フィナーレ&釣果&簡易レビュー【正調ミステリーハンター in 島根(4/5)】

調査報告も第4回目となりました。(第3回はこちら)
今回は、最終日の残り少々の様子とと、現地で購入したものをご紹介します。

■稲田本店(正調粕取焼酎「枯草」製造元)

奥出雲の「おじさま」のお蔭で余裕ができた調査隊は、県境を越えて鳥取県米子市に向かいます。

列車&バスでは熟睡していたので、いきなり現地の写真から。
鳥取県のシンボル、大山(伯耆富士)が良く見えます。

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目的地は、米子市の郊外にある稲田本店。
日本酒「稲田姫」「トップ水雷」、そして正調粕取焼酎「枯草」を製造する蔵です。

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ゲストハウスはスタイリッシュな空間。

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酒蔵見学は事前予約制のため叶いませんでしたが、受付の方に親切にご対応頂き、日本酒の試飲と粕取焼酎「枯草」の買い物を楽しむことができました。

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そして、粕取焼酎の製造に関する資料!!!

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読みやすいように下記に転載します。

①酒粕に丹念に籾殻を混ぜ込みます。この作業により、蒸気の抜けが良くなり、また、香ばしい香りが乗ります。
②木製蒸篭に①で作った酒粕を入れ込みます。蒸篭の下には大きな釜があり、酒粕は蒸篭の中で蒸し上げられます。蒸されて出る蒸気の中に含まれるアルコールが、粕取り焼酎になるのです。
③全体風景。出てきた蒸気は冷水によって急冷され液体となります。
④冷やされて出てきたアルコール分。この後、3年間の熟成を経て、粕取り焼酎「枯草」の出来上がりです。

何と!今でも木製蒸篭を使っていると!!!
これは、次回こそ酒蔵見学を申し込み、製造の方からじっくりお話を伺いたいものです。。。

店舗が閉店時間を迎え、かつ日も傾いてきたので、急ぎ足で松江に戻ります。

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出雲地域(島根県東部)と鳥取県米子市がある西伯地域は、ともに島根半島に位置し、古くから県境(かつては国境)を超えた往来が盛んであり、現在も同一の方言(雲伯方言)を話すそうです。

現在、山陰地方で正調粕取焼酎を製造している蔵元は、出雲地域(島根県東部)に3箇所、西伯地域(鳥取県西部)に1箇所残るのみとなっています。
これは決して偶然ではなく、共通の気候風土と、それに基づく生活・生業に根差した現象ではないか、、、そのように思えてなりません。

■松江の夜

まずは投宿、この日は旅館「松江館」です。
狭いながらも快適な室内。

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この日も素泊まりだったので、夕食処を求めて徘徊していると「ギョウサン」という気になる看板を見つけました。

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その正体は、大ぶりな揚げ焼き餃子でした。
関東の「ホワイト餃子」に近い感じか?

お酒は、初日にお世話になった米田酒造の「豊の秋」。
地元の「常食」と「地酒」をゆるゆると楽しみました。

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その後、何となく洋酒を飲みたい気分になったので、スマホで検索して近所のバー「大正倶楽部」へ。

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ジントニック、続いてバーボンを飲みながら、蝶ネクタイがお似合いのマスター&奥様と談笑します。

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そして、カウンターに鎮座する樽が気になったので尋ねてみると、「開店直後から29年間継ぎ足してきたボウモア12年です」とのこと。
これは、オーダーするしかない。

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味は、現行のボウモア12年に比べると円やか…のような気がします。
が、それよりも、出会いそのものに「味を超えた味」を感じます。

すっかり満ち足りた気分となり、会計をお願いすると、マスターから「記念にテイスティンググラスを差し上げます」との申し出が。。。
実は、会話の流れで、自宅のテイスティンググラスを割ってしまったことを話していたのです。

旅行の最後の夜に、最高の思い出を頂きました。
(グラスの丁寧な梱包にもホスピタリティが表れています…)

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この日も気分よく熟睡し、翌朝一番の飛行機で帰京。
大充実の調査旅行を終えました。

■釣果&簡易レビュー

調査旅行で買ったお酒を紹介します。
まずは全景。一升瓶が2本、五合瓶が3本、四合瓶が7本、しめて12本ですね。
もっと買う気満々だったのですが、諸事情を踏まえて少々控えめにしました。

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以下、購入したラインナップと、簡単なレビューを書きます。

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<チーム米田酒造>
・粕取焼酎「七寶」35度 一升 1本
・粕取焼酎「七寶」35度 五合 1本
・粕取焼酎「七寶」25度 四合 1本
・粕取みりん「七寶」 四合 3本
・酒粕(おまけにつけて頂きました。感謝。)

社長さんから「今後も続ける」という力強いお言葉を頂いたので、一升瓶は一本だけにして、五合・四合サイズを中心に買いました。

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正調粕取「七寶」の35度は、リッチな甘味の後に枯れかけの草、最後に鰹出汁のような上品なフレーバーがふわりとやって来ます。かの傑作「辰泉」にも通じる完成度の高さ。むちゃくちゃ旨いです。

粕取りみりん 「七寳」は、原料に正調粕取焼酎を使用したみりんです。円熟したトロみを伴う甘味の中に、籾殻由来の穀物感が明確に存在します。唯一無二の個性、これは参りました。
つーか、これマジヤバいですね。なんつーか、凄い。。。今年飲んだ全ジャンルの酒類の中で一番のインパクトで、おそらく今年のランキングで三本の指に入ってくるのでは。。。
自分は甘党ではないので、これまでみりんを酒として意識していませんでしたが、先日「日がさ雨がさ」で頂いた「尾張みりん」と、この「七寳」で完全に開眼してしまいました。

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チーム酒持田本店>
・粕取焼酎「ヤマサンのかほり」35度 一升 1本
・粕取焼酎「ヤマサンのかほり」35度 五合 1本
・粕取焼酎「ヤマサンのかほり」25度 五合 1本

こちらも、社長さんから「需要があるので続ける」とお聞きしたので、今回は最低限の買い物としました。

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「ヤマサンのかほり」35度は、アタックから新しい畳のような若い香りがガツンと来ます。ちょっと薬品系のニュアンスも。背後の酒粕の甘味は素晴らしいので、時間を経て伸びそうな予感があります。

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チーム簸上清酒>
・「簸上 粕取焼酎」25度 四合 2本
既に1本所有しており、今回は2本追加購入。
前回購入分と今回購入分は、どうやら蒸留年度が異なるようです(前回購入分の方が古いらしい)。

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「簸上 粕取焼酎」は、アタックから籾殻風味はバリバリ健在、鼻に抜ける香りは沢庵~奈良漬、最後に仄かにチョコレート感を伴う甘味がやってきます。全く時代に媚びないワイルドな風味で、「正調粕取界の極北」と言えるでしょう。

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チーム稲田本店>
・粕取焼酎「枯草」25度 四合 2本
五反田の「内藤酒店」で買えるので、控えめに購入。

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「枯草」は、確かに「青草」ではなく「枯草」の味わい。スモークを伴う心地よい甘味が、どことなくメスカルを彷彿とさせます。正調粕取としての個性はしっかりありつつ、円やかで洗練を感じさせる素晴らしい味わいです。

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今回は色々な意味で「恵まれた」調査旅行でした。
各地での素晴らしい出会いのおかげで、正調粕取焼酎とその背後にある地域に対する見識が「広がった」というより「深まった」と感じられる経験ができました。

お世話になった方々への感謝を込めて、ここに再訪を誓います。
(個人的に、旅行における最高の愛情表現は「再訪」だと思っているので。。。)

次回(最終回)は、今回の調査旅行の成果を中心に、最新の山陰地方における正調粕取焼情を整理します。

(第五回へ続く)

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