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肯定的朝令暮改のススメ 【実践心理学】

 ある友人の所属する医局の教授は超人的能力を持ちながら、しかし自己愛性人格障害があるようで、自分の非を認めないそうです。カンファレンスで自分の言った内容を1週間後にはすっかりなかったことのように、逆のことを主張して部下を叱り飛ばす様は唖然として感情を失うと聞きました。

 言うことがコロコロ変わる人は信用なりません。そういう人が身近にいるとストレスフルな日常になりますし、職場の上司にいるのは悲劇です。

 朝令暮改。

 命令や政令が直ぐに変更されて定まらないことを示す言葉です。確認できる出典は『漢書』の24巻内の記述で、鼂錯ちょうそが文帝に奏上した文章の中にみられます。

勤苦如此 尚復被水旱之災
急政暴賦 賦斂不時 朝令而暮改

『漢書』24巻より引用

 超訳すると「農民は生活ヤバいのに税はヤバいし政策はコロコロ変わるしコレマジでヤベーよ!」という意味です。「朝令暮改」は、否定的で批判的なニュアンスを伴って使われるのが通常です。

 一度言ったことに責任を持て!

 男に二言はないのだろう!

 そんな言葉が心の中に湧き起こりますが、さて、朝令暮改に良いところはありませんでしょうか。
 もし朝に打ち出した命令が、昼間の劇的な状況変化によって夕方には全く見当違いなものになっていたら。それでも朝の命令を変更しないことは、果たして最善の選択といえるかどうか。

 朝令暮改と臨機応変は紙一重です。

 当然コロコロ変わって定まらなければ信用を失い全てが瓦解しますが、誤りと分かっても改訂せずに突っ走ることの方が危険な場合もあります。


 認知的不協和に基づく心理的拘泥現象です。

 一度決定したことは、それが間違いであっても覆しにくい心理が働くことが実証されていて、これを心理的拘泥現象といいます。認知的不協和の部分は説明が煩雑になりがちですが、平たくいうと「矛盾した認知を同時に抱えてつらい感じ」です。心理学領域でいわれる認知とは「知覚・判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解」のことで、さぁ訳の分からない感じになってきましたね。言葉を整理しましょう。

 認知とは「貴方のみている世界」です。

 認知的不協和とは「矛盾して気持ち悪いこと」です。

 これを基盤に心理的拘泥現象が発現して「一度決めたことが訂正できない」状況に至ります。

 すると、朝令暮改な人は心理的拘泥現象をどうにかして打ち消している可能性があります。暮改して正しいものに辿り着けば良し。自分の否を認めて改めるならば、それは早い方がいいものです。

 朝令暮改朝改昼変暮改…のように続くと「いいかげんにしろ!」となりますが、ヒトは過ちを犯すものですから、一度くらいなら改めるチャンスはあって然るべきでしょう。それくらいの心構えの方が、自分にも他人にも優しい気持ちでいられるように思います。


 話が散らかってまいりましたので、このあたりで締めさせていただきます。


間違えたら改めればいいじゃない。

にんげんだもの。



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、過ちを認めて謝罪と訂正のできる心と、それを許容し合える寛容な社会を。




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