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僕らの旅路18

僕と綾って端から見たら何に見えるんだろう?やっぱり兄妹かな?

出発してから何時間か運転して疲れてきたので、少しパーキングエリアで休憩していた。綾はトイレに行っている。

売店で買ったサンドイッチを頬張りながら、スマホで現在地を調べる。マップで改めて見てみると、随分と遠くへ来たもんだ。出発したあの街から2時間か3時間程は走っていた。目的地まで後一時間という所だ。

「なんか眠い」

戻ってきた綾が目をこすりながらそう言った。

「昨日あまり寝れなかったの?」

「まあ、ちょっとね」

綾はちょっと恥ずかしそうにそう言った。多分、楽しみで寝付けなかったのだろう。僕も行き先には期待している。先を急ぐとしよう。

それから少しして綾は眠ってしまった。このペースだと、あらかじめ契約しておいたウィークリーマンションまで一時間もかからない。寝かせておいてやろう。それにしてももっと都会なのかと思っていたが、案外のどかなものだ。道も広いし、公園も多く見られる。僕としてはひそかに山に期待していた。綾にも山登りを教えてやろうかと思う。これからの毎日が楽しみだ。

もうそろそろ着くという頃になって、綾は目を覚ました。

「・・・どこ、ここ?」

「既に長野だね。後少しでマンションだ」

「ふうん」

興味深げにキョロキョロと辺りを見回す綾を僕は見守っていた。彼女の目にはどう映っているだろう?

「着いたら、荷物置いて、散策しようか」

「うん」

それから30分程してようやくたどり着いた。外観は普通のマンションだった。鍵を空けて中に入る。・・・うん、中も事前情報の通りのマンションだった。幾つか部屋があって、前に借りていた所と大差ない。

「空、早く行こう?」

「ああ、ちょっと待って」

一通り荷物を置いて、僕らは出かけた。ようやく着いたんだし、マンションの中にいてはもったいないからな。

歩いてみた感想は、適度に都会で適度にのどかだった。向こうでも見かけたチェーン店なんかも普通にある。その点、ところどころに公園があったりして、緑も多い。僕らはその内の一つの公園で休憩していた。

「明日からしばらく観光しよう。温泉とかもあるみたいだよ」

綾はスマホで色々調べて僕に情報をくれる。

「いいね。色々行ってみよう」

その日はスーパーで食材を買って帰った。僕はブログで長野に来た事を報告した。反応はそこそこ良かった。明日から長野観光の記事を載せることになるだろうなと思いながら、眠りについた。

長いトンネルを抜ける夢を見た。僕は必死に這いながら進んでいた。なぜか足が動かないようだった。それでも僕は出口を求めて進む。辺りを見回しても誰もいない。僕は一人なのだろうか。

ハッとして目が覚めた。何だか足が重たい。何だろうと思って見ると、綾が抱きついていた。それであんな夢を見たのだな。多分新しい場所へ越して来たから、綾も一人で眠れなかったのだろう。

「さて、朝食を作るか」

エビピラフとサラダを作ることにした。フライパンでエビを炒めていると、綾が眠そうにしながら起きてきた。

「おはよう」

「うん」

綾はそのままソファに突っ伏していた。うちのお姫さまは環境の変化に敏感なようで、しばらくソファで静かになって動かなかった。

「ごはん出来たよー」

綾はしばらく動かなかったが、やがて起きてきた。

「眠い」

「食べたら目が覚めるよ」

「そだね」

僕は食べながらスマホで情報を調べていた。本当に色んな公園があるんだなと思った。そこから一つ展望台から景色を見下ろせる公園があった。

「今日、ここに行ってみないか?」

「どれ?」

綾はスマホで僕の開いたページを見ていた。

「ふうん・・・」

「景色いいみたいだからさ。他に行きたいところある?」

「分かった。ここにしよう」

昨日着いたところだから、まだ十分に部屋に荷物を並べられていない。だから午前中は荷物を整理することにした。僕は主に本を本棚に並べるので、時間を費やしていた。1時間程経って、部屋がそれなりになった。疲れたので少し休む。音が聞こえないが、綾は何をしてるんだろう?

「綾?」

部屋を見ると、綾は服を一枚一枚丁寧に畳んでしまっていた。見ると本棚もパソコンも既に設置完了しているようだ。さすがだな。

「僕の方、あらかた出来たからさ。何か手伝うことない?」

綾は首を捻って、

「特にないよ。お昼ご飯の支度とかかな?」

「分かった」

買って置いた食材をもとに僕は料理を作ることにした。綾はまだまだ成長盛りなので、食事にも気を遣う。野菜とタンパク質が摂れるように、季節の野菜と鶏肉のスープにした。それとサラダ。綾はサラダが好きでよく食べる。特にトマトが好きで、入っていないと不機嫌になることがある。

1時間程で昼食が完成した。二人でスープを食べる。今日の夕飯は長野の名物料理でも食べようと思っていた。そばとかリンゴが美味しいと聞く。

「綾ってそば食べれる?」

「うん。結構好きだよ」

長野のアップルパイも食べてみたいなあと思いながら、僕らは出発の支度をととのえることにした。

そして僕らは松本市のとある公園へとやってきていた。この公園は展望台の他にも、動物を飼育しているらしくて、動物と触れ合える場所があるようだ。綾にとっては素晴らしい場所だろう。動物と触れ合うって子供の頃は大切だな、と思いながら、綾が楽しみにしていたらしい、動物広場へとやってきた。ニホンザルとか鹿とかの他にも数多くの小動物が飼われているらしい。入ってすぐ、動物園のような独特の匂いに迎えられた。ここではヤギにさわれるらしい。ヤギは時折メエッーと鳴きながら歩いていた。綾は恐る恐る近づいてヤギの背中を撫でていた。ヤギは綾の服の匂いを嗅いでいた。まさしく動物との触れ合いだなと僕はその光景を見ていた。綾が楽しそうにしている、それが一番大事な事だ。




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