見出し画像

マスク生活で、日常の匂いの素晴らしさに改めて気づいた話

最近、急に暑くなった。

私が住んでる地域では、梅雨は一体どこへいった?今年はちゃんと来てくれるの?と心配するほどだ。

そして暑くなると、問題はマスク。つけるのがしんどいな…と感じるほどになってきた。

暑い中のマスクは、正直いやである。そんな中、マスクをしていて、少しだけ良かったな……と感じたことがあったので、今日はそれを書いてみたいなと思う。

コロナ禍で変わったこと。

色々あるけど、匂いを感じにくくなったのも大きいなと思う。マスクをしてると、道を歩いていても、ふと漂ってくる香りを味わうことが出来ない。以前は、春になれば梅の花の香りがほのかに漂ってくるのが楽しみだったし、夕食時には、どこかの家から揚げ物の匂いがしたものだ。木や草が多い場所を歩けば、独特の清々しい香りが漂ってくる。でも、今はそれを味わうことが出来ない。

だから私は、人気のない道で、そっとマスクをずらすのが楽しみだ。マスクを少しずらして匂いを嗅ぐと、いつもは遮断されていたその香りの鮮やかさに驚く。

マスク生活が長引くなかで「匂いのない世界」にいつの間にか慣れてしまったからかもしれない。

*◇*

そうそう、今の季節って梅の香りがしていたよね。

雨の日の香りって、こんなだったなぁ……。

そういえばこの辺りは、いつも、夕方、中華料理の香りがしてきていた。一体どこの家から?

などなどを味わえて、大変楽しい。

道端で花をみつければ、思わず花弁に鼻を近づけて、くんくんと嗅ぐ。外の匂いが恋しい。キミは犬なのかい?という勢いで、匂いが恋しい。世界の匂いを嗅ぎつくしたいと思ってしまう。

鼻が前より利くようになったみたいだ。マスク生活のおかげで日常の香りの鮮やかさに改めて気づくことが出来た。

人気のないところでマスクをずらし、今日も香りを嗅いでいる。

◇**◇

そういえば、変わったことといえば、初対面がオンラインでという人も増えた。そこで気づいたのが、リアルで出会っていたときより、オンラインで出会う場合は、印象に残りにくいなぁということ。1対1とか、数人でオンラインでやりとりした場合は、そこまで違いは感じない。でも、もう少し人数が増えると、一人ひとりの印象が薄くなりがちで、再びオンライン上で出会った時に、名前と顔が一致しなくなることが多い。

対面であれば、その方のもつ香りとか、身長とか、伝わってくる雰囲気、声のトーンを一気に味わえる。五感+αの情報を受けとるので、印象に残りやすいのだろう。

今は、人と対面で出会ったとしても必ずマスクをしている。

そのせいで匂いの手がかりがなくなってしまったのは、ちょっぴり寂しいなとも思うのだ。

◇*◇*◇

社会人になりたての頃、私は髪を長くしていたのだけど、いつもゴムで一つにしばっている事が多かった。それを友人の前で、ほどいたことがあったらしい。

その時、シャンプーがふわっと香ったというので、その友達が短歌を書いて、私に見せてくれたことがあった。人が歌を詠むほどに、自分がシャンプーの香りを漂わせていたことを初めて知り、なんだか気恥ずかしい気持ちにもなった。でも、少しだけ嬉しくもあったのだ。

今は、瑛人の「香水」みたいなことも、起こらなくなってしまってるのかしら?と思うと寂しくなる。

匂いがない世界の良かったことをシェアしたいとおもっていたけど、思いがけず寂しい…という意見に傾いてしまった。いやいや、たしかに寂しいことではあるのだけど、人気のないところでマスクをずらす楽しみを私は覚えたのだ。

匂いがあるって、やっぱり素晴らしいことだと思う。

その事に気づけたのは良かったことだろう。

◇◇◇

そして、もう一つ、匂いと同じように変わったこと。それは顔が見えないコミュニケーションが増えたことだ。

私も、インタビューや打ち合わせ以外は、基本、文字だけのコミュニケーションで仕事をしている。

編集を担当しているライターさんのお顔も実は拝見したことがない場合が多い。もしかしたらだけど、顔をみないことで、より編集がうまくいくこともあるんじゃないだろうか。純粋に先入観なく、その方の内面を深く見ようとしたり、伝えたいことをうまく見つけ出すことができるかもしれない。今の所、お顔を拝見しなくても問題なく編集が出来ているのは、少し不思議でもある。

◇*◇

顔をみないコミュニケーションの場合、私はその方のことを、あれこれ想像するのが好きだ。

メールでのやりとりから「色白」であるという情報を得たら、その方の似顔絵イラストに色白な様子を組み合わせて想像してみる。メールではこんな文体だから、きっとこんな性格なのでは。こんな雰囲気なのでは?と想像するのも悪くない。

昔の文通みたいで、情緒があっていいのかもしれない。

そして実際にお会いできた時が来たならば、密かに妄想の答え合わせする楽しみがある。それに、ずっとお会いしたかったという感動もひとしおに違いない。

***

匂いも思う存分に味わえず、簡単に人に会うことも出来ないのは残念だ。

でも、もう少し辛抱して、この束の間の、この世界を楽しんでみよう。

今日も、相変わらず、人気のない場所でマスクをずらして鼻を利かせるチャンスをうかがっている。




この記事が参加している募集

最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^よろしければ「スキ」やSNSでシェアしていただけると、とっても嬉しいです! いただいたサポートは書籍購入やnote内の投げ銭など、今後のnoteに活かすために使いたいと思います。