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自己陶酔的フレンチ・ディスコの紹介 ―Jean Schultheis, « Confidence pour confidence »

80年代の大ヒット曲、« Confidence pour confidence»です。

何度も繰り返されるフレーズは、

C'est moi que j'aime à travers vous
(俺が愛するのはあなたの瞳にうつった俺自身なのさ)

これがこの歌のカナメです。
結局、誰だって、自分がいちばん可愛いんでしょ、エゴイズムこそが人間の真理なのでしょ、と。

しかしそんな「真理」を自覚してしまった人間とはどういう人間なのか。
自己中心的なナルシストです。
歌の主人公の言葉を、思い出すままにあげるなら…、

Je me fous, Fous de vous
(俺はあなたのことなど、どうでもいいんだよ)

Mais aimez-moi à genoux
(ひざまずいて俺を愛しな)
 
Dites-vous que sans moi vous n'êtes rien du tout
(わかっているかい、俺がいなければ、あなたなんかゼロの存在なんだ)

Moi je vous veux pour moi et pas pour vous
(俺は俺のためにあなたを欲しているのであって、あなたのためではない)

でも「ひどーーい」の一言で、この歌の主人公を全否定できますか。
ある意味、彼は超正直者です。
あなたは、あなたの愛する人を、ほんとうにその人のためだけに愛していますか。
少なくとも部分的には、あなた自身のために、そのひとを愛しているのではありませんか。
その部分を拡大鏡で見て、ひとつの歌にまで仕上げたのが、この曲だと言えます。


それと、話はかわりますが、詩の音が楽しいのもこの歌の特徴です。
ある節の最後の音を、次の節の冒頭で繰り返しているのです。
例えば…
シ・ヴー・ヴー・カレスレステ・パ
Si vous voulez 
Les caresses 
Restez pas 
Pas chez moi,
Moi j'aime sans 
Sentiment

(あなたが愛撫を望むのなら、俺の家から出て行ってくれ。俺は感情的になることなく愛するんだ)

なにはともあれ、楽しくて、奥が深い名曲です。
是非、ご試聴ください。


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