できるのは、学生運動のような活動の中で死んでしまった大切な人を想う歌詞なのかもしれません。(ミック・ジャガーは意味を明らかにしていないそうです。)
そう考えますと「赤い扉を黒く塗ってしまいたい」の意味は共産主義に反対する意味では無くて、人の命を軽視するような主義主張に対して、意味はあるのかと言っているように考えられます。
I see people turn their heads and quickly look away
Like a newborn baby it just happens ev'ryday
そして人が死んでも子供の用にすぐに忘れてしまう。そして同じ悲劇が毎日のように繰り返される。こんなのは世の中はおかしいだろうと言うのです。
I see the girls walk by dressed in their summer clothes
I have to turn my head until my darkness goes
そんな世の中なのに無邪気に夏用の服で着飾って女の子たちが歩いて行く。俺はそんなものから目を背けていなきゃならない。闇が消えてしまうまで。
興味深いのは「until my darkness goes」のところで、今の悪い状況が永遠に続くのではなくて、いつか明るい時代が来るだろうと見ているところです。闇の先に光があると確信しています。
If I look hard enough into the setting sun
My love will laugh with me before the morning comes
夕日をじっと見つめていたら、朝が来る前に愛しい君が笑顔を見せてくれるだろう。
「笑顔を見せてくれるだろう」は「笑顔を見せてくれただろう」のように仮定でない普通の未来形「will」なので心の中ではその人は亡くなっていないともとれます。
No colors anymore I want them to turn black
その上で、もう赤も他の色も何色も要らないと言います。そして最後には、
I wanna see your face, painted black
君も色なんか無くしてしまえば良いんだ、となります。もう止めようぜという意味でしょうか?
さて、ここでやっとお話の方へ戻ります。けれども、今ここでこの後のネタバラシをするわけにはいきません。そしてローリングストーンズの歌詞とお話が完全に対応しているのではありません。ですから、1つだけ書いて終わりにしたいと思います。
登場人物の思考の上での立場に注目して読んでみてください。
では、明日の(7/13)をお楽しみに。
お願い
よろしければこちらもぜひ覗いてみてください。Amazonで出版された作品には無料でお読みいただけるものもあります。小説以外に「バビロンの大富豪」(英語原本からの翻訳)もあります。
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