見出し画像

“価値ってどういう意味?”

 何処で覚えてきたのか、息子が不意に私に訊ねました。

 価値。

 さて、4歳児に「価値」を説明するには、どのような対話を展開するのが良いでしょうか。私は「大人になれば分かる」という文言は使いたくないのです。答えを与えずとも考察のヒントになるような対話が、親子間にも持たれるべきだと思います。

 人によって「価値」の考え方は違うと思うけど、と前置きしてから、

「どれくらい大切なものと感じるか」
「どれくらい珍しいか」

 この2つの要素が価値を決めると思うんだ、と伝えました。大切に思うことが価値の本質ですが、それだけでは社会の仕組みを説明できません。珍しさとは希少性と市場原理です。

「えー!じゃあ僕のおもちゃは価値がないの!?」

 そう切り返す息子に対して、イヤそういうわけじゃ…なくもないか、と思い直します。

「あまり多過ぎると、ひとつひとつのおもちゃの価値が下がるかもしれないよ。例えば、100均で買ったおもちゃのピストル、覚えてる?」

「あの、吸盤を打つやつ?」

「そう。」

「覚えてるよ!」

「じゃあ、それが今どこにあるか分かる?」

「ううん…わかんない。」

「そういうことさ。もし、おもちゃがピストルひとつしかなかったら、どこにあるか覚えてるだろうし、毎日それで遊ぶかもしれない。それは価値が高いってことだと思うよ。」

「そっかー。ガクッ。」

「価値を高めたかったら、おもちゃを大切にするといい。『大切さ』と『珍しさ』が価値を決めるって言ったろう?たくさんあるものでも、大切に思う気持ちが強かったら、それは価値のあるものだと思うんだ。」


 息子は何かを理解したようにパッと明るい顔になって、ぼくおもちゃを大切にするよ!と元気に応えてくれました。


「それから、これはすごく大事なことなんだけど、
 君は世界に一人しかいないし、
 パパは君のことをすごく大切に思ってるから、
 君はとってもとーっても、価値が高いんだよ。」


 息子は得意そうに胸を張って微笑みました。


 思えば子どもの頃、そこかしこに価値が溢れていました。

 自分の外側にある何かが価値を決めるようになったのは、いつからでしょうか。

 市場原理と資本主義の支配する現代社会では、値段のつかないものの価値が曖昧です。或いは元来値札など付かなかったはずの物事に与えられる数字は、心の眼を曇らせて真実を閉ざします。

 社会生活において先立つ物は必要ですが、物質だけを追い求めた先に幸せは在りません。

 自分の大切なものを大切だと言えるとき、それが何ものにも侵害されず護られるとき、人は幸せを感じるのかもしれません。


「価値ってどういう意味?」


 貴方は何を考え、どこに向かうでしょうか。



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、すべての命の輝きを。




#子どもの成長記録 #価値ってどういう意味
#お金について考える #考えるほど分からなくなる
#エッセイ #価値 #四歳児

この記事が参加している募集

#子どもの成長記録

31,404件

#お金について考える

37,454件

ご支援いただいたものは全て人の幸せに還元いたします。