見出し画像

ロードレースで結果が出ない理由【後編】

ここのところ少し忙しかったため、間隔がだいぶ空いてしまいましたが、いよいよ後編を書いていきたいと思います!
ロードレースで結果が出ない理由【前編】
ロードレースで結果が出ない理由【中編】


サーキットレースを考える

前回はクリテリウムでの合わせ方を書きましたが、今回はもう少し高度な調整が必要になるサーキットコースでのレースを書いていきたいと思います。

ここはやはり日本が誇る国際的なコース、鈴鹿サーキットでのレースを例に考えていきたいと思います。

ちなみに、自己紹介のリザルトでも記載している通り、鈴鹿サーキットでのレースでは2019年にシマノ鈴鹿クラシックにて13位に入った経験もありますし、その数年前にも21位に入ったことがありますので、あまり感覚は外していない自信があります。

鈴鹿サーキット

鈴鹿サーキットコース図

鈴鹿サーキットのコースは、1周=5.807㎞で高低差は52mと言われています。F1で使われるコースをそのまま使いますが、ロードレースの場合は逆回りになることが特徴ですね。

では、シマノ鈴鹿クラシックを想定して、このコースの要点を抑えていきたいと思います。

①    1周のタイムは約7分20秒前後(Avg=45㎞/h前後)
※最終周回は約6分50秒前後(Avg=50㎞/h超え)
②    観客の多いホームストレート前は約2分程度の緩斜面の登り
※最後きつくなる
③    シケインを越えて西ストレートは下りながらでもペースが上がる
④    西ストレートを下った後の登り返しはペースが落ちない
⑤    最終コーナーへ向かっていく下りは約70㎞/hを超えるが踏まされる
⑥    最終周回はプロがトレインを組むので自力でポジションを上げられない

ザクっとですが、私がいつも考えるのはこの程度の感じです。全てに言及していくとまた終われませんので、大事なポイントをこの中で抽出してみます。集団に最後まで残るということをメインに考えていきますね。

重要なポイントが2点

②、⑤の要素が私としては鈴鹿サーキット攻略の上で一番大事なポイントだと思っていますので、その2点を中心に考えていきたいと思います。

②=約2分程度の緩斜面の登り⇒最後30秒くらい勾配がキツイ
こう書くとそんなにハードに思わないかも知れませんが、観客がいる前は集団のペースは必ず上がりますので、想像のかなり上をいくスピードになります。

また、⑤=70㎞/hを超えるスピードで踏み続けるという動きがありますので、ここでは高速回転かつ踏み続けるという作業が出てくる訳です。

この2点を踏まえた上で、1周回の流れを書いていきますと、以下の通りになります。

1周回の流れを考えてみる

まずはホームストレート。ここが、緩斜面の登りというところがポイントになります。平坦であれば集団の中にいればかなり楽ができるので全く問題ありませんが、緩斜面でペースが上がるとどこにいてもそれなりには必ず踏まされます。

最後に勾配がきつくなりそこでふるい落とし第1段階が行われた後、西ストレートの下りで更にペースが上がってここで中切れが起こる2段階式のふるい落としになります。

前はどんどん先頭交代をしながら超高速で登り返しに向かいますが、そこは皆ダンシングで一気に越えていき、その後はある程度その隊列のまま一列棒状でペースが落ちることなくコース最高地点のNIPPOコーナーへ向かいます。

そこでのポジション取りが後ろだと1コーナーへ向けて高速回転でどんどん踏んでいった後、再度ホームストレートのペースアップする緩斜面に入っていく流れになます。これを単純に10セット繰り返すというのがシマノ鈴鹿クラシックです。

重要なポイントを更に細かく考える

ここまで見て頂くとそれなりにハードなレースということが分かると思いますが、技術の未熟なアマチュアの選手で一番苦しむのが②と⑤の2点だと思っています。

まず②ですが、ホームストレート前の緩斜面の登りでだいたい42㎞/h前後で進んでいきますが、そこで一旦苦しいところまで持っていかれて、シケインに向けてのキツイ登りで一気に切りに掛かられます。

ですので、この2分くらいの緩斜面の登りで高いパワーを出しても千切れない程度のレベルまで能力を高めておくのは最低限必要になります。ここは合わせるとかではなく地力の話ですね。

その後、ほぼ休む時間を与えられないまま4分程集団から切れないようにしていると、1コーナーへ向けての高速回転が待っています。

回転練習を普段からしている方は、そんなの問題なくクリアできるよ!と思っておられると思いますが、高速回転で、かつ踏んでいくというのは意外と皆さん普段やられることが少ないと思います。

また、それをやった直後に緩斜面のホームストレートに移行していくので、この流れの繰り返しの中でほとんどのアマチュア選手が切れていくと考えています。

単純化して考える

これをもっと単純化して考えると、
①    4分間のミドル走(集団に付き続ける)
②    1分間の高出力高速回転(下りで千切れずポジション取りをする)
③    1分30秒間高出力(観客前ハイペースで切れない)
④    30秒間高トルク(ふるい落とされない)

これを10回繰り返す運動負荷がレースです。

こんなメニューをしてみよう

私なら事前にこういうメニューをするというのを以下に書きたいと思いますが、今回は、仲間数名に手伝ってもらう設定で考えます。

距離:約50㎞
速度:Avg=40㎞/h超え
コース:平坦路
基本的にはローテーションをしながらの集団走行

その中で以下の通りに動いていきます。
①    4分間普通にローテーション(適正回転数)
②    ローテーションはそのまま1分間回転数を120回転に
③    先頭固定で1分30秒を90回転
④    先頭固定で30秒をアウタートップ
×10セット=70分

これを2回程実践すれば、かなりレースに向けて身体はアジャストされると思います。

前回とは少し違うアプローチだったかと思いますが、大事なことはレースで起こることを事前に想定して、それに近い負荷を自分で体感してみるということです。

あまり良いトレーニングではない

また、勘違いしないで頂きたい点は、アジャストさせるためのトレーニングですので、実際のトレーニング効率はあまり良いトレーニングではありません。

少し話は逸れますが、高地トレーニングという低酸素の高地でトレーニングをして、呼吸器系の能力を高めるトレーニングがあることは皆さんもご存知だと思います。

それであれば、ずっと高地でトレーニングをしてレースの時だけ下りてくれば良いんじゃないか?と考えられる方もいらっしゃるでしょう。

なぜそれをしないか?ですが、高地であれば酸素の摂取が制限されますので、確かに呼吸器は強くなりますが、一方で酸素供給が乏しい状況では高レベルのトレーニング負荷を掛けることができません。

そのため、酸素のある低地と比べると筋力が低下してしまうというデメリットが存在する訳です。それと、この『地力を鍛える』『レースにアジャストする』という関係は似ています。

レースのためにアジャストするトレーニングをする体力を使うのであれば、もっと強くなるトレーニングはいくらでもあると思います。そのため、狙ったレース以外では私はあまりこの手法は取りません。

インターハイでトップ10に入る息子でも、近畿予選等では実は10位に入ることが少ないという理由は、上記のようなことが原因だと思っています。
※合わせなくても本戦の権利を獲るだけでなく、勝負して欲しいとは思っていましたが・・・。

まとめ

ということで、全3回で書いてきましたこのシリーズですが、いかがだったでしょうか?選手としての能力を高めたら必ず勝てる!と信じて疑わない方が多い中、かなり変則的な考え方だったと思います。

プロの選手とレースを走った時に、あれ?思ってたよりも強くない?と思ったこともあるかと思います。

一方で、本当に彼等が仕上げてくる全日本選手権や、ツールド沖縄のチャンピオンクラスにアマチュアが挑戦しても全然敵わないのは、仕上げる場面ではこのようなこともしているからに他ならないと思っています。

アマチュアの選手でも、このレースだけは絶対に結果出したい!と思っているレースがあるのであれば、一度今回のような考え方も取り入れて頂けると、少し違う結果が出るかも知れません。

今回のシリーズが良かったと思って頂ける方は【スキ】ボタンを押して頂けますと、また次を書く力になりますので、どうぞよろしくお願い致します。本日も、ありがとうございました<(_ _)>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?