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祈り 《詩》

「祈り」

僕等は今も祈りながら生きている

運に見放されたと嘆いていた

道の中場で 何もかも失い


金になる物ならなんでも売り捌いた
カメラもギターも画材すらも

好きだった写真も音楽も絵も諦めなくてはならなかった

辛かった 

僕には本当に何も無くなってしまった


特別なものなんて何も無い

ただの群衆の中のひとりだった

働いて稼いだ金を家に持ち帰り
また働きに出た 

来る日も来る日も

生きて行くだけで必死だった 

笑い方も忘れてしまった


それでも彼女は僕の傍にいてくれた

彼女もまた闘っていた
見えない敵と

日々迫り来る病気と必死で

僕は彼女を死なせたくなかった 
どんな事をしても絶対に


増えていく薬 誤魔化す意識 

僕に出来る事なんて何も無かった


彼女は
僕の手を握りしめて祈ってくれた

僕の幸せを 僕だけの幸せを


きっと上手く行く

私が傍に居る それで十分でしょ
そう言って微笑んでくれた


僕は祈った 

彼女を抱きしめて
彼女の幸せだけを願って


祈りの言葉を紙に書いた

それがひとつの詩になった

下手くそな詩だけど
書くしかなかった

僕には他に何をすれば良いのか 
わからなかった


僕は詩を書き続けた

願い事の様に
祈りながら書き続けた

毎日毎日書き続けた


僕等は今も祈りながら生きている


誓うよ きっと上手く行く

僕は微笑み方を思い出した 

ずっとずっと
彼女の手を握りしめていた

Photo : Seiji Arita

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