僕らの旅路16
綾と二人で図書館で本を読んでいた。気候が涼しくなってきて、よく晴れた日だった。こんな日はいい。実にのんびりとした気分になれるし、読書も捗る。今日は愛衣先生も来ないし、二人でどこかで食事して帰ろうということになっていた。僕は賢治の研究書を読んでいた。賢治と友人の保坂について書かれた本。賢治には友人がいた。賢治は保坂にも法華経を信仰しようと手紙で誘うが、結局二人は決裂してしまう。どこまでも二人で一緒には行けなかった。僕と綾はどうだろうか?僕らが別れてしまうことも、この残酷な世界ではありうるのだろうか?
「どうしたの、空?」
気づくと、綾が不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「ねえ、綾。こんな時間がいつまでも続くといいね」
綾は最初きょとんとした顔だったが笑顔になって、
「うん。そうだね」
と言ってくれた。
図書館からの帰り、デパートのレストランで食事をすることにした。正面に座っている綾を眺めていると、何だか親子になったような気さえする。綾はお子様ランチを頬張っていた。僕は親子丼を食べている。最近僕らの関係についてよく考える。このまま綾が成長していった時、それでも親子のようだと思えるのだろうか?ひょっとして、恋人のようななっているかもしれない。僕は今のところ綾を異性とは見ていない。だけど、もっと大きくなったら気持ちも変わってくるかもしれない。僕らは二人でどこまでも行こうと誓った。僕と綾はどうなるんだろうな、これから。
「どうしたの、空?」
不思議そうな顔で綾が僕の顔を見ていた。
「いや、平和だなって思ってさ」
「ふふ、変なの」
デパートからの帰り道、綾と手をつないで帰路についていた。
「ねえ、空。空は旅をしたいの?」
「どうしたの突然?」
「最初そう言ったじゃない。色んなところへ行って色んな景色を見ようって。この街に来てからもう結構時間経ってるからさ。どうなのかなって?」
「そうだな・・・」
正直綾と色んなところを旅をしたいとは思っている。だけど、一旦落ち着いたこの生活を離れがたいのも確かだ。愛衣先生もいる。
「綾はどうなの?色んな所を旅して、結構大変な事もあると思うけど、大丈夫かい?」
「私は空と一緒なら大丈夫よ」
綾は何かを決意したような表情でそう言った。そうか、綾がそういうなら。
「じゃ、旅してみようか。この地を離れて」
「うん。そうしよう」
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