短編小説「新世界」
ふと目が覚めた。
雲の上。
空から地上を見下ろしている。
初めての感覚だ。
「目が覚めたね」
声が聞こえた方を向くと、1人の男がこちらを見ている。
上下黒のスーツに黒のネクタイ、白のワイシャツ。
「あなたは?」
頭に浮かんだ疑問をそのまま声に出す。
「僕かい。僕は夢の世界の案内人さ」
彼はにこやかに答える。
そうか。
僕は今、夢の中にいるのか。
彼に着いて、僕は夢の世界を渡り歩いた。
率直な感想を述べるなら「この世界は美しい」。
流石夢の世界というべきか。
怒っている人も、悲しみに暮れている人、疲れ切っている表情をしている人すらいない。
ただただ幸せな世界。
それに比べて、雲の下に広がる世界はなんと醜いのだろうか。
一時の感情を名前も知らない人間にぶつける人、他人の日常を暴力で壊す人、大事な家族の避けることの出来ない、悲しい未来を知り絶望する人。
それが世界の全てではないのだろう。
しかし、そう思える人間はその当事者ですらない。
そして同時に、自分が思いもしないうちに当事者になるのが運命というものなのか。
もし、この夢の世界が僕の生きる世界だとしたら、何があればいいか。
大事な家族、仲の良い友人、好きな音楽、好きな食べ物・・・・・・。
挙げようと思えば、僕のこの腕に抱えきれないほど思い浮かぶ。
「さあ、もうすぐだよ」
そう言って男は目の前の扉を開けた。
目を疑った。
そこには僕の家族がいた。
父さん、母さん、それに妹も。
みんなも僕の顔を見て驚いていたけど、すぐに笑顔に戻った。
「疲れたでしょう。何か食べる?」
そう言った母の目から、涙が流れ始めた。
大袈裟だな。
「何がある?」
優しい夢が始まった。
また1つ、僕の仕事を終えた。
まだ慣れない。
堪えきれず、途中で涙が出そうになる。
ここには色んな人が来る。
子どもからお年寄りまで。
ただ、終わりじゃない。
これは新しい人生の始まりだ。
「次のニュースです。昨夜、〇〇県〇△市の国道で、走行中の乗用車が信号を無視したトラックに追突される事故がありました。この事故で、乗用車に乗っていた◇◇さん、▽▽さん、△▽さんの3名の死亡が確認されました。また、同じ乗用車に乗っていた△△さんは意識不明の重体で近くの病院に搬送され治療を受けていましたが、間も無く息を引き取ったとのことです。トラックを運転していた〇◇さんは・・・・・・」
原案:新世界
1st Full Album「己の影を歌う者」収録
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