のらりくらり雑記
若者の出世欲が乏しいと云われる。
もっと消費しろとか早く結婚しろとか子どもを産めとか偉い人たちは好き勝手な事を言うが、多くの若者には消費するカネもなければ結婚する相手も居ない。相手が居ても結婚して子どものいる生活が出来るような経済的余裕など乏しい。
マイナス成長な日本社会では、真面目に頑張れば報われるような時代はとうの昔に終わっている。
政府の少子化対策は的外れな子育て政策や不妊症治療への助成がせいぜいで、より根深い問題である未婚化・晩婚化から目を背けている。
管理職になりたくないと考える人が増えている。平成三十年に厚生労働省の主導で実施された『労働経済の分析』によると、非管理職の61.1%が「管理職に昇進したいと思わない」と回答した。
柘殖大学政経学部の佐藤一麿教授は、慶應義塾大学の『日本家計パネル調査』なるデータベースを分析した結果、以下の結論を述べている。
同書ではプリンストン大学のダニエル・カートマン名誉教授の研究論文を引用して、年収と幸福度に関する警鐘を鳴らす。
則ち、「幸福度の上昇は約1000万円の年収で頭打ちとなる」という2010年の自身の報告に反駁し、新たな研究成果として「年収が高いほど幸福度も高くなる」と結論付けた。
血も涙もない。現実は非情である。
出典を忘れたが、幸福度に関しては「子どもを産むと幸福度が下がる」という研究報告も読んだことがある。興味深いことに、母系の祖母の幸福度も下がるそうだ。現代日本で子育てが如何に大きな負担となっているかを浮き彫りにする研究と思う。
これでは冒頭のような若者が増えることも自然の摂理のように見える。
しかしながら、ここで気をつけねばならないことがある。それは統計は統計に過ぎず、データ解析の方法によって恣意的な結果を導くことが可能だという点であろう。然るに、有意差があってもそれが現実に適応できる真理とは限らない。
先の例で考えると、そもそも幸福とは何か、という命題が曖昧なまま未解決である以上、意味のないデータのような気もする。されどもノーベル賞の受賞者の研究論文となると、何故か説得力があるから権威の世界はよく分からない。
国家の舵取りが困難を極める情勢であることは自明だが、結局のところ私たちにできるのは手の届く範囲の幸せを守ることだろう。
例えば今日の夕飯を美味しく食べることが出来たら、私にとって至上の幸福だ。それを誰かと共有できたら、この人生には意味があると思う。
ー了ー
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