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第582回【筋トレ日誌 その他日々是】573(2022/12/24)▲▲記憶に残る仕事▲▲

地図に残る仕事といえば、

新海誠監督のアニメの大成建設のCMだ。



地図に残らないまでも、

自分の記憶に残る仕事というのも

人それぞれあるのではないだろうか。


私もあれこれ色んなアルバイトを経験した中で、

忘れられない仕事がある。


その一つが、

大丸デパートでの仕事かもしれない。


大丸デパートと言えば

東京駅に直結しているあの百貨店である。



かつて沢木耕太郎氏も

日本橋にあった東急百貨店で

アルバイトをしていた経験があるそうだが、

私は日本橋ではなく八重洲・東京駅。

日本の中心ターミナルである。


私が仕事をしていた頃は

今の瀟洒な建物になるまだ前、

八重洲口にデーンとそびえる

古めかしい建物の時代である。



日本のターミナルで働けることに

大いに気分も盛り上がったものだ。


私は催事の担当に着くことが多く

お中元、お歳暮対応に回っていたのだが、

大丸クラスの百貨店になると

催事にわざわざ足を運ぶのは

いわゆる『上顧客』の比率が圧倒的に

多いのである。


もちろん顧客データから

過去に購入したものは全て分かるのだが、

『この前と同じやつを』と言われると

一瞬フリーズしてしまうケースもしばしばあった。


しかしラグジュアリー層の多い顧客と接して

勉強になったのは、

ラグジュアリー層には独特のオーラとルールが

有るということだろうか。


我が家もサラリーマン家庭だったので、

お歳暮やお中元の手配は行われていたが、

『高級志向』のデパートで購入するケースは無かったので

(そもそも田舎にそんなデパートが無い)

こういう層の人たちがいるのか、

と20歳そこそこの青二才には衝撃だったのだ。


例えば、

毎日催事場に来てお歳暮を手配する

淑女マダム。


毎日私が対応していたので

当然ながら顔と名前を覚えて頂き、

3日目からは指名を頂いた記憶がある。


上顧客に若造をご指名頂ける喜びもさることながら、

今思えばこのマダムは

毎日の話し相手が欲しかったのかもしれない。


そもそも毎日開店と同時に

デパートに通うという発想はなかったので、

これはこれで衝撃、

世の中には色んな方がいるものだ

と感心したものである。

(これはもう時効だと思うが、

 マダムには催事最後の日に

 お小遣いを頂いてしまった。

 貧乏そうな学生に見えていたのかもしれない)


そんなお淑やかマダムがいる一方で、

声を荒げスタッフに罵声を浴びせる

中年男性の客も実際にいた。


相対したアルバイトスタッフの女性は

涙ながらに謝っていたが、

世の中にはこういうお客も本当にいるのか、と

驚いたものである。


しかし本来の上顧客は、

いくら失礼があったとしても

相手に恥を欠かせまいとする

振る舞いがあり、

後々裏でクレームの手紙を認めるものである。


つまり

この中年男性客は上顧客ではなく、

単なるクレーマーだったのかもしれない。


そんな多種多様な客層に触れることが出来たのも、

デパート勤務での最大の蓄積だ。


ちなみにデパートでは

独特の隠語がある事も知った。

私も

『さんさん』『ぎょく』を使うように

よく言われたのを思い出す。



そんな大丸でのアルバイト期間に

比較的仲良くしてくれたおばちゃんがいた。


社員食堂で

よくお昼もご一緒したのだが、

そのおばちゃんがふと発した一言が

今も忘れることが出来ない。


『あんた、阿部寛に似てるわね』、と。


当時は

俺も阿部寛に似てきたかと浮かれたが、

面長の顔だということを言いたかっただけ

なのだろう。

川島英五に似てるね、と言われるよりは

マシなのかもしれないけど。


そんなおばちゃんも

今はどこで何をしているのだろうか。


東京駅、

行き交う人たちの交差点のような場所で

仕事をしていたことをふと思い出し。


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