数字は順位を生むけれど、大切なことは数値化できない。
数字をつけると順位が生まれます。
そう教えてくれたのは高校の数学教師でした。先生は数学を専門にしながら数学者らしからぬ文学的な人で、授業中には数学以外のことをたくさん教えてくれました。
点数も長さも時間も、数字を振ると明確な順位が生まれます。もちろん同時に走る競争のように数字をふらずとも順位が生まれる場合もありますが、それは時空が一致していなければ比較評価することが難しいもので、やはり例外的なケースと考えた方がよいでしょう。
大切なことは何でしょう。
言葉にするだけで「そのもの」の情報は相当抜け落ちるものですが、さらに数字に変換したら原型を留めないほど単純化されるのは明白です。
感情や痛覚、心模様。幸せとか不幸せとか、人間関係とか自然のこと。はたして数値に変換できるでしょうか。それを一番とか二番とか、順位をつけることは。
世界各国の幸福度ランキング、なんて馬鹿げたモノが実しやかに発表される世界では幸せなど程遠いだろうと思います。アレは世論調査で求められる数値の比較であって、質問はシンプルに人生を最高10点から最低0点で回答するアンケート結果に過ぎません。標本数を大きくして信頼性を担保しているのかもしれませんが、そもそも複雑怪奇な人生を0から10の数字に変換することに、どれほどの意味があるのでしょう。
大切なことは数値化できない。
対偶をとると、簡単に数値化できる事柄はそれほど大切ではないということです。もしもそれが本当に大切なことだと言うならば、きっと数値化の仕方に誤りがあるのでしょう。
貴方の大切なことは何でしょう。
それは数値化できるものですか。
簡単に数値化できるとしたら、ひょっとして、そんなに大切なことではないのかもしれません。数値化の方法が間違っていたり、ほかにもっと大切なことがあるのに見落としていたり。
どうしても数値化できなかったら、本当に大切なものなのかもしれません。とても素敵なことです。
拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、貴方の大切なものが守られる社会でありますように。
ご支援いただいたものは全て人の幸せに還元いたします。