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秋の夜長に呟くこと。

 静かな夜に大きな音が鳴ると、耳の奥がぶわっと広がるような感覚に続いて鼓動が走り恐怖の感情が思考を黒く溶かして、鮮烈な光景を瞼に映して過去が現在に蘇ることがある。

 繰り返す恐怖の追体験は過剰な防衛本能を掻き立てては神経を擦り減らし、猜疑心と共に私を小さく小さく縮こめて、部屋の片隅に張り付ける。

 これはフラッシュバックと呼ばれるもので、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder: PTSD)とか複雑性PTSDなどと呼ばれる状態に付き纏う現象だ。

 悪夢に恐怖して絶叫しながら起きるようになったのは小学生の頃で、酷い時には毎日のように悪夢に苦しみ、そうでなくとも月に1回か2回ほど、夜中の絶叫で親を困らせた。

 記憶を切り離して生活に支障がなくなってからも、無意識は連続しているようで、夢に浮き上がる恐怖の追体験は、成人する頃まで悩みの種だった。

 克服というには道半ばだが、色々なことにどうにか折り合いをつけて自分の人生を歩けるようになったのは、つい最近のことのように思う。


 もし、一生このままの状態かと何かに見切りをつけそうになっている人がいたら、『だよな。』って言って、隣に座りたい。

 止めないのかよ、とか言われたら、その返しは相手によって色々考えられるけれど、多分止めない。幾つか言葉を交わす事ができればいい。善悪も生死も瑣末なことだから、そんな建前よりもずっと深いところを彷徨っていたいのかもしれない。

 ただ、まだ捨てたもんじゃあないかもしれないって実例をひとつ、自分の身を切り裂きながら示すことができたら、その人は少しだけ未来の自分を見ているような気分になって、そのときの心が一瞬でも軽くなるんじゃあないかって、そんな幻想を抱く夜があるんだ。

 それが、今。

 だからきっとこの文章は、何処かの誰かに届く。

 それは貴方のことかもしれないし、別の誰かなのかもしれない。


 ただ、祈りを。貴方に。




 拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、ゼロとイチの間が赦される世の中でありますように。



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